解説編③ 養育権侵害論 #知る学ぶ考える

書き手が、この問題は、広く知ってもらうことに意味があると考え、法的な理屈を積極的に公開している。

養育権が自然権として保障される点について確認してきた。

権利だから万能である、というわけではないことは当然承知している。

制約される場合がありうることは、内心の自由の絶対保障を除いては、当然の話だ。特に、親なるもの、生物上父と母と二人いるわけで、それぞれの養育権が衝突することがあるのも自然の理。人権の制約も他者の人権との衝突の中で起こるとなると、養育権を考えることは、人権の学びそのものではないだろうか。

では、その制約が許されるか、が肝になる。人権が大切だからこそ、必要最小限の制約しか許されない。そのラインを逸脱するなら、人権侵害となり、憲法に反する。

さて、憲法違反を指摘する1点目だ

 現状の法は親の養育権を侵害するものであること


この点について、5点ある。

(1) 非婚父母の単独親権について
(2) 非親権者の同意不要の代諾養子縁組について
(3) 民法766条1項について
(4) 養育権に関わる判断の評価基準が設定されていないこと
(5)子の居所を把握する権利・利益すらも否定されていること


それぞれ見ていこう。


 (1) 非婚父母の単独親権について
   民法は、「親権の効力」として、「親権を行う者は、子の利益のために子の監護及び教育をする権利を有し、義務を負う」とし(民法820条)、子は、親権を行う者が指定した場所に、その居所を定めなければならない(民法821条)。同規定によると、「親権」は、子の監護、教育のあり方を決定し、監護の中心的な要素である居所も決定するものであるから、親の養育権をそのまま具体化した権利であるともいえる。

親権の効力の確認

親権=養育権の具体化、「ともいえる」。

  しかし、民法818条第1項は「子は、父母の親権に服する。」としながら、同条3項において、「親権は、父母の婚姻中は、父母が共同して行う。」としており、非婚の父母のいずれか一方は親権者となることができないようになっている。なお、ここでいう「非婚」とは、法律婚状態にないことを指し、未婚、離婚後、事実婚等を含む(以下、本訴状において「非婚」とはこの意である。)。前述のように親権が養育権をそのまま具体化した権利であるとすると、非婚の父母は単に非婚という理由だけで養育権を侵害されていることになる。そのため、民法818条第3項の「父母の婚姻中は、」の部分及び同規定を前提とする民法819条は養育権を侵害する規定ということになる。

親権=養育権であれば、非婚の父母には選択肢がない以上、それだけで、養育権侵害だ。法が明文で侵害している。これが主位的な主張。その上で、予備的な主張に続く。

  以上のとおり、「親権の効力」の規定を字義通りに捉えると、上記の単独親権制度は端的にそれ自体が親の養育権を侵害する制度であるといえ、本訴訟においても主位的にはこれを主張する。ただ、「親権」はあくまで養育権の調整システムとして第1次的な役割を定めたものであるに過ぎず、父母双方に潜在的な養育権が存在しこれが尊重されるのであれば、必ずしも単独親権自体が養育権侵害とはならない、とする見方もあるかもしれない。しかし、このような見方で単独親権が養育権侵害にならないといえるためには、立法上もその運用上も、父母双方の養育権が尊重され、かつ、父母間の養育権を適切に調整する制度が実現していなくてはならない。以下、予備的にこの点を述べる。

現在の親権制が、養育権の調整制度として機能を果たしているのか、そこが枢要になっていく。検討の結果、もちろん、否、である。

驚くほど、養育権が軽んじられていることが判明する。だから、親子が会えなくなるのだ。

つづく

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