プロジェクトエディター

プロジェクトエディター(Project Editor)とは

数々のプロジェクトの小さな成功と、多くの失敗や挫折を経験し、プロジェクトは「管理」するより「編集」した方がいいんじゃないかと、Project Editing というプロジェクトを進めていくための方法論を着想したのが2015年。その後、2017年2月にこの方法論を世に問い、同年4月から後藤洋平さんとドコモ・イノベーションビレッジで「プロジェクト工学勉強会」を企画・開催するようになりました。

プロジェクト工学とプロジェクトエディティングという似て異なる方法論が共存しながらできあがったのが、「プロジェクト譜(以下、プ譜)」というプロジェクトの可視・構造化ツールです。

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プ譜とは、プロジェクトに関わる諸要素と、「未来の姿」「現在の姿」「その間をつなぐ過程」を一枚で表現するツールです。

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諸要素の関係性を時間軸に沿って可視化することで、自分の頭の中にある漠然としたプロジェクトの進め方のイメージを俯瞰できるようにします。
このように俯瞰すると、プロジェクトの動きや何が詰まっているのか、どの要素が何に影響しているのかということがよくわかります。そして、プロジェクトの進め方がうまくいかなければ、その要素の実施方法や組み合わせの変更、停止といったことを、パーツを組み替えるようにして「編集」することができます。

プ譜は状況の変化に応じて、その姿を変えていきます。プロジェクトを始めるときに、絶対不変の硬直したマニュアルプランをつくるのではなく、暫定的な仮説を更新し続ける、アップデート前提の仮説を可視化したものなのです。

2018年には『予定通り進まないプロジェクトの進め方』を上梓し、この一年間は各所でプ譜を使ったワークショップを行ってきました。
ワークショップの参加者の多くはプロジェクトマネージャーや部課長職の方々で、マネージャーとしてプロジェクトを俯瞰的に捉え、進め方のイメージ表現し、チーム内に共有するスキルとツールの使い方を伝えてきました。

このワークショップは誰もが参加できる公開型(1対N型)で行っていますが、企業内研修として実施することもあり、体験された企業の方からは、プ譜を実際にプロジェクトの管理ツールとして活用したいという要望が寄せられ、その運用を支援することもしています。また、コンサルタントの支援状況をチェックするための「問診」ツールとして使われたりもしています。

一方、1対1型の支援も行っています。
例えば、ワークショップ経験者や拙著を購入くださった読者の方に、zoomを使った新規事業の進め方のプランをプ譜で描いたり、定期的に振り返りを行うことでプロジェクトの推進を支援したりもしています。

何が言いたいかというと、プ譜というツールの活かされ方が多様にあり、それが実際に仕事に役立っていることから、プ譜を使いこなすことのできる人にはニーズがあり、それは新しい職業になるのではないかと思うのです。

Project Editingを着想したころ、プ譜を使いこなしてプロジェクトを進めることのできる人というのは、プロジェクトの歴史を記録する「史官」、文書制作や管理を行う「右筆」、プロジェクトの状況を観察して分析する「観戦武官」のハイブリッド職種になるのではないかと考えていました。

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しかし、上述したようにプ譜が想定を超えた使われ方をされるのを体験し、求められるスキルと役割が増えてきました。

プ譜を描いて現在のプロジェクトの状況を明らかにすることは、問診とかカウンセリングのようです。
相手のプロジェクトに助言を与えることは、コーチングのようです。
すこし引いた第三者的な目線でプロジェクトを眺めるのは、観戦武官(オブザーバー)のようです。
企業のプロジェクトに入って、プ譜を使ってプロジェクトの推進を支援することは、ファシリテーターのようでオーガナイザーのようでもあります。
プ譜を使ってプロジェクトの会議、MTGを行うと、議事録代わりにプ譜を書くので、書記のようでもあります。
プロジェクトを頻度高く振り返り、終了時にも振り返りを行って、プロジェクトの教訓・ナレッジを引きだすことは、アーキビストのようでもあります。

プ譜というツールを使いこなし、プ譜の使われ方に応じて、カウンセラー、コーチ、オブザーバー、ファシリテーター、オーガナイザー、書記、アーキビストなどのロール(役割)を担うこの職業を、私は今便宜的に「プロジェクトエディター」と呼んでいます。

プロジェクトエディターにはたぶんレベルがあります。

レベル1:
自分のプ譜を書くことができる

レベル2:
他者の話を聞いてプ譜を書き起こすことができる

レベル3:
プ譜に書き起こしながら、プロジェクトを進めていくための「質問」が(自分にも他者にも)できる

レベル4:
プ譜を書き起こしながら、プロジェクトの状況を改善したり、膠着状態を打破したりするための助言や意思決定の支援ができる

レベル5:
進行中・終了したプロジェクトから普遍的な教訓やナレッジを引き出すことができる

この整理はまだ考え途中の、暫定的なものですが、ここで必要となるスキルを伝えていくにせよ、プロジェクト・エディターという職業を育成するにせよ、一つの指針になるのではないかと思います。
このプロジェクト・エディターという新しい職業になるためのスキルや素養、組織で活かすための実験を2019年度は行っていきますので、自分自身がそうなりたい。自社で取り組んでみたいという方がいらっしゃいましたら、ぜひお気軽にメッセージください。


この記事が参加している募集

未知なる目標に向かっていくプロジェクトを、興して、進めて、振り返っていく力を、子どもと大人に養うべく活動しています。プ譜を使ったワークショップ情報やプロジェクトについてのよもやま話を書いていきます。よろしくお願いします。