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山梨に移住した理由と新しい「食文化の発信拠点」

なぜ山梨に移住したんですか?

この1年で100回はされた質問です。最初は「日本ワインに興味を持って」とか「素晴らしいシェフがたくさんいて」とか色々と切り口を持って話していたのですが…
最近、移住の理由がだいぶまとまってきたので、せっかくならnoteに残しておこうと思います。

「とにかく晴れてる」日照時間日本一の明野地区

まずは答えから。「とにかく晴れてるんです。圧倒的に日当たりが良い」というのが答え。甲府盆地から八ヶ岳エリアの最大の特徴。3方に2000-3000m級の山岳地帯があることで雲が入らないことなどが理由なのですが、甲府市では県庁所在地でNo.1の日照時間、北杜市の明野町はさらに上回る日本でトップクラスで日照条件の良い地域なのです。

そもそも、山梨県の盆地部分では、四方を囲む山が雨雲や海からの湿った空気の進入を防ぐため、日照時間が長くなるといわれており、気象庁の観測値によると、2018(平成30)年の甲府市の年間日照時間は2391.3時間と全国1位、また1981年~2010年までの30年間の観測値(平年値)においても、甲府市の年間日照時間は平均で2183時間と、県庁所在地で全国1位となりました。

1981(昭和56)年に明野町の明野中学が観測した「日本一」の日照時間は2939.5時間と、その平均値を750時間以上も上回るのですから、この地がいかに太陽光に恵まれているのかがわかります。

https://www.mapple.net/articles/bk/19133/?pg=2

盆地地形から作られる気温差

日照時間が長いということは、つまり「晴れ」が多く、雨や曇りが少ないということです。そうすると、当然湿度も低く、気温差が激しくなります。

東京と比較したときに、夏冬の気温差が5度広く、春の気温差も2.5度ほど温度変化が広くあります。夏は暑く、冬は寒い、というのが盆地地形の日照条件の良い地域の特徴。

(以下、参考)こちらが甲府の雨温図。
各月の最高気温と最低気温の差がいちばん高い月が4月で12.1℃
そして、1月の最低気温と8月の最低気温の差が34.9℃
(最低-2.4℃最高32.5℃)

甲府の雨温図

こちらが東京の雨温図。
各月の最高気温と最低気温の差がいちばん高い月が4月で9.6度
そして、1月の最低気温と8月の最低気温の差が29.9度
(最低0.9℃最高30.8℃)

東京の雨温図

この1年で食べた美味しかった食材

この気象条件を求めて素晴らしい生産者が集まるのか、それとも素晴らしい生産者がこの条件で苦労してきた成果なのか、、因果はわかりませんが、とにかく美味しい、素晴らしいと思う農産物にたくさん触れてきました。

明野の大豆、丸玄の大豆

大豆なんて山梨に移住するまでは全然食べなかったのですが、最初に食べたこの明野の蒸し大豆にびっくり。めちゃくちゃ甘いんですよ。大豆。
そして、特に美味しかったのが、ここの丸玄さんの大豆。ホワイトチョコレートくらい甘いです。すごいです。
韮崎にある中沢商店で味噌を購入したときに明らかに良い状態の味噌をみて、俄然興味が湧いて直売所まで足を伸ばすと、売っていたのがこの大豆。マジで美味いです。


CRAZY FARMの人参

最初に衝撃を受けたのは、北杜市の清里の近くにある「Terroire 愛と胃袋」さんで食べた大根の生春巻きだったかな。CRAZY FARMさんを初めて知ったのはその時でした。

あまりの野菜の甘さに衝撃を受け、それから1年近く経ってまた出会ったのが、甲府にあるRistorante koenさんの人参のピザ。
あまりの甘さにショートケーキを食べているんじゃないかと錯覚するほどの香りと甘さ。
みんながファンになる美味しさです。

大量の山菜たち

ちょっと足を伸ばして長野の原村や、南清里の道の駅、明野の農産物直売所など。3,4月になるとワクワクしてきます。シーズンになると20-30種類くらいの山菜が毎週のように入れ替わって増えていく様子は本当に楽しくてしょうがありません。

様々な野菜の間引き菜

間引き菜写真ない…し地味なのですが、野菜は当然栽培の過程で間引かれます。この間引かれた野菜が本当に美味しくて、菜飯にすると最高に美味しいのです。旨みが凝縮されて、山菜にならぶ楽しみの一つです。

とうもろこし

「きみひめ」とか「甘々娘」とかいろんな品種があるのですが、中央市や甲府市の南部エリアに初夏になるととうもろこしが大量に溢れてきます。ベビーコーンの頃からこれも、毎週のようにサイズアップしていくとうもろこしを楽しんでいくのも最高です。

