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第2回 homeportゼミ合宿 in 熊本~熱源と水源~【旅のしおり】

1.今回の旅についてー地元の記憶

 2023年9月の「定山渓ビューホテルをビューする(まなざす)」から、約8か月。今回は2024年の5月に山崎の地元である熊本を訪れる。筆者は、1990年代前半に多摩ニュータウンから、母方の実家である熊本県上益城郡益城町広崎へと引っ越した。
 小学2~4年までは広安小学校で過ごし、毎年恒例のナイトハイクでは、第2空港線を友とひたすら歩いた。その後、5年生から新設の広安西小学校へ。交通の要所である益城熊本空港ICやグランメッセ熊本(コンベンション施設)に程近く、だだっ広い田んぼの中に突如現れた真新しい校舎。私はその1期生にあたる。当時、国の事業でWindows95がインストールされたパソコンが多数設置されていたた記憶があり、私はパソコン部に所属していた。
 益城の実家では、祖母と過ごす時間が長く、桜木にあるファミリーレストラン「ジョイフル」に一緒に出掛けたりした。しかし、まもなくして祖母が病気になり、母は仕事と病院の往復。私のお供は、近くにできたローソンの「冷やしとろろそば」だった。
 私は病院のそばにあるダイエー(現イオン)を一人で何度もさ迷い歩き、ディッパーダンのクレープを食べたり、当時流行していた8cmのCDを買ったり、マンガを買ったりしていたと思う。その記憶があるから、今でもサッポロファクトリーにあるディッパーダンには時々通う。ディッパーダンでは熊本地震以降、クレープの生地に熊本県産の米粉が使われていて、くまモンデザインの包装紙で提供される。
 祖母の白血病は、実家の近くに垂れ下がっている高圧線の影響ではないかと言われていた。祖母が入院した後に、うちに迎えた犬のチャッピーもほどなくして病気になったし、私もしばしば頭痛に見舞われた。親戚の人が管理会社に掛け合ってくれたが、なかなか改善されることはなく、当時測った電磁波の数値は高い値を示していた。今では、高圧線は空高く上がっているが、あんなに元気だった祖母は益城に家を構えて、ほどなく病気になり、亡くなってしまった。
 小学校卒業を機に、市内へ引っ越し、当時日本一のマンモス校と言われた帯山中学校に入学。クラスは12クラスもあった。小学校区外からの入学で、友達づくりに苦慮し、一人でいることも多かった。ソフトテニス部の同級生とは唯一今でも繋がりがあり、共に研究に関連する仕事についている。中学3年までダラダラと日々を過ごしていたが(好きなテレビゲームを買い求めるために東バイパス周辺を自転車で疾走)、突如、別離した父親が現れ、それを機に猛烈に受験勉強を始める。
 2000年にマリスト学園高校に入学。男女共学元年の年だった。私はひたすら受験勉強にあけくれ、スポーツのクラスマッチにも非協力的。テストのときだけ、授業のノートを見せてほしいとねだるクラスメートにうんざりし、どうしても協力する気になれなかった。
 とある日、学園祭の準備が始まっているのに気づかず、クラスで勉強していた私を、同級生が血相を変えて呼びに来た。急いで、集合場所に向かうと、みんなの前で「おまえ、なめんてのか」と3年の先輩に胸ぐらをつかまれる。その後の気まずさを最後まで引きずり、クラスマッチもテストも学園祭も分け隔てなく真摯に取り組む同級生に憧れ、嫉妬していた。
 高校卒業後、代ゼミでの浪人を経て早稲田大学に進学。その後は、北大の院へ行き、熊本とは疎遠になった。元々、多摩ニュータウンが故郷だという身体感覚があり、熊本は自分の外部という意識があった。でも、無意識・身体の部分で、私の内部にも確かに熊本はあったのだと思う。高校帰りに、テニス部の親友と立ち寄った江津湖のほとりや、今は亡きスーパータニダのキムタコ。高校からはずっと受験勉強という空間と時間の中で移動を繰り返していたけれど、その最中に出会った場所もあったはずだ。
 時は経ち、2017年の年明け。それまでの数年、何度も体調不良を繰り返していて、またその波がやってきた。会社にも行けず、大学院のゼミも無断で休み、気づけば新千歳空港で会社と指導教官にメールを打ち、気づいたら実家の前に立っていた。母親は何も言わず、私を迎い入れ、テレビをつけるとTBSのドラマ「カルテット」が放送されていた。松たか子は「人生は3つの坂がある。上り坂、下り坂、まさか」と言っていた。
 その後、2017年の3月から1年間熊本で過ごしたが、結局のところ、研究で岡山と山形、そして母校である北大を行ったり来たりして、忙しなく日々を過ごした。案の定、同年の10月頃から体調を崩し、約2カ月間、ずっと家にいた。後にも先にもそんなに長い間、家に居たことはなかった。少しずつ、少しずつ、外に出るようになり、早朝に江津湖を歩いたりした。2018年初頭、必死の思いで札幌へ行き、休学届を提出しようとしたら、後輩と出会い「山崎さん、帰ってきてくださいよ」の一言で札幌へ戻ることを決意する。その後輩はもう札幌にはいない。あれから6年。私は未だに札幌にいて「homeport」を名乗るようになった。
 私が初めて熊本で住んだ益城の実家は、2016年4月の熊本地震でも倒れず(半壊の判定)、今ではすっかり新興住宅地になった広崎で、ひときわ歴史の佇まいを感じさせる場所になった。その場所に、約30年ぶりに友人を招く。小学校の時の「お泊り会」の再現である(詳細は「4人の田中君」を参照)。その場所に集う人は、一見、何の脈絡もなく集まった人たちである。しかし、私の39年の時間を通してできた道があったからこそ、出会った必然的なメンバーでもある(参考:「音楽フェスティバルを通じた地域社会の継承 ー山形県長井市西根地区「ぼくらの文楽」を中心に」)。

