見出し画像

山梨に移住して、世界を代表するスタートアップをつくる① ワインに学び移住する

※この記事は起業エントリのように見えて、ただのグルメ記事です。
※2,3本の記事にまとめる予定です。20,000文字くらいになるので飛ばし読みおすすめです!

上場企業を経営しながら、移住すること。
移住先で新しく会社を作るという意思決定をすること。
どちらも大胆な決断となってしまいましたが、少しでも移住に興味のある方、地方や地域のエネルギーの活かし方を考えている方には少しは役に立つかなと思っています。

人生2回目の起業です

先日、ブログを書かせていただきました。これで、人生2回目の起業となります。2回目の起業だと、法務局行ったり、公証役場行ったりするのに全くワクワクしなくなるものですね。それにしても「freee会社設立」めちゃくちゃ便利です。1日で色々手続きが終わった感じがあります。前回の感じだと3ヶ月くらいかかると思ってました。

最初に起業したときは、「バザーリー」という社名をつけました。モノやスキルやサービスを自由に売買する空間、元祖。バザールのような空間を作りたかったのと、当時大体の会社に「○○リー」みたいな社名が付いてて、憧れでつけちゃったって感じです。当時ちょっと恥ずかしかったけど、今はもう恥ずかしくならないですね。社名もお飾りみたいなもので、サービス作りが一番大事なので。

これからの会社の名前は「イロリ」です。サービス名をこれまで多分10回くらい名付け親になっているとは思うのですが、過去一番しっくりしたかもしれない。一番自分が今やりたいことを表現できている気がします。上のブログで書いた理由はこんな感じ。

文字通り、「囲炉裏」という生活道具からお借りした名前です。
火を起こし、料理をするという原始的な仕組みであるにもかかわらず、部屋の耐久性を高め、虫や動物から家を守り、明かりを灯し、部屋を温める。人々の集まる場にもなる。
ひとつの解決手法で沢山の問題を解決する発明を起こせる会社になりたいと、新しい会社を「イロリ」と命名しました。

クックパッドを退職し新会社を設立します
https://note.com/kohei_fukuzaki/n/n2b00733cbfdf

「社長」と呼ばれるのはこれで4回目になります

社長と呼ばれるのも4回目になりました。最初は20歳、そのあとの会社は25歳、次が29歳。そして現在31歳。もうすぐ32歳になります。子供も2人元気な男の子が生まれました。

最初の企業は横浜、そのあとは渋谷、その次は恵比寿、そして現在は山梨となります。社長になったら、大体一番近くに住むというのをやる習性があります。やっぱりワクワクしてるのかも。

移住と起業の簡単な時系列

今回は前編です。太字部分について書いています。

2021年5月 小布施ワイナリー
2021年9月 紬山荘
2021年10月  sun.days.food
2021年11月   北杜市の移住体験
2021年12月  98wines,BEAU PAYSAGEとの出会い
2022年12月 物件契約
2022年3月   移住

2022年4月   山梨県庁仲田さん、佐藤さんとの出会い
2022年6月 岡本さんとの出会い
2022年8,9月 こっぺ食堂
2022年9月 長野ワイン紀行
2022年10月  山形出張
2022年11月  クックパッド退職の決断
2022年12月 会社設立の決断

小布施ワイナリー、ドメーヌ・ソガの衝撃

2021年5月の話です。
一番最初のきっかけは「小布施」。学生時代に友人が、小布施町に本店のある栗菓子の名店「小布施堂」さんとのプロジェクトをやっていて、頭に残っていたのか、なぜか覚えていたんです。
僕は25歳くらいまではあまりお酒を飲まなかったのですが、日本酒に開眼しアホみたいに飲む時代があったんです。2年くらい飲み続けて出会ったのが「ドメーヌソガペールエフィス」という日本酒。
鼻腔を抜ける6号酵母主体の抜け感とボディ感のバランスに当時衝撃を受けたのを思い出します。そのあと、あまりお酒を飲まない時期があったのですが、小布施ワイナリーというワイナリーが作っているというのがずっと気にかかっていました。
妻の祖父母の家が福井にあり、道中ちょっと寄り道することがあり小布施ワイナリーにどうしても行ってみたいという気持ちになりました。「小布施堂」さんが宿を経営しているとのことだったので、ぜひ行ってみようと、ついでにワイナリー寄れたらいいよね。という感じでした。

そのお宿は「升一客殿」という名前です。コンセプトが最高なのです。

本来なら我が家にお泊りいただくべきですが…」の気持ちを、すべてのサービスの基本としています。小布施のまちを、栗畑を、我が庭のようにお遊びください。

升一客殿HPより抜粋

宿に泊まって、ワイナリー行けたらいいなと思ったら、夕食にワインリストがついてきて、小布施ワイナリーのボトルワインがあるとのこと。多分あまりボトル頼む人なんていないみたいなのですが、ちょうど奥さんの第一子の時の卒乳記念だね、とかいいながらオーダー。2人で乾杯しました。

