キック オア バン
ある奇妙な塔の一室で彼等はお茶を飲んでいた。
島国の伝説って知ってる?
なにそれ?
二十一時の神様が増えすぎたヒトを減らすためにしたお話しのことだよ
え、二十一時の神様ってあの神話の一部の?
そうそう
でもあれって……
そ、まだ全部は見つかってないよ
二十一時の神話は極東の島国の祠から見つかったんだってさ
なんでまたそんな島国から……
今までのは大陸から出てきてたから不思議だよね
でも話の内容的にはなるほどなーって感じだったよ
ふぅん……ね、話してくれないの?
あ、気になる?
そりゃね!
じゃあ覚えている限りで簡単に話すね……
その頃のヒトは増えすぎていた。
増えすぎていて地上という地上から溢れかえっていた。
溢れてしまったヒトの一部は広い海へと棲み処を変え、地上のヒトから逃げるように急いで海底へと消えていったそうだ。
そのヒトたちは後に地上へ戻ることになるが、それはまだ少し先のお話し。
地上に残ったヒトは前の時間と変わることなく争いを続けていた。
争いを続けるわりにはヒトの数が減らない。
減らすこともできるのだが、ヒトはその手段だけは取ろうとはしなかった。
これは大陸のヒトの話である。
次に島国のヒトの話をしよう。
その頃の島国にももちろんヒトは溢れかえっていた。
争いの続く大陸から逃げるように渡って来たヒトもいる。
しかし島国は大陸と違い陸地の制限がかなりある。
それを理解しないで渡って来たヒトは、もともとその土地に住んでいたヒトと衝突を繰り返す。
中にはそれを理解しているヒトもおり、そのようなヒトは住んでいたヒトに受け入れられ島国で円滑に過ごしていた。
ただ、それを良く思わないヒトも大勢いた。
それは渡って来たヒト、住んでいたヒト、両方を含んでいる。
ところで、この島国には神様が眠っているという伝説があった。
島が出来る時その陸地に取り込まれ、今も地の底で眠っているという。
ある日。
男の子がその神様が眠っていると言われている土地に足を運び、願い事をした。
男の子が願ったものは単純なものだった。
争いがなくなりますように。
それだけ言って男の子は去っていった。
奇しくもその時、地の底に眠っていた神様がその言葉を聞いていて眠りから覚め、その願いを叶えるために地上に現れることになる。
……それで、神様はどうやって男の子の願いを叶えたの?
それがさ、その部分が破損しててまだ解析できてないんだって
えー!
まぁでも……、島国にとって合わないヒトを排除していったんじゃないかな
うぅ、武力行使……荒っぽい神様なのか
さぁね、でも大抵は武力行使だろうこういうお話はさ
そうなると合わないヒトがどういう基準なのかが気になるよね
……ん、そうだね
早く解析が進むといいね
それ待ちだな……
そうじゃないと針をいくつ進めればいいかわからないし
そう言って、彼等は床一面に組み込まれている大きな時計に目を向けた。
正面の壁に埋め込まれている時計は八時を指していた。
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