完熟ブルーベリー

明野にブルーベリー畑があり、自分で摘み取ることができます。
いわゆるスーパーで買うブルーベリーは未熟果を流通過程で追熟するために樹上で完熟するブルーベリーはなかなかお目にかかれないと思います。
暑くなってくる季節の朝イチでまだ涼しい時間で、摘み取りながら食べるベリーは最高です。八ヶ岳の高い標高により、ラズベリーやクランベリーなど様々なベリーを収穫できます。

硬い桃

JAフルーツ山梨八幡店でよく買ってました。硬い桃最高。特に、サラダにして食べるというのは、とても良いです。程よい甘みがあるので、ちょっとビネガーとオリーブオイルをかけるだけで、誰ても複雑なフレーバーのサラダを作ることができます。

明野のきゅうり

明野の農産物直売所で販売している、地味にきゅうりが美味しくて、品種の影響かもしれないですが、夏になるときゅうりをいろんな食べ方してました。巻物にしたり、ギリシャヨーグルトとあえてサンドイッチに詰めたりとか、いろんな楽しみ方があります。

天然キノコ

南清里の道の駅でよく買います。山菜同様秋になると、20-30種類くらいは食べているかと思います。ただ、なかなか上手く使いこなせないですね。。毎年頑張ります。
個人的には天然の舞茸が最高に好きです。天ぷらでも美味いし、炊き込みご飯も最高だし。

浅尾大根

大根をうまいなんて思うことが全くなくて、これでも明野で取れる大根です。大根おろしのしぼり汁と味噌だけで作る味噌汁がとても美味しいので、よく作りました。
別の話になるのですが、伊那市にある高遠そばという焼き味噌と大根のしぼり汁だけで食べる蕎麦があります。今の所人生で食べたものno.1の美味さです。
大根はやはり日本の食文化を作ってるなとしみじみ思います。

良い生産者が良いシェフを呼び込む

ちょっと長いグルメブログをこの前かいたのですが、こういう素晴らしい食材って都内にはなかなか入ってこないんですよね。
農協が扱えないような流通外商品だったり、美味しさを優先するが故に規格外として扱われたりなど、流通手段が少なかったりします。
またキノコとかそうですけど、特に鮮度が必要な商品は物理的に都会に持ち出すことは難しいです。
そうなると、シェフがこの地に来て調理するしかない、とそう思い切って移住しているシェフがたくさんいるように感じます。

別荘地と移住地の違い

また、山梨の北杜市エリアは八ヶ岳周辺は特に別荘地や移住者の住む場所が多くあります。軽井沢や箱根などと違い富裕層が夏だけを過ごす避暑地ではなく、週末の旅に足繁く通う別荘地だったり移住の先として選ばれる場所として人気が出てきています。
新しくできた素晴らしいシェフが構える店に、こういった方が通うようになることで、食文化がどんどん根付いてきているように感じます。

これから訪れるインバウンドラッシュに備えて

山梨には東日本震災の時に大量に移住者がやってきて、今回のコロナ禍でも中古住宅が北杜市では0になる程人気が出たと言われています。
この数年は日本人中心でしたが、リーマン明けの集団旅行が中心だったインバウンドラッシュから、今後は個人旅行を中心としたインバウンド観光が増えてくると思います。そうなると、日本の素晴らしい食、そして気候や環境に触れたいと山梨に来る方は多くなると思っています。

食文化の発信拠点が変わる

これまでの日本の郊外は、東京の人に来てもらう、東京のひとに買ってもらう、が成功のパターンだったかもしれません。
それがこれからはアジア・世界全体を見渡した発信をする人たちが増えてくると思います。すでにワインやフルーツの世界では、世界中から県産のものを欲しがっているニーズが増えてきているように思います。
東京や京都、福岡や北海道など。
洗練されたレストランはいずれ世界の各都市が真似し合うようになりますが、この環境や気候を生かした素晴らしい食材や料理はなかなか真似できるものではないと思います。
発展していく先進国としての食文化をもつ日本というよりも、ヨーロッパでいうところのスイスやイタリアの山岳地帯が持つような、そんな魅力を出す都市が増えてくると思います。

未来の食文化

寿司、刺身、焼肉など日本に来ると多くの外国人が日本食を求めてレストランにやってきます。ただ、牛肉価格も、天然の鮮魚価格も資源枯渇などによりどんどん高騰して行っています。
昔は当たり前だった鰻重も高級品でデイリーなものでは無くなったように日本食というのも一部の富裕層によって楽しまれるものにしかならないとしたら、それは日本食の敗北なのではないかと思います。
それも、今では規制が緩いから提供できているようなメニューも肉の生食のようにグローバルな感覚での規制も入っていくのではないかと思います。

そうなった時に、日本の魅力として考えられるのは、この環境を生かした農作物にあると思います。もちろんこれまでの日本食の良さも生かしつつ、新しい食文化を作り出す地域が生まれてくるだろう、と思います。

僕が山梨に可能性をめちゃくちゃ感じているのは、こういったところです。

ワインの話もここに繋がるというか、きっかけになっている気がします。
少し長いですが、こちらもお時間あれば。



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