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学生服リユース業界概論

 近年、学生服リユース店が徐々に増えています。ニッチな業態ですが、ソーシャル・ビジネスとして注目されています。そんな学生服リユース業界について、簡単にまとめてみました。

法律的には古物商

 学生服リユース事業者は、法律的には古物営業法の規制を受ける古物商に当たります。そのため、都道府県公安委員会から古物商の許可を得る必要があり、取引をホームページ上で行う古物商は、ホームページに許可番号を載せることが義務づけられています。

〇古物営業法
(定義)
第二条 (略)
2 この法律において「古物営業」とは、次に掲げる営業をいう。
一 古物を売買し、若しくは交換し、又は委託を受けて売買し、若しくは交換する営業であつて、古物を売却すること又は自己が売却した物品を当該売却の相手方から買い受けることのみを行うもの以外のもの
二・三 (略)
3 この法律において「古物商」とは、次条第一項の規定による許可を受けて前項第一号に掲げる営業を営む者をいう
4・5 (略)
(許可)
第三条 前条第二項第一号に掲げる営業を営もうとする者は、営業所(営業所のない者にあつては、住所又は居所をいう。以下同じ。)が所在する都道府県ごとに都道府県公安委員会(以下「公安委員会」という。)の許可を受けなければならない
2  (略)
(許可の手続及び許可証)
第五条 第三条の規定による許可を受けようとする者は、公安委員会に、次に掲げる事項を記載した許可申請書を提出しなければならない。この場合において、許可申請書には、国家公安委員会規則で定める書類を添付しなければならない。
一~五 (略) 
六 第二条第二項第一号に掲げる営業を営もうとする者にあつては、その営業の方法として、取り扱う古物に関する事項を電気通信回線に接続して行う自動公衆送信(公衆によつて直接受信されることを目的として公衆からの求めに応じ自動的に送信を行うことをいい、放送又は有線放送に該当するものを除く。以下同じ。)により公衆の閲覧に供し、その取引の申込みを国家公安委員会規則で定める通信手段により受ける方法を用いるかどうかの別に応じ、当該古物に関する事項に係る自動公衆送信の送信元を識別するための文字、番号、記号その他の符号又はこれに該当しない旨
七 (略)
2~4 (略)
(標識の掲示等)
第十二条 古物商又は古物市場主は、それぞれ営業所若しくは仮設店舗又は古物市場ごとに、公衆の見やすい場所に、国家公安委員会規則で定める様式の標識を掲示しなければならない。
2 古物商は、第五条第一項第六号に規定する方法を用いて取引をしようとするときは、その取り扱う古物に関する事項と共に、その氏名又は名称、許可をした公安委員会の名称及び許可証の番号を電気通信回線に接続して行う自動公衆送信により公衆の閲覧に供しなければならない

比較的新しい業態

 学生服リユース業の歴史はさほど古いものではなく、全国初の学生服リユース専門店は2011年1月に香川県高松市で創業した「学生服リユースショップさくらや」です。

 それ以前は、趣味としてセーラー服やブルマーを収集する人向けの店(いわゆる「ブルセラショップ」)が知られていたので、「さくらや」創業に当たっては、「怪しいお店なんじゃないか」と疑われたりもしたそうです。そのため、「さくらや」は学生服を真に必要としている家庭にだけ販売する姿勢を全面に出しています。

 さくらやの創業から10年。今では様々な学生服リユース店が全国各地にできています。

店舗形態は二種類

(1)実店舗系

 学生服リユース事業者は、大きく分けて実店舗系と無店舗(ネット通販)系に分かれます。実店舗系の最大手、と言うか唯一のチェーン店が「さくらや」です。

 「さくらや」の創業者はサンクラッドの馬場加奈子社長。三人のお子さんを持つお母さんです。大学卒業後に新卒で入った損害保険会社や、結婚退職・出産・そして離婚を経て入った生命保険会社での営業経験はありますが、企業経営は「さくらや」が初めてだそうです。

