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やっぱりこの小説しか考えられない / #2019年のベストnote

2019年のベストnote。
いくつもの面白い作品に出会えたけれども、そのなかでもベスト・・・2019年最強の1作と問われれば、やっぱりコレで決まりだ。

連載小説
ベラゴアルドクロニクル


ワシはいま・・・激しいベラゴアルド・ロスに陥っている。


全83話。

最高のハイ・ファンタジー。
今まで読んだ小説の中でもトップクラスの面白さだ。

この作品は2019年5月、小さな物語・・・第1編『小鬼と駆ける者』からスタートした。ドハマリしたワシは本当に更新が楽しみで楽しみで、毎日の糧になっていた。
そして2019年12月頭『竜の仔の物語 -第2章- 3節』にて大きな区切りを迎え、語り部のギーはしばしの休息に入った。代筆者であるナマケモノ氏の発言によれば「いずれ戻ってくる」とのことで、ワシは気長に待つつもりだ。

なにがどう面白いか、なにがどうスゴイか、以前noteで感想を書いたし、まだ書き足したいんだけども、それはグッとこらえて割愛する。実際に作品を読んでみてほしい。

・・・ということで、今回は本作の「イラスト」と「印象深いシーン」について語りたい。

「エー、ファンタジーとか興味ないし」
そういう人に無理してオススメするつもりはないが、以下、ちょいと目を通してみて、少しでも興味が湧いたなら・・・読んで損は無い。勇者や魔王は出てこない。魔法はでてくるが、決して万能ではない(作者のこだわりが徹底している)。少年と少年の成長を中心に、彼らに関わる多くの人物の人生・・・出逢い、成長、喜び、苦難、別れが描かれる年代記だ。

年末年始のマッタリ・タイムに、ぜひ読んでみてほしい。


■イラストがすごい

『ベラゴアルドクロニクル』は、2019年12月23日の時点で、全11構成、83話が公開されている。
で、その83話すべてのヘッダーが、作者によるイラストで飾られている。イラストはその話の印象的な部分を切り取る形になっていて、ワシはこれが本当に大好きだ。今回は11構成それぞれから1枚ずつ、計11枚、好きなものを紹介してみたい。あわせて、そのイラストのシーンについても触れるので、これを読んで「アッ、ちょっと面白そうかも」と思った人は、この記事を放り投げて、今すぐにでも本編を読んでほしい。

【1】小鬼と駆ける者
【2】妖精王の憂鬱
【3】ガンガァクスの戦士たち
【4】銀と金
【5】紫砦と石の竜
【6】竜の仔の物語 -序章- 『魔法使いと竜の卵』
【7】竜の仔の物語 -第1章- 1節『竜の問い』
【8】竜の仔の物語 -第1章- 2節『竜の旅立ち』
【9】竜の仔の物語 -第2章- 1節『狼と吸血鬼』
【10】竜の仔の物語 -第2章- 2節『白の王国の傭兵ギルド』
【11】竜の仔の物語 -第2章- 3節『ストライダの反撃』

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上記リストからもお察しの通り、この物語の主人公は ”竜の仔” であり、その序章に至るまでに5編(小鬼と駆ける者 ~ 紫砦と石の竜)を読むことになる。この5編の物語を彩る人物や各種設定はその後も大きく関わってくるため、上から順に読み進めることを推奨する。
5編それぞれがマガジン化されているのでわかりやすい。
そして、
『序章と、第1章の1節と2節』が1つのマガジンに。
『第2章の1節と2節と3節』が1つのマガジンにまとめられている。


では、イラスト(と一部物語)の紹介だ


【1】
『小鬼と駆ける者』より

記念すべき第1話のイラストだ。9話、10話のイラストを紹介したい気持ちも強いが、やはり一発目としてはコレ。レムグレイド王国の北東、ドライド諸島の集落群で子供がさわられる事件が頻発している。村長たちは会合を開き、遂に村を捨てることを決意する。そんな暗い雰囲気のなか・・・いつの間にか、ひとりの客人が会合所の戸口に立っていた。彼は助太刀を申し出る。彼はラームのストライダ、その名はガレリアン・ソレル。

<本文より>
彼らの言葉は絶望の憂いをおびていた。もはや打開策を打ち出そうとする意見は何も出なかった。雨音は次第に強くなり、彼らのひそめき声は打ち消されていった。
そのせいなのか、戸口に立つ男の姿には誰も気づかずにいた。初めにそれに気がついたのはブウムウの息子、ブウルであった。


