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万引き家族を観て 読書の秋も到来


みなさま、こんにちは。
今日は映画と小説の話です。
『万引き家族(是枝裕和監督作品)』を観ました。

前に見た時よりも、
なぜかとても感情が揺さぶられ、
胸に迫ってくるものが強くありました。

映画に登場する人物たちが、
私の知っている
あの人やあの子…、
と重なってみえて、
現実味が強く感じられたからかもしれません。

うまく考えや感想が頭でまとまらないので、
映画から繋がる世界にしばらく留まっていたいと思い、
『偸盗』を読みました。
芥川龍之介の小説です。

単純に、
万引き→盗む→偸盗
と連想したわけです(笑)。
この小説も以前に読んだことはあったのですが、
読み返したら、
これまた胸苦しい思いに入り込みました。

この二つの作品に通ずる世界観があるように思うのは、
私だけでしょうか?

『万引き家族』も『偸盗』も、
誰の心にも生じる
疑心や所有欲を
巧みに描いていると思います。

そして、
普遍的なテーマである、
愛や悲しみや痛みに触れています。

私はこの二つの作品の感想を書くことは、
到底できないと今は感じています。

でもこうして紹介したのは、
この二つの作品を通して、
傷を負った人の営みのことを思わずにはいられなくて、
これらの作品に触れていない人に
知ってほしいなと思ったからです。
映画を観た後の、
何とも言葉にできない心情に近い表現を
小説の中に見つけることができました。下記に引用します。


 … 安濃は、この時、唄をうたいながら、
  遠いところを見るような眼をして、
  蚊に刺されるのも知らずに、
  現(うつつ)ながらの夢を見た。

  人間の苦しみを忘れた、
  しかも又人間の苦しみに色づけられた、
  うつくしく、傷ましい夢である。

  そこでは、
  一切の悪が、眼底を払って、
        消えてしまう。

  が、
  人間の悲しみだけは、
  ― 空をみたしている
               月の光のように、
        大きな人間の悲しみだけは、
        やはりさびしく
              厳かに(おごそかに)
              残っている。…

(『偸盗』芥川龍之介 新潮文庫 より 引用)


最後まで読んでくださって、ありがとうございます。
少しずつ涼しくなってきました。

読書の秋の始まりの時に。

(20190918記載)

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