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スノー


君はすぐになんでも諦めるよね


彼女はそう言って僕から目を逸らし、遠くのビル群を眺めた。

僕は彼女に返す言葉が見つからず、手元の冷えたコーヒーに視線を落とす。

しかしそこには、ただ黒い水が溜まっているだけに思えた。

彼女に返す言葉があるわけもない。

僕が黙っていると、彼女はため息交じりに言う。


まあ諦めるっていうより

飽きるのが早いって言った方が正しいのかもね

君の場合は、だけど


軽い笑いが最後に交じった。

それでも僕はなにも言えない。

じっと黒い水を見つめ続けている。


……それ、淹れなおそっか

冷めちゃったよね


僕は、はっとして顔を上げて首を横に振る。

冷めてしまってもちゃんと飲み干すのが、僕のルールだから。


君のそういうところ、好きだよ


ふわりと笑い、彼女は自分の分を淹れてくると告げて部屋の中へと立ち去る。

彼女の足音と気配が消えて、家の屋上には僕一人だけになった。

冷たいコーヒーを一気にあおり、中身を空にする。


……結局、新しいの淹れないと、か


空になったカップの底をぼんやりと見つめて、どうして自分は何かを長く続けることができないのだろうかと考える。

考えても、もちろん答えなどない。

いままで何度も同じような状況になったとき、いつもそれを考えたのだから。

長く続かないことの理由なんてないのだ。

僕が飽きやすいからとか、そういう性格的なことが理由とも思えない。

というより理由を探すことは無意味なのだと、そう思う。

ただ続かない、その現実を受け止め、受け入れるしかない。

答えを見つけるのを止める。

それが僕の答えなのかもしれない。


やっぱりなくなってたね

あ……

面倒だから持ってきちゃった

淹れるから動かないでね


彼女はそう言い、僕の持っているカップにステンレスボトルからコーヒーを注ぐ。


このボトルもさー、そろそろ新しいのに買い換えないとね

……まだ、使えるよ

でもほら、よく見て

この辺とか傷が目立つじゃない

……そうだけど、でも、まだ

はいはい、じゃあ買い替えはなしね

君の物を長く大切に使うところ、私は好きだよ


最後は笑いが混じっていたので本当にそう思っているのか謎であるけれど、僕は彼女の言葉もそのまま受け取った。

それが一番いい。

彼女は続けてこう言った。


君のその受け入れていくスタイルも


私は好きよ


空からは小さい雪の粒が降り始めていた。







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