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ペットロスガーデン(エッセイ)

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ペットロス歴10年、庭の植物や野鳥と暮らす、日々の考察です。 書きためたエッセイを投稿しました。15話完結+2話のお話です。順に読んでいただけたら嬉しいです😊
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#自然と暮らす

穴を掘った先に見えたものは(エッセイ・ペットロスガーデン⑭)

穴を掘った先に見えたものは(エッセイ・ペットロスガーデン⑭)

玄関のドアが雨ざらしなので、軒を作ることになった。
考えなければならないのは、今ある植物の移動についてだ。大工さんに相談して、なるべく植物を、今の場所から動かさないで済む建築方法を選ぶ。
しかし、玄関横のアンジェラが、日陰に入ることになりそうだ。バラに陽当たりは重要だ。移動するか、このままにするか。植え替えて枯れるのは、避けたい。よりによって、アンジェラだ。そんなことになったら、それこそ相手がバラ

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生きものの、いのちの温度(エッセイ・ペットロスガーデン⑬)

生きものの、いのちの温度(エッセイ・ペットロスガーデン⑬)

(勝手に)その弱さを愛おしんでいた鳥子さん(オス)は、冬になり庭の滞在期間が長くなるにつれて、やっぱり他の野鳥を追い払うようになった(去年の鳥子さんと同一人物なのかもしれない)。
渡り鳥の鳥子さんは、秋口にやってきた頃、新参者として控えめにしていただけだったのだ。なんだったの、あの弱き者への考察は。

まあいい。
それでも、鳥子さんの下手な歌は、相変わらず大好きだ。
 
鳥子さんは普段、土の中にい

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弱きものの愛おしさ(エッセイ・ペットロスガーデン⑫)

弱きものの愛おしさ(エッセイ・ペットロスガーデン⑫)

完璧じゃないものに、心惹かれるのはどうしてだろう。

ここ数年、落ち葉が積もる頃、庭にやって来るシロハラの鳥子さん(後から知ったのだが、オスだった)。
今年の鳥子さんは、去年来た鳥子さんと比べて、縄張り意識が強くない。
去年の鳥子さんは、憎たらしいほど庭中の野鳥を追い払い、自分だけの庭にとても満足そうだった。
今年の鳥子さんが、他の野鳥にも水場を譲り、下手な歌を歌って過ごしているのを見ると、微笑ん

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遠慮がちに開店した、野鳥レストラン(エッセイ・ペットロスガーデン⑪)

遠慮がちに開店した、野鳥レストラン(エッセイ・ペットロスガーデン⑪)

夏の間、庭では緑が生い茂り、蝶や蝉やバッタ、カマキリ、ヤモリ、トカゲ、ヘビ、おびただしい数の生きものが、その命を爆発的に燃やす。
鈴虫やコオロギが織りなす、秋の虫の音が少しずつ小さくなり、ついには聴こえなくなる頃、生きものたちが、ひっそりと命を終えて、冬が訪れたことを知るのだ。
冬は、庭がしぃん、とする。

そんな冬。
ついにやってしまった。
ずっと、自然界に手を出してはいけないと思ってきたのに。

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