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フードデザインいまむかし|フードデザインをよりよく知るための本

はじめに

前回の記事に引き続き、「デザイン文脈におけるフードデザイン」について、よりよく知ることに役立つ書籍を紹介したいと思います。
 今回は、フードデザインのど真ん中ではないですが、1960年代に食べものをデザインの対象のように捉えてエッセイを記していたブルーノ・ムナーリから、フードデザインのど真ん中で界隈を牽引してきたマルティ・ギシェの最新作、そしてフードデザインをテーマにした最新の展覧会図録、この3冊を紹介します。
 これまで同様、ここでフードデザインは、デザイン文脈に軸足を置きつつ、フードを対象にした作品や研究、実践例を指しています。


選書〈いまむかし〉

GOOD DESIGN

Bruno Munari
(1963) 2023
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GOOD DESIGN

・エッセイ集
・オレンジとエンドウ豆を取り上げ、自然によって生み出された(デザインされた)ものを、工業製品と同じように分析する視点を提供する

THE ORANGE
This object is constituted of a series of modulated containers in the form of an orange section placed in a circle around a central vertical axis on which each section rests on its straight side, with all the curved sides turned towards the outside, giving the whole a global form, a kind of sphere.

オレンジ
このオブジェクトは、中央の垂直軸を中心に円形に配置された一連の調整された容器で構成され、各容器はオレンジの一区切りという形である。各区切りはその直線状の側面で軸に接しており、曲線の側面はすべて外向き。全体としては球状だ。

p.12

PEAS
Foods pills of various diameters, packing in double valve cases, very elegant in form, color, material, semi-transparent and easy to open. The case as well as the product itself, and adhesive all come from the same production center.

えんどう豆
様々な直径の粒々が、二重弁のケースに詰められており、その形状、色、材質は非常に優雅である。さらに半透明で、開封も容易。ケースはもとより、製品自体と接着剤も、すべて同一の生産地に由来する。

p.20

Casa Mondo : Food

Martí Guixé
2021
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Casa Mondo : Food

・エッセイ集/バーチャル展覧会図録
・21世紀における食とは?そして何を象徴するのか?を示唆する
・バーチャルな次元が重要になる中で、著者にとって食は、味や香り、食感を通じて人類と自然の関係を再定義しうる、数少ないリアルなものの一つ

Food Design is one of the axes of influence that will transform food culture in the immediate future, just as modern architecture has indirectly contributed to formalizing, in both positive and negative aspects, the world we live in.

フードデザインは、近い未来の食文化に大きな影響を与える要素の一つである。これは現代建築が、私たちが住む世界を良い面でも悪い面でも形作ってきたのと同じだ。

p.7

SITE-SPECIFIC MEALS
The table and the plate are no longer references. Each meal is a personal installation, performative and consistent with the context and the moment. Rituals are pre-arranged with the diners. Cooking and food is not only functional, but include photogenic elements for streaming or deferred transmission and for documentation and display.

場所特有の食事
テーブルと皿はもはや基準ではない。各食事は個々に演出されたインスタレーションであり、その文脈や瞬間に適応している。食事する人たちは儀式を事前に調整する。料理や食品は機能的なだけでなく、ライブ配信や後続の配信、さらには記録や展示にも使えるビジュアル要素も備えている。

p.57

SPACEFARMING: The Future of Food

Next Nature
2023
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SPACEFARMING: The Future of Food

・展覧会図録/zine
・テクノロジーによって変わり続ける食のカタチを、肉、昆虫、植物、タネ、宇宙、火星、Sci-Fi、AIなどの角度から取り組んだ事例や作品を網羅的に紹介
・ビジュアルイメージを豊富に掲載

What would you like to see on your plate in the future? A piece of cultured meat, a vegetable steak or some tenderloin from a real pig? Would you rather have vegetables grown in soil or in a sterile vertical farm? Will there be enough for everybody? And what about the price? Every bite you take affects the world around you, and changes the future slightly.

将来、皿の上に何を載せたいか?培養肉、野菜ステーキ、本物の豚のテンダーロイン。土で育った野菜か、無菌環境で育てられた野菜、どちらを選ぶか?皆に十分供給できるのか、そして値段はどうか。一口一口が、周囲の世界と未来を少しずつ変えていく。

FARM OF TOMORROW
In conversation with Barbara Vos
p.117

In The Martian (2015), what does the astronaut Mark Watney do when he's trapped on Mars? He plants a vegetable garden. His very existence, and by extension ours, depends on his ability to grow crops in an inhospitable climate. Simply put: no potatoes = no future.

『オデッセイ』(2015年)で、火星に取り残された宇宙飛行士マーク・ワトニーは何をするか?彼は野菜園を作るのだ。彼の生存、そしてその延長で我々の生存も、過酷な環境で作物を育てられるかにかかっている。端的に言えば、ジャガイモがなければ未来もない。

FOOD IN SCIENCE FICTION
Jeroen Junte
p.140

以上がフードデザインいまむかしというトピックで選んだ書籍を紹介しました。このシリーズの第一弾「フードデザイナー第1世代」の記事でも登場するMarije Vogelzangは、「食べものは、自然によってすでに完璧にデザインされている。だから私は、Food Designerではなく、Eating Designerです。」と語っています。まさにそのことが分かるような、ブルーノ・ムナーリの視点はさすがだなということ。
 そのようなインダストリアルデザインの視点から食べものを捉え始めたMartí Guixéが、「バーチャルの範囲が重要性を増す中で、食べものは数少ないリアルなものの一つ」と考えていること、その先見の明。
 さらには「フードデザイナー第2世代」の記事でも紹介したChloe Rutzerveldや、「フードデザイン作品集」で扱ったSPACE10のプロジェクト等が、SPACE FARMINGをテーマに最新の作例/事例として結集していること。
 それらが大きな流れの中で重要な位置付けとして捉え直せるなあ〜という意味で「いまむかし」というタイトルをつけてみました。ちなみに、今回の3冊は先日訪れたミラノとオランダのアイントホーフェンで発見してきた本です。SPACE FARMINGの展示については、別の記事で紹介しますので、ぜひそちらもご覧ください。

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こうした内容を『フードデザイン:未来の食を探るデザインリサーチ』(BNN、2022)の中でも取り扱っています。この分野の変遷や周辺領域との関連性などを時間軸に沿ってまとめましたので、よろしければそちらもご覧ください。

最後までお読みいただきありがとうございました。
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本記事中で引用した文献はDeepLを用いて翻訳し、ChatGPTを用いて修正したものとなります。致命的な誤訳等ございましたら、ご指摘いただけると幸いです。また、記事は執筆時点での情報をもとに書いたため、最新情報であるとは限らないことをご承知ください。さらに、本記事の内容は私見によるものであり、必ずしも所属企業の立場や戦略、意見を代表するものではありません。

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