ロゼスパークリング、グラップアンティエール 小布施ワイナリー

めちゃくちゃ美味いんです。この一瞬で日本酒党からワイン党に変わりました。2泊したのですが、翌日のオーディネールメルローも最高でした。ワインっていうと学生の時に飲んで頭痛くなるわ、高いの飲んでも、ワインが濃厚すぎて食事に合わないというイメージがありました。
究極の食中酒になる、というのが日本ワインの強みだというのは、この頃は全く知らず、ただただ感動したのです。
ちなみに、このお宿、料理最高です。その辺のオーベルジュとは比べ物にならないほど料理が秀逸なので、美味しいものが好きな人はすぐにでも行きましょう。夕食を必ずつけて、小布施ワイナリーをボトルで注文するのです。絶対後悔しないです。

ワイン好きの友人が教えてくれた北杜

2021年、秋になりました。
次のきっかけは「北杜市」でした。プレゼンであまり失敗することはないのですが、2年くらい前に1発大ゴケしたプレゼンがあって、その時に傷心のあまり、「どっか遠くに行きたい!」とたまたま見つけたのが北杜市にある「紬山荘」というお宿でした。
北杜が良い、北杜が良いというのもなんとなく頭に残っていて、調べていたら出てきたのがこの宿。

現在は、当時とスタッフは変わってしまったのですが、その時の料理が本当に衝撃的で。たとえばシメで出てくるお蕎麦が「りんごそば」。すだちそばのような香り高い一品で、酸味がほのかに感じられて最高でした。

たぶんりんご酢が入ってるのかな、盛岡冷麺のような心地よいすっきりしたお出汁

ほぼ貸切のこのお宿ですが、当時在籍されていたソムリエが塩尻出身の方で、よかったら次回飲みにまたきてくださいと見せてくれたのが城戸ワイン。1ヶ月ちょい後にまたすぐ行くことになるのです。

飲みましたが、これも最高。甘さや香りが大胆なワインだった気がする。

人生最高の朝食空間に嫉妬する

北杜市の長坂ICから車で10分くらいにあるこの「紬山荘」に行く道中に小さな小屋があるのです。なんだろうあれお店?検索しても「お好み焼き屋」としか出ないのです。
絶対何か面白いお店なはず、と飛び込んでみるとまた出てきたのはオムレツやクレープ、ガレットのようなお好み焼きたち。
「sun.days.food」 さんです。超人気店。もともと神戸から移住された方が北杜→甲府→北杜と店舗を移転されてできた現在の店。

この頃以降白のBOW!飲めてない、そしてジュリアン〜あーすごいワインリスト。
オムレツをスマホで撮るだけでこんな感じになります?これ本当大好き!
オムレツをスマホで撮るだけでこんな感じになります?最高

多く語らなくても、最高ですよ。笑
もう写真みるだけでわかってもらえると思います。ここには昨年友人を連れてきまくった気がします。

頭が美味しいだけじゃない、体が美味しいって言ってる

何度か山梨・長野周辺に通ううちに、だんだんと恥ずかしくなってきたわけです。自分が作ったプラットフォームでは魚や肉が飛ぶようにうれ、都市生活を中心とした人たちに便利に使ってもらっている。
もちろん現代的な食生活は時短簡単で美味しいものを求めるようになると、白米に肉魚を焼いて食べる。ちょっと調味料かけて食べる。そういった食生活になるし、自分もそう言った人たちに使ってもらえるようなサービスを作っていたわけです。その結果、近年の肉や魚の動物性タンパク質の値段が高騰し続けているのはいうまでもありません。

ただ、車で2時間走らせたこの場所では、農作物を力を信じ、最大限活かし、最高の食事をつくっている。美味しいだけじゃなくて、体も良い。環境にも良い。
こう言った食提案をしている人たちを見て、「あぁ自分は全然ダメだ。」と恥ずかしくなったのです。

引っ越すしかない

食を中心とした仕事をしている自分の過ちまではいかなくとも、それまで30年間福岡・横浜・東京という大都市で暮らし生活してきたものとしてまだまだ学ばないと行けないことを感じたのです。
食とは何なのか、食べるということは何なのか。自分は全く理解していない。ただ脂や糖の多いものを美味しいと感じ若さを摩耗しながら食べ、太り続けていたのです。
本当の美味しさとは何か、料理とは何なのか。
毎週のように北杜に通う生活を数週間続けました。ただ、過ごせる時間は土曜日の夕方から日曜の昼まで。そんなんじゃ何も理解できないと感じたのです。
1週間休みを取れる機会があったので、北杜のホテルで1週間滞在してみることにしたのです。いろんなお店に訪問させていただき、どれも感動するほどうまい。天然のきのこだけを使うフレンチや、素晴らしい生産者さんの野菜を使ったお料理など。毎日興奮の嵐です。