 「さくらや」は現在、全国で54店舗を有するチェーン店に成長しており、直営店である高松店以外は、「パートナー」が経営者として各店舗を運営しています。多くは子育て中のお母さんだそうです。

 そのため、お母さんが働きやすいように営業日は毎日ではなく週に3〜4日程度、営業時間も一日5時間程度となっています。

 また、前述のとおり販売は学生服を必要とする家庭に限定しており、店舗でのお客さんとの会話などで確認しながら販売しているようです。そのことが、中古の学生服を売りに来るお客さんの安心感に繋がっています。

 さくらや以外の実店舗系の学生服リユース店(独立系)も、概ねさくらやと同様の形態を取っています。営業日や営業時間は家庭と両立するのに無理のない範囲、販売先は学生服を必要とする家庭に限定、ブログでこまめに販売情報や地域の情報をアップ、などです。

 独立系の学生服リユース店が全国でいくつあるのかは定かではないのですが、全国の独立系のお店を紹介しているページを見ると、13店舗が掲載されています。ただし、リンク先をたどるとFacebookが閉じられていたりと、必ずしも営業を継続している店舗ばかりではないことが分かります。一方で、このページに掲載されていない独立系の店舗もあると思われ、実際の店舗数はよく分からないのが実情です。

(2)無店舗系

 インターネット通販サイトで営業している学生服リユース事業者があります。この形態の事業者は、古物営業法に基づいてホームページ上に許可番号を掲載しなければなりません。ただ注意しなければいけないのは、古物商の許可を持っているからと言って、ブルセラ用途に販売しない業者であるとは限らないという点です。古物商の許可に当たってその点が審査されるわけではないからです。

 無店舗系のネット通販の中には、買取者販売者が同じ会社であるにもかかわらず、別のサイト&店名で運営されていたり(買取価格の何十倍もの値段で売られていることを分かりにくくするため?)、ライバル企業との間で非難の応酬をしていたりと、カオスな状況が展開されています。

 中古制服の売却を検討する際には、ブルセラ用途で販売されるおそれがないかどうか、よく確認することをお勧めします。

 ちなみに、メルカリでは青少年保護・育成および衛生上の観点から、使用済みのスクール水着、体操着、学生服類などの出品が禁止されています。ラクマヤフオク!も同様です。

ビジネスの観点からの考察

 学生服リユースビジネスが古本や子供服といったメジャーどころのリサイクルショップと大きく異なる点として、(本来の用途で販売される場合には)商圏がとても狭いこと、また、扱う品目が多いという特徴が挙げられます。

 商圏が狭いというのは、制服の仕様は学校ごとに違っているので、特定の制服はその学校の生徒や保護者にしか需要がなく、売れないということです。

 扱う品目が多いというのは、男子用・女子用、夏服・冬服、そしてサイズも分かれていて、購入者のニーズにピッタリ合ったものでなければ、例え同じ学校のものでも売れないということです。

 こうした特徴があるため、大手リサイクルショップはなかなか手が出しづらいのだろうと思われます。

 逆に言えば、地域で地道に店舗運営を続けられる人であれば、大手の参入に怯えることなくビジネスを継続できるとも言えます。

公益の観点からの考察

 学生服リユース業は、近年急速に拡大してきた業種であり、まだまだ玉石混交といった感が否めません。前述のブルセラ問題もあり、業界の健全な発展と利用者の保護を図ることが喫緊の課題です。

 そこで提言ですが、公的な性格を持つ会社横断的な団体で優良な学生服リユース店を「見える化」する方策を講じるべきと考えます。

 具体的には、優良事業者の認定制度を作り、優良事業者をネット上で公開するのです。その場合の要件として、古物商の許可を得ていることは当然として(なければそもそも違法なので)、ブルセラ用途に販売しない手立てを講じていることや、買取者と販売者の関係が明示されていること、苦情等を受け付けるための会社の連絡先を分かりやすくホームページに記載していることなどが考えられます。

 こうした取組によって、中古制服の取引で悲しい思いをする人が出なくなり、学生服リユース業界のイメージが向上することを期待します。

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