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オクル



浮かれているやつらが多くなるこの月の後半が嫌いになったのは、高校の頃だっただろうか。


その頃の俺はそもそもプレゼントを運んでくるのは両親だと知っていたので、小学生の頃のように心を躍らせることもなく、靴下を用意することもなければ朝起きて枕もとを確認することもなくなっていた。

これを大人になった、と言う者もいれば、ただ現実を知っただけだと言う者もいた。

現実を知るということが大人になるということであるならば、この頃の俺はまだ大人になってはいなかった。



あの日は学校がまだ冬期休暇に入っていなかったので、寒くて忌々しい雪道を踏みつけながら登校していた。

いつものことだ。

いつもと同じように登校して、下校する。

その予定だった。

行きは良かった、間違いない。

いつもと同じで、途中からクラスメイトと合流して学校へ着く。

帰りがいつもとは違った。

最悪な帰り道だ。

なぜかは知らないがあの日の帰りに俺は担任に呼びつけられて、引きこもりのクラスメイトへの大量のプリントを預かった。

帰りに寄って渡してほしい。

そんなことを軽く言っていたような気がする。

どうして俺が行かないといけないのかとは思ったが、口には出さずに黙っていた。

多分理由なんてなくて、本当に家が近いというか帰り道にそのクラスメイトの家があるというだけで俺が選ばれたのだろう。

ただ、他にも方向が同じクラスメイトはいた。

それなのに、なぜ俺だったのか。

今、あの時に戻れるのなら俺は絶対に聞くだろう。

そのせいで俺がその先何十年も嫌な思いを抱えて生きていくことの原因に遭遇するのだから。



思いのほか担任からの注意事項のようなものが多く、俺が帰る頃には同じ方向でいつも一緒に帰っているやつらが一人も残っていなかった。

帰宅部はチャイムと同時に去る。

仕方のないことだ。

昼過ぎから降り出していた雪のせいでさらに忌々しくなった道を踏みつけて、引きこもりの家へ向かう。

面倒くさいのと寒いのと、早く家に帰りたいのと、そんな気持ちが混ざっていた。

でも、その引きこもりの家に着いた時、その気持ちの全てがふっとんだ。

呼び鈴を押しても誰も出ないので、ポストにプリントを入れて帰ろうと思ったのだが、庭の方から変な匂いがしたので回り込んで見に行ったのだ。


そこには引きこもりのクラスメイトがヒト型の何かを燃やしている姿があった。

驚いて動けない俺にそいつはゆっくりと口にした。


ママがサンタクロースに僕がいなくなるようにって願ってたんだ

だから僕がママのサンタクロースになって

僕のいない世界をプレゼントしてあげたの

今はね

煙になって僕のいない世界に送ってあげてる最中なんだ

きみも一緒に僕のママのこと見送ってあげる?


俺は動くことが出来なくて、結局その様子をそいつと一緒に見ていた。

数十分後に近所の住民が通報して大勢の大人がやって来て、それでも俺は自力であの場所から動くことが出来なくて。



そこから先のことは正直よく覚えていない。

よく覚えてはいないが、この時期がくると嫌な思いが毎年俺の心を襲ってくる。


そして強烈に思う。


サンタクロースなんていない方が良い、と。


サンタクロースのいない世界に行きたい、と。


浮かれている人々がざわざわとうごめき歩くのを横目に、そんなことを思っていた。






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