【2】
『妖精王の憂鬱』より

明るく元気な妖精ファフニンのイラストだ。彼女が背負っている人形は・・・。この第2編『妖精王の憂鬱』もまた小さな物語だが、妖精と妖精王、そしてフリセラたち旅芸人一行、ストライダのバシリ・アルベルド、魔法使いメチアが登場し、今後の物語を読むうえで非常に重要な話になっている。

<本文より>
「おい、ファフニン。ハイドランドに向かえと言っているのに、さっきからどんどん逆に進んではいないか?」
「えー。進んでるもなにも、スズナの森からぜんぜん脱出できないよぉ。」
ファフニンと呼ばれた妖精が言う。妖精は背中に古ぼけた人形を背負っている。
「そりゃそうだ!妖精の足で進めるわけがなかろう!早くグリフィンでも見つけて、翼に潜り込むのだっ!」人形が怒鳴る。


【3】
『ガンガァクスの戦士達』より

魔屈ガンガァクスでの戦いに身を投じる戦士たち。最高のイラストだ。この第3編は前の2編と違ってスケールが大きい。一気に世界が広がる感じだ。レムグレイド王国 白鳳隊二番隊の女隊長、マール・ラフランを中心に、さまざまな種族が登場する。そして・・・壮絶な死闘が繰り広げられる。バイゼルとブライバスのくだりは鳥肌が立ちまくった。

<本文より>
魔物がドワーフたちの前に津波のように押し寄せる。群れに向かってドワーフたちが一斉に矢を射る。バジムの自動ボウガンが夥しい矢を噴出する。先頭に走るグイシオンがウォー・オルグとともに崩れ落ちる。だがその死骸を飛び越え、後ろからさらに敵が来る。
橋桁はまだ上がり切らない。少数の魔兵が飛び移り、崖の上へ侵入してくる。前線でも小競り合いがはじまる。戦士たちが滑車を死守せんと集まる。


【4】
『銀と金』より

ワシが語るわけにはいかないので、読んでほしい。この『銀と金』は前編・中編・後編の3作と短めだが、めちゃくちゃ心を揺さぶられ、胸が苦しくなるストーリーだ。もうSOWA-SOWA、HARA-HARAが止まらない。マガジンのカバーイラストも好き。

<本文より>
「わたしの特別な子よ。」アイカレはルグのことをたまにそう呼んだ。「沢山食べてまた血を増やすんだ。」それから今日の分の薬を差し出した。
ルグはそれを黒パンと一緒に飲み込んだ。すぐに身体の気だるさが吹き飛んでいくのがわかった。「忌々しい捨て犬め」アイカレは時々、そうも呼んだ。いつも薬を与えられた直後には、どれが自分の名前かを忘れそうになるのだが、しばらくすると彼は自分の名が“ルグ”だということを思い出すのだった。


【5】
『紫砦と石の竜』より

レムグレイド王国領モレンド大陸にある『紫砦』。ドラゴンを迎え撃つべく集まった戦士たちが、酒を飲みながら宿舎で話し合う。ラームのストライダであるソレルとバイゼル、イギーニアのストライダ・レザッド、それにメチアにミルマ、ドワーフのギジムと、錚々たる顔ぶれで戦いに挑むが・・・

<本文より>
メチアは二人のストライダを交互に見る。「しかし、こんな巡り合わせは今後、もう見られないだろうな。」初老の魔法使いは感慨深げに頷く。
「はちみつ酒で一杯やりたいところですがね。」ソレルが両手を広げてそんな冗談をいう。
「はちみつ酒は無いが、ドワーフの地酒ならあるぞ。」ギジムが口を挟む。


【6】
竜の仔の物語 -序章-
『魔法使いと竜の卵』より

竜の卵を託された魔法使いが、森の奥深くへと逃げる。レムグレイド王国のレンジャー部隊がそれを追う。レンジャーの隊長バンバザルはかなりの凄腕でしつこく、憎たらしいが、その先に待っている物語を読めば少しは印象が変わるかもしれない。

<本文より>
レムグレイドのレンジャーたちは、主に単独で行動するストライダと違い、集団行動を得意とする。統率の取れた連携によって、敵の密偵や、森や山に逃げ込んだ敵を探し出し、野犬の群れのように追い詰めるのだ。
「相手は魔法使いだ。見えるものだけを信じるな。」バンバザルは部下達に指示を送る。一人ずつかなりの距離を空けて、広範囲をなめすように進む。確実な痕跡を見つけた者が鳶に似た音の出る笛付きの矢を放ち、その音のする方向を中心に、さらに捜索を続ける。
彼らはそうして相手を追い詰めていく。時に指笛で野鳥に真似た音を出し、レンジャーにしか分からない秘密の会話をする。