2.なぜゼミ合宿?

 単純なお泊り会でもよいと思ったが、プランを考えていく中で、何か「課題」、つまりは目的があった方がよいと思った。目的なんて言葉もよく分からなかった小学校時代の遊びの延長線上にあるお泊り会とは異なり、参加者はある程度歳を重ねている。その分、良くも悪くもそれぞれの文脈があり、そこには壁がある。その壁を繋ぐものとして「課題」を設定しよう、そして「homeport(母校/港)」なのだから、これはゼミ合宿としても位置付けることができると思った。文系ではしばしば恒例行事として実施されてきたゼミ合宿。当時は全く意識してしなかったが、合宿地の場所性が思いもよらない言葉を引き出すかもしれない。

3.熱源と水源

 熊本はエネルギーに満ちた場所である。私が益城の実家に越したとき、朝起きると雲仙普賢岳からの火山灰が車に降り積もっていた。阿蘇は頻繁に小さな噴火を繰り返しているし、阿蘇の伏流水が熊本市で地下水として湧出し(代表的な場所が江津湖)、約74万人が住む政令指定都市の熊本の水道は全て地下水で賄われている。

 私たちが宿泊予定のわいた温泉郷は、文字通り”地熱のまち”であり、地域の至るところで蒸気が舞っている。同温泉郷のある小国町には、地域住民主体の地熱事業組織「わいた会」がある。

 同HPによると、わいた地区では、1996年頃から大手事業所による地熱発電所建設計画があったが、発電による「温泉資源の枯渇」が懸念され、地区は賛成派・慎重派に二分、さらには長年続いていた地区の「盆踊り」さえ開催できない地域の分断が起こったという。しかし、少子高齢化が進み、若者が都市へ流出する中で、新しい産業を導入することで、地域が維持できるのではないかという思いで地区は一致。一度は分断された地区の全世帯が役員となり、住民主導の「わいた会」が2011年に設立されたという。
 同会の地熱発電事業では「温泉及び周辺環境を守ること」を大前提とし、大規模な掘削が伴わない発電出力とし、周辺温泉事業者の源泉についてはモニタリングを実施し、湧出量等に変化がないかことを常時確認するなどの取り決めを行っているという。
 上記の「わいた会」の取組は、文理融合の知のあり方の一つの”実践”のような気がするし、源泉を守り有限性を意識することは、homeportのコンセプトの一つでもある。今回のゼミ合宿では、そのエネルギーを頭で考える前に身体で感じるため、まずは涌蓋山に実登ってみたいと思う。

4.大まかな旅程(20240512更新・確定版)

(5月16日(木))
  山崎 熊本着・実家の掃除

 5月17日(金)
   (山崎 夕食調達)
 15:00~15:30 宮ちゃん、田中君 通町筋到着⇒レンタカーで出発
    ~museum、橙書店に立ち寄り
 17:00 熊本県立図書館であべ君と合流
    ~江津湖の聖地巡礼  
(魚勢で魚調達)
 18:00-山崎(蒔平)宅 お泊り会(無料・投げ銭)
 ~えがちゃん合流
 20:00-アートスペース田中事件を訪問
 (2025年に第1回homeport個展を開催予定) 

5月18日(土)
 6:00 レンタカーで阿蘇出発
        涌蓋山登山~はげの湯登山ルートより

(昼食・お風呂・買い物)
※宿の人おすすめスーパー、まるみや・フレイン
(事前に冷蔵庫に食材を預けること可能)
  「豊礼の宿」チェックイン

 地熱珈琲訪問

  夕食:宿で地獄蒸し体験
   (季節の野菜と鶏肉&地ビール&高菜チャーハン)

 夜 ゆるやかゼミ 
  各自が事前に準備した「homeportを通して表現したいこと」
  (A4 1枚程度)をもとに対話

5月19日(日)
6:00 阿蘇出発
 19日解散組は熊本空港or周辺の高速バス乗り場(福岡空港行き)でお別れ
~水俣訪問
  山崎実家泊

5月20日(月)
 各自帰路へ

(山崎実家)

(豊礼の湯)

参加希望の方は下記までご連絡ください。(誰でも参加できます)
tourismusic.station@gmail.com


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