「引っ越すしかないな、生活の拠点を移そう」

妻に説得というか、もう何かに取り憑かれたように物件を探し、北杜に通い始めて2,3ヶ月ほどで物件を購入することに決めました。
(北斗は流石に通勤には遠すぎることや、人気すぎて物件が全くないことから、甲府のマンションで生活することにしました。)

血液が流れているかのような感覚

2021年、冬。
北杜の魅力に感動し、3ヶ月後には物件の契約を済ませました。
ローンの契約に、年末に甲府まで出向かなければならず、どうしても行きたかったお店に一人で行くことに。ビジネスホテルを予約し夕方に電話し「一人入れますか?」とOK。
この頃には少しずつ日本のワインについての知識も身につき、山梨についても少しずつ知識がついてきました。Instagramで片っ端から面白いなと思う方をフォローさせていただいていると、とあるお鮨屋さんに行ってる方がたくさんいたのです。

中に入ってみると黒板に素晴らしいワインリスト。こういうお店では、あまり自分の飲みたいものを頼んだり、選んだりするよりもお店に任せた方が良いものがたくさん出てくると思いましたが、魔が刺してしまったんです。

「BEAU PAYSAGE」って飲めますか??

大将は少し考えながらも、何が良いですかと話をしながら、出してくれたのです。一見で本当に図々しいオーダーをしてるという自覚を今でも持ってます(そんな、毎日頼んで出てくるようなワインではありません)、飲んだ時に衝撃を受けたのです。

「血が通ってる。」

美味いんです。ただ、脳死したような旨味というものではない。こんなにも体に対して自然というか、心地よさをお酒で感じるのは小布施ワイナリーの日本酒を初めて飲んだ時か、アルザスで昔一人旅をしていた時に、覚えてられないけど勇気を出してボトルで頼んだピノノワールそのものでした。

物件契約してよかった。最高の毎日が始まるじゃん。
この日は朝から全く食べてなかったからか、3人分くらいの食事をして、ほろ酔い気持ち良い状態で、お店を後にしました。

98winesという新しい概念に触れる

「紬山荘」のソムリエさんに言われた、
山梨のワインに興味があるなら、ぜひ98winesさんにも言ってみてください。素晴らしいワイナリーですよ。
という言葉も頭に残っていて、引っ越しを決断して家族と一緒に山梨・塩山に向かいました。
塩山という地域はもちろん当時は全く知らな場所で、山梨といえば、勝沼や甲州?みたいな名前のイメージでした。
到着してびっくり。
「なんだ、なんだ、この空間はー!!」
98winesさんの名前は実は別のルートでも気になっていたのです。
建築も好きなので、いろいろなレストランなどを巡った時に、北杜市にある「Terroir 愛と胃袋」さんに訪問した時にその建物、空間の素敵さに心を打たれて調べてみるとその中の名前に「坂野由美子さん」「丸正渡邉工務所」という名前がありました。
施工事例なんかを調べていると、98winesさんの名前も。
いっそのこと、同じ建築家さんが建てた建物を巡ってみるという軸も面白いなと思い、いくつかの気になるポイントが重なり、訪問しました。

広い開口部は、デザイン事務所のような素晴らしい空間
中からはハンモックやベンチで温まることができる

メルシャンや勝沼醸造で醸造長を務めてこられた平山さんと運よくお話をすることができ、ワイナリーを案内してくださりました。
「世の中にはいろんな考え方のワイン作りがあるけど、自分は余計なことをしない。栽培も葡萄の力を信じるし、醸造も余計なことをしない。」
「ブドウは西洋品種ではなく、日本の在来の品種を信じている。甲州やベリーAなどは本来日本で強い品種。最近の西洋品種は栽培できる場所を探してる醸造家もたくさんいるけど。簡単な話。日本の土壌に適した品種を栽培し、それを無理なく醸造すればいい。」
「忙しく働くんじゃない。この場所で働く我々は自然や環境の力を信じてる。少し手当をしてあげればいい。その手当の仕方や考え方が大事。」

頭を金槌で打たれるような感覚。あぁ、料理の自分の恥ずかしさはここからきてるかもしれない。そう感じたのです。

コントロールできないものを無理して動かす感覚に気づいた

自分も料理を初めて20年くらい経つと思います。
だんだんと食材の力を信じ、シンプルな料理を作ろうと意識はしていたものの、美味しい料理が作れるか不安になると、オリーブオイルをドバドバかけたり、チーズを振ってみたり、出汁を入れてみたりと、たくさんの足し算の料理をしてしまいます。あぁ、これは不安の現れなんだと。
そもそも調味料や調理法なんてのは食材をどう美味しく食べるのかであって、調理自体が目的ではありません。調理自体が目的であれば、それはただの趣味のクラフトワークなのかもしれません。
日々食事をし、生きていくのにはたくさんの時間はかけられません。数年料理に携わる仕事をしていて、一番の問題はスキルだということは感じていました。そんな簡単に人は技術を身につけられない。
その時に簡単なのは、そのまま食べる、食材の力を信じる
ということかと思うのです。