【7】
竜の仔の物語 -第1章- 1節
『竜の問い』より

竜の仔の物語 -第1章- 1節『竜の問い』は全6話、見どころが多いうえにイラストも最高すぎてひとつ選ぶのが本当に難しいが、やはりこの1枚だ。少し成長したラウと、ハーフリンクのシチリ、魔法使いメチア、それにお調子者のストライダ・アルベルド。読んでいるこちらも笑顔になる穏やかなワンシーン。だがそんな暮らしが長く続かないことを、読者は知っている。

<本文より>
アルベルドの合図でラウが籠の蓋を空けると幽魂が一斉に飛び出し、ラウの身体中を周回しはじめる。
「きれい、きれい!」シチリがはしゃぎ、ラウの回りを飛び回る。
「こら!ストライダの技術をつまらぬことに使うでない!」得意げにその様子を眺めるアルベルドの頭をメチアがぽかりと小突く。
「いってぇ、なにすんだよ。だってよ、こいつらラウの回りに集まってくるんだぜ、不思議だろ?」アルベルドがぶつくさと言い訳をする。
「お前、そんなことよりストライダの勤めはどうした。」
アルベルドは聞こえないふりをして、ラウを持ち上げ振り回す。幽鬼がそれを追いかけ、紫の光が渦になる。


【8】
竜の仔の物語 -第1章- 2節
『竜の旅立ち』より

このイラストを見るだけであのシーンやあのセリフを思い出し、ジーンとする。ワシは何も書けない。こんな物語を書ける作者を尊敬する。

<本文より>
抜粋できない。ぜひここまで物語を読み進めて、最高の読書体験を味わってほしい。


【9】
竜の仔の物語 -第2章- 1節
『狼と吸血鬼』より

『狼と吸血鬼』では逞しくなった少年ふたりのチョー最高なイラストや狼の悲しい1枚なんかもあってそっちを選びたくなるのだが、あえてこの1枚にした。最悪の奴ら。作者も ”悪” を徹底的に書いたという。その最悪ぶりが滲み出る、印象深い1枚。

<本文より>
オーギジアルの質問には部下たちは誰も答えない。ただ顔を伏せ、息を殺している。彼は部下のひとりに近寄り、鼻先をそのうつむく後頭部に押しつけ臭いを嗅ぐ。それから彼は外套の懐に手を入れる。すると部下達全員に戦慄が走り、ぶるりと身を震わせ固まらせる。
そうして、部下たちの想像に反して、オーギジアルはおもむろに外套からゆで卵を取り出す。ゆっくりと殻を剥き、丸ごと口にほおばると、また懐からふたつめのゆで卵を取り出し、ふたたび殻を剥き始める。
部下達がその様子を見守り、彼の目の前でうつむく男はただ、自分のブーツに落ちていくその白い殻を見つめる。


【10】
竜の仔の物語 -第2章- 2節
『白の王国の傭兵ギルド』より

終話のイラストが大好きなのだが物語の大事なシーンに触れすぎるのもアレなので、1話目の彼女をチョイス。ルグに乗ったラウの絵も大好きだが、彼女(名前は伏せておく)がこれほど活躍するとは思っていなかった。とても素敵な存在として物語に関わってくる。

<本文より>
 「それにしてもこの魔法使い、人間のくせにずいぶん大きな乳をしているな。」そう小さく呟くと、髭を整え、次第に開かれつつある森を見渡す。


【11】
竜の仔の物語 -第2章- 3節
『ストライダの反撃』

竜の仔の物語 -第2章- 3節は、吸血鬼の戦いだ。激闘も激闘、もう激闘すぎる。命を賭した壮絶な戦いの描写も凄いが、「マジで勘弁して・・・どうなるんこれ・・・」と言いたくなる絶望的な状況に追い込まれる展開に喉がカラカラになる。これまで物語を紡いできたストライダたちに加え、共闘するのはダブル主人公、ドワーフ、魔法使い、人間。彼ら彼女らの死闘の結末とは・・・

<本文より>
それは何度となく繰り返してきた動作。ためらいもなく、曇りもない。訓練で、実戦で、白鵜の寒空で、緑鳩のうららかな陽光のもとで、赤燕の強い陽射しの下で、何度となく魔の物を切り伏せてきた動作。避けることも受け止めることも出来ない場面で放つ、決まり手の動作だ。



以上だ。
最後に、本作の語り部であるギーの代筆者、ナマケモノ氏による解説で締め括りたい。各物語のあらすじや、世界地図もある。


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