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モノのコミュニティ|はじめに

昨年の夏(2023年7月)、文学フリマ札幌8へ出品したZINEにこう書いた。

どうすれば、アレンジメントを解きほぐして流動化させること(ブラックボックスを開くこと)ができるだろうか。本書でとりあげたのは、「アクターを追う」という既に知られた方法と、モノ(非人間物)が参加するコミュニティという未成熟なアイデアであった。後者については、参加型デザインやコミュニティビルドの考え方を読み替えることで、引き続き考えていきたい。

「研究的実践を組みなおす:Vol.1 再読する」 p.33-34.

この文章を書いてから「モノ(非人間物)が参加するコミュニティ」という言葉がずっと引っかかっていた。その形をイメージしながら、日々を過ごしていた。

そんな折、homeport 山崎さんから熊本ゼミ合宿に誘われた(詳細は「第2回 homeportゼミ合宿 in 熊本~熱源と水源~【旅のしおり】」)。
合宿には事前課題があった。
それは「homeportを通して表現したいこと」をA4用紙1枚程度にまとめることだった。また、1年後にアートスペース田中事件で行われる「第1回 homeport個展:いつか来た道」の展示アイデアをデモテープ的にまとめることでもあった。

良い機会だと思った。
ずっと頭の片隅にあった「モノが参加するコミュニティ」というアイデアを掘り起こし、形にしてみることにした。

思考のきっかけとしたのは「人が参加するコミュニティ」としての読書会だ。読書会は、ある本に興味を持つ人が集まって会話をする会だが、登場人物をモノに置き換えてみたい。

それは、ある本と弱くつながるモノ(本)が集まる本棚のような場所(=ある本に興味を持つモノが集まる場所)というイメージになりそうだ。
人が本棚の前に立ち、集まったモノたちを眺めると、それらの緩やかなつながりを想像できる(=モノ同士の会話を想像できる)。
つながりを想像した後には、自分もそこに、モノを置いて帰ることができる。
そんな場所を「モノが参加するコミュニティ」として制作し、1年後に展示できないか。そんなアイデアを熊本合宿で報告した。

熊本合宿から帰るとすぐに、文学フリマ東京38へ出店する予定だったので、そこでコミュニティの初期メンバー集め(本集め)をすることにした。コミュニティの中心には自分の本を据えた。すなわち「自分が書いた本」と弱くつながるモノ(本)を収集することにした。

文学フリマのブースにペンとスケッチブックを置いて、自身の本を買ってくれた人に本を1冊紹介してもらった。自分の本に興味を持ってくれた人が大切にしている本は、私の書いた本とどこかでつながっていると考えた。

ありがたいことに、12冊の本が集まった。教えてもらった本を購入し、小さな本棚を作った。

これから1冊ずつ読んで、感想を書いていく。自身が書いた本とのつながりを、緩やかに想像しながら。そして来年、熊本で展示する。

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