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自分の好きなことを仕事にするな

早いもので2024年ももう3月。「も〜う、い〜くつ寝ると〜🎵」4月1日。そう新学期。
新学期と言えば楽しいことを期待してしまいそうですが、そうじゃない年頃の方もいらっしゃるでしょう。特に来年の就職に向けて就職活動をしている人にとっては。
先日まさに就活真っ最中の学生と話す機会があったのですが、その時に私が発した言葉にその学生は衝撃を受けていました。
私が言った一言とは
「好きなことを仕事にするのは考えものだよ。」
です。
今回はなぜ私が好きなことを仕事にするべきではないと思うのかを切り口に、私が就活生のみなさんに「仕事選び」でぜひ心掛けてほしいことを書いてみたいと思います。


最初に注意点

まず、誤解がないように書いておきますが、私は「好きなことを仕事にするな」とまで言うつもりはありません (この記事のタイトルはそう書いてますが、キャッチーさを狙った商法なのでご勘弁を(笑))。
好きなことを仕事にすることには功罪両方の面があります。それを十分に検証した上で「自分にはこの道しかない!」と思うのであれば、それで良いと思います。その点はご注意ください。

好きなことを仕事にして良かったこと。

実のところ、人には「好きなことを仕事にするな」と言っておきながら、私自身は好きなことを仕事にしました。すみません(笑)。
どんな仕事でも良い面、悪い面がありますが、私の場合は全体として考えるとこの仕事を選んで良かったと思っています。
自分が得意としていた音楽分野に進めたことで、より深く、幅広い知見を得ることができましたし、自分が音楽をやる際により多角的なアプローチで臨むことができるようになったのも、この仕事を選んだからです。
恐らく今もう一度就職活動期にタイムスリップしたとしても、同じ道を選ぶのではないかと思います。
ただ、私の場合はかなり幸運に恵まれた側面があります。

90年代末の超就職氷河期にも関わらず、自分の望んだ会社に入社できたこと。
会社が色々な仕事を経験させてくれて、その中でもピタッとはまる仕事を運良く担当できたこと。
その仕事の技術を向上させるために、良い影響を与えてくれる人たちとの出会いに恵まれたこと・・・etc。
自分自身が死に物狂いで努力したのは当たり前ですが、それを差し引いてもさまざまな幸運に恵まれなければ、ここまで今の仕事を続けることはできなかったに違いありません。
私に訪れた幸運に一つでも遭遇できなかったら、私の人生は十中八九苦難の連続だったに違いありません。
だからこそ、これがすべての人に当てはまるとは到底思えないのです。

好きなことを仕事にすることの辛さ

私のように好きなことを仕事にして、それが運良くピタッとはまれば「この道を選んで良かった」と思えることは間違いないでしょう。しかし、もし運が悪かったら?
人生はたった一つの不運によって奈落の底に落ちることがよくあります。
その不運の代表的なものが「好きだけど向いていない」ということです。
これは本当にきついです。
「向いていないなら人一倍努力すれば良い」というのは、はっきり言って夢物語です。寝言は寝て言え、です。人生はそんなに甘くありません。
努力をして成し遂げられるのなら、その人は元々少なからずその仕事に向いていたのです。
本当に向いていない人というのは、どれだけ努力しても何も成果を残せないのです。そのような不運は自分の力だけで回避できるとは限りません。交通事故や病気、社内の環境の変化などでも起こりますし、自分の身の回りの人に関係して起こることもあります。

もちろん、努力した過程がその人の人生にとって無駄であるかどうかは、その人の生き方によります。ある意味”無駄な努力”をしたことで大きな力に目覚める可能性もあります。ですが、一つの会社においては「君がやってきたことは全て無駄でした。さようなら。」と言われることは普通にあります (実際に口頭で言われることはないかもしれませんが、”事実上の宣告”という意味で)。