自分が北杜で最初に受けた感動は、この感覚でした。
「移住してでも山梨で活動している人たちは生産者と一緒に、地球の可能性や自然の可能性を信じている」ということ
「人間なんかができることは向き先を少し変えるくらいのことで、完璧なコントロールなどできないか、出来たとしてもいつか崩壊してしまう」
ということ。

10年以上プラットフォームサービスと呼ばれるインターネットサービスを作り続けてきた自分にとって、まさに生態系をどうデザインするのかということを真剣に考えている人がたくさんいるのだな、この人たちともっと仲良くしたい!もっと議論したい!そう感じたのです。

移住するんです!?

いろんな人に反対されました。特に会社では何人かに囲まれて「辞めるつもり?大丈夫か?」と詰められたことも。
ただ、自分の中では、オフィスの近くに住んで都市生活者の便利さを磨き込むよりも、生産者の近くで考え発信している人たちが何を知っているかを知る方が10年先までプロダクトを作り続けると考えていました。
当時はまったく、クックパッドの仕事を離れるつもりはなく、還元できることの方が爆発的に増えると考えていました。
実際に、2022年は山梨や地方で得た学びをプロダクトに還元するという方向のデザインになっている機能も各種ありました。価格だけではなく、本質的な機能価値を伝えた続けていたつもりです。
でも、今思うと少し反省はしています。オフィスを山梨に持ってくる、くらいもっと大胆な意思決定も方向性としてはあったのかも。そこまでの覚悟は当時持てなかった。自分が変わることでしか変えられなかった。

甲府はアツい

暑いです。確かに。笑
そのアツいではなく、街として可能性を感じたのです。
自分が移住先で重要視しているのは当時4点でした。
適度に家賃が安い街であり、多様な人が移住先として選べるか
・どの場所を見ても同じ雰囲気ではなく、マーブル状に地域があるか
・外国人にも選んでもらえるような観光資源を持っているか
・発展の見込みはあるか

駅チカの家賃

甲府の家賃は都内や横浜の中心部に比べると1/4くらいの水準。都内郊外よりも半額近い家賃なんじゃないかと思います。特急停車駅でこの値段というのは、やはり破格だと思います。

まさに昭和の繁華街

老朽化が進んだ街には、必ず再開発や計画の見直しがあります。建物は壊れるからです。なので、今キラキラしている街というのはかならず荒廃します。循環を見た時に、甲府はまさに今がタイミング!だと思えました。
(引越しする決断をしてすぐに岡島百貨店の再開発が決まりました、これから色々と変わっていきそうです。)

富士山、ビール、ワイン

日本も一時期は中国人が団体旅行でくる、というのがありましたが時代はどんどん個人旅行に移ってきています。コロナ以前はASEAN諸国やヨーロッパから山梨にたくさんの人が往来していたそうです。数年後はもっとすごいインパクトになっていることは間違いないと思います。
盆地地形で足を伸ばせば雪も見れる。暖かい地域の人にとってはスイスのように見えるでしょう。

自動運転とリニア、フルリモート

自分はコロナになって、テスラを買いました。
本当に自動運転なのです。高速道路で色々運転する必要はありません。
これで通勤は完全にクリアだと判断しました。片道2時間かかりますが、子育て中の自分にとって一人の時間はとても大事でした。
リニアも開業が遅れていますが、いつか開業するでしょう。開業すると品川まで20分になるそうです。
マンション需要はまだまだ続く中で、ターミナル駅の人気が上がり続けています。海老名がみなとみらいよりも高い分譲価格で出た時はびっくりしました。リニアも例外ではないでしょう。
そして、コロナ禍。
フルリモートで共働きで移住する方が増えたとのこと。これからもリモートワークは働き方にミックスされるでしょう。移住需要はむしろこれから安定しておきるのはないでしょうか。

もちろんそして、山梨の素晴らしい食材に毎日のようにアクセスできる。こんなに魅力的な街はないと思いました。

※次回は、移住後の暮らしと会社をなぜ山梨に作るのか、という話を書こうと思います。2023/1/10くらいまでには書きたい。コメントもらえると続編書く意欲が湧きますw

取材いただいた記事もぜひ

次回編の話も少し入っていますが、昨年の初夏に記事にしていただきました。こちらもぜひ読んでいただければと思います。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?