マガジンのカバー画像

ペットロスガーデン(エッセイ)

18
ペットロス歴10年、庭の植物や野鳥と暮らす、日々の考察です。 書きためたエッセイを投稿しました。15話完結+2話のお話です。順に読んでいただけたら嬉しいです😊
運営しているクリエイター

#野鳥

生きものの、いのちの温度(エッセイ・ペットロスガーデン⑬)

生きものの、いのちの温度(エッセイ・ペットロスガーデン⑬)

(勝手に)その弱さを愛おしんでいた鳥子さん(オス)は、冬になり庭の滞在期間が長くなるにつれて、やっぱり他の野鳥を追い払うようになった(去年の鳥子さんと同一人物なのかもしれない)。
渡り鳥の鳥子さんは、秋口にやってきた頃、新参者として控えめにしていただけだったのだ。なんだったの、あの弱き者への考察は。

まあいい。
それでも、鳥子さんの下手な歌は、相変わらず大好きだ。
 
鳥子さんは普段、土の中にい

もっとみる
弱きものの愛おしさ(エッセイ・ペットロスガーデン⑫)

弱きものの愛おしさ(エッセイ・ペットロスガーデン⑫)

完璧じゃないものに、心惹かれるのはどうしてだろう。

ここ数年、落ち葉が積もる頃、庭にやって来るシロハラの鳥子さん(後から知ったのだが、オスだった)。
今年の鳥子さんは、去年来た鳥子さんと比べて、縄張り意識が強くない。
去年の鳥子さんは、憎たらしいほど庭中の野鳥を追い払い、自分だけの庭にとても満足そうだった。
今年の鳥子さんが、他の野鳥にも水場を譲り、下手な歌を歌って過ごしているのを見ると、微笑ん

もっとみる
遠慮がちに開店した、野鳥レストラン(エッセイ・ペットロスガーデン⑪)

遠慮がちに開店した、野鳥レストラン(エッセイ・ペットロスガーデン⑪)

夏の間、庭では緑が生い茂り、蝶や蝉やバッタ、カマキリ、ヤモリ、トカゲ、ヘビ、おびただしい数の生きものが、その命を爆発的に燃やす。
鈴虫やコオロギが織りなす、秋の虫の音が少しずつ小さくなり、ついには聴こえなくなる頃、生きものたちが、ひっそりと命を終えて、冬が訪れたことを知るのだ。
冬は、庭がしぃん、とする。

そんな冬。
ついにやってしまった。
ずっと、自然界に手を出してはいけないと思ってきたのに。

もっとみる
庭に来る生きものたち(エッセイ・ペットロスガーデン⑩)

庭に来る生きものたち(エッセイ・ペットロスガーデン⑩)

庭でホオジロの声がするので、カーテンの隙間から、二人の会話を立ち聞きしてみる。
オスらしきホオジロが「チッチ」と鳴くと、遠くからメスが「チッチ」と返事をしている。「チッチ」「チチチ」。時には、ほぼ同時に鳴いたりして、「あっ、どうぞどうぞ」「いえ、どうぞ」なんて感じだ。
会話をしながら二人の距離は徐々に近づき、お互いが見える所まで接近した。そのうちオスが、少しずつ場所を移動し、我が家のくつろぎスペー

もっとみる