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弱きものの愛おしさ(エッセイ・ペットロスガーデン⑫)


完璧じゃないものに、心惹かれるのはどうしてだろう。


ここ数年、落ち葉が積もる頃、庭にやって来るシロハラの鳥子さん(後から知ったのだが、オスだった)。
今年の鳥子さんは、去年来た鳥子さんと比べて、縄張り意識が強くない。
去年の鳥子さんは、憎たらしいほど庭中の野鳥を追い払い、自分だけの庭にとても満足そうだった。
今年の鳥子さんが、他の野鳥にも水場を譲り、下手な歌を歌って過ごしているのを見ると、微笑んでしまう。
「ヒョロロ~」という、安いプラスチックの笛みたいな歌声が、愛おしい。
鳥子さんが気持ちよさそうに歌っているので、思い付きで、YouTubeから「シロハラの鳴き声」を選んで聴かせてみたら、鳥子さんは突然のライバルの登場に、口をつぐんでしまった。気が小さいみたいだ。
今年の鳥子さんは、弱くてなんだか愛おしい。

でもきっと本当は、弱くなんかないのだろうけれど。
自然界で立派にやっている鳥子さんは、本当は強いのだ。

勝手にそんな物語を見ているのは私だけなのだろう。
強いものが生き残る動物の世界で、自分に似て見えるものたちを、放っておけない、私の悪い癖。

本当は動物たちのほうが、ずっと強いことを知っている。
この自然は、毎日完璧にまわっていることを知っている。

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