そのような不遇な状況になった時に必ず言われるのが
「好きなことを仕事にできてるから良いよね。楽しいよね。」
「好きなことでご飯食べてるんだから、贅沢言っちゃダメだよ。」

というやつです。
自分の精神が落ち込んでいる時に、これを言われるのは本当に辛いです。誰にも相談すらできません。というか、相談した時点で「贅沢言ってんじゃないよ」と冷たい目で見られます。
私自身はこの辛さを何とか乗り越えて来ましたが、それに耐えきれず辞めてしまった人も沢山目にして来ました。

好きなことを仕事にすることを勧めない理由

私が好きなことを仕事にすることをお勧めしない理由はここにあります。
もし、仕事に対して後ろ向きになってしまうようなことが起こっても、好きなことでなければ、会社を辞めるという選択肢を取りやすくなります。
けれども、なまじ仕事が好きだと辞めらない。それこそが”好きなことを仕事にすること”の問題なのです。
言い換えると、「仕事との距離感を取りづらくなること」。これが問題なのです。
仕事との距離をちゃんと取れる人であれば、仮に好きなことを仕事にしても「辞めるべきか、辞めないべきか」「ここは自分が踏ん張るべきところなのか」という線引きをすることはできるでしょう。
ただ、人生経験の少ない就活生のどれ位の人が「自分はちゃんと線引きできる」と断言できるのか・・・。
若い時は多くの決定を自分自身の意思で行うことができるので、どうしても「自分は周りに流されず、自分の意思に基づいた決断ができる」と思いがちです。
しかし、実際には人間が100%自分の意思で決定できることはほとんどありません。そもそも日本人に生まれたこと自体が自分の意思ではありませんし、人の価値観には自分がそれまで生きた環境の中で巡り合った人達の言動が少なからず影響を与えています。
企業に入れば、自分がどれだけやりたくないと思った仕事もやらざるを得ないことが出て来ます。結婚したり、子供ができたり、親の介護をしなくてはならなくなったり、あるいは突然の病に襲われたり・・・さまざまなイベントが人生に起こります。しかも、「よりによって、何でこんな時に・・・」という最悪のタイミングで。
そんな時に好きなこととの距離感を適正に保てるのかどうかは非常に難しい問題です。

好きなことを仕事にしたいへのアドバイス

以上のような理由から、私は世間一般によく言われるような「好きなことを仕事にした方が良いよ」という発言はとてもできません。
好きなことを仕事にするのは、ある意味で、「好きでも何でもない、”仕事だからやる”」ことよりも、かなりの大博打になります。
それでも好きなことを仕事にしたい!という方がいるのであれば、私が伝えられるのは一つだけです。
それは
「敢えてその道を選ぶなら、注意深く仕事との距離を保てるように人一倍気をつけろ」
ということ。
好きなことを仕事にして、それで充実した人生を送れるなら、それはとても幸福なことです。奇跡です。若いうちはそんな奇跡を信じて、人生に挑んでみることも悪くないかもしれません。
でも、その道には相応のリスクが伴うことを忘れてはいけません。好きな道を選ぶという幸福と同じくらいの不幸が、あなたを襲うことが人生にはあり得ます。
そんな時に「好きだから・・・」という感情に引っ張られてはいけません。どんな状況でも冷静な自己分析と状況分析を行うこと。それに基づいた正しい決断をできる強い精神力を持つこと。これはものすごく大変な道です。
恋愛と同じく、人間はどうしても「好き」という感情に引っ張られると冷静な判断ができなくなるので。
しかし、逆にもしそれができるなら、あなたが選んだ道はとてつもない輝きを放つ、あなただけの特別な人生になるでしょう。
今就職活動を行なっている人たちが、周囲の安易な意見に流されることなく、冷静に、慎重に選択を行い、一人でも多くの人が「この仕事を選んで良かった!」と思える人生になることを祈っています。

本日も長文を最後までご覧いただきありがとうございました。


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