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〝かいけつゾロリ”の作者に会う。

原ゆたか先生の講演会に、運よく当選したので行ってきました。
場所は、名古屋市にある中日新聞本社。
息子2人も連れて、夏休みの思い出に。

講演内容では、愛知県にちなみ原先生の高校時代の思い出やゾロリ誕生までの秘話、質疑応答にサイン会という感じでした。
愛知県内の河合塾(芸大コース)にいた時の仲間との楽しい思い出が、あの「かいけつゾロリ」の創作に繋がっていると感じているそうです。
私がびっくりしたのが、原先生は1953年生まれで、現在70歳!ということ。
現役バリバリで創作活動を続けられている事が単純にスゴイ!と思ってしまいました。ちなみに、原先生は「魔女の宅急便で有名な角野栄子さんは、80歳過ぎてもバリバリ書いているのに、僕はいつまで書けるかな、なんて弱音を吐けないな」とつぶやいていました。
児童文学界の巨匠たちの創作継続力に感服いたします。

継続は力なり

原先生の生い立ちとしては、小さい頃から新聞紙の隅に絵を描き遊んでいたそうです。それを見たご両親が「この子は、絵の才能があるかも!」と思い、絵画教室にいれられたそうで、そこから友人と8ミリフィルムで映画を撮ってみるなど、いろいろな創作活動を続けてこられたそうです。

そんな中、ご両親の転勤で高校生の時に愛知県に引っ越してこられたそうです。当時、芸術大学を目指していた原先生。河合塾に入学します。
「受験」というと、相手を蹴落として合格するぞ!という感覚に陥りやすいですが、当時の河合塾の芸大コースの第1期生は、まだカリキュラムがゆるくデッサン中心で、尚且つ仲間たちと映画を見たり、合宿したりと仲良く楽しい生活だったそうです。(とはいえ大学合格ができず河合塾側も方向転換して2年目からは厳しかったそうですが‥)
実は、この仲間たちとおしゃべりする中で、原先生は「僕は、家出するんだ。」と公言していました。その発言を引くに引けず、実際に四国へ1ヶ月の家出(旅?)が決行される事になってしまったのです。
道中、野宿をしたり、ヒッチハイクをしたり、野犬に襲われそうになったりといろいろ体験されたそうですが、四国の人たちは優しかったらしく、四国を半分くらい移動されたみたいです。
その後、アメリカへの旅も行き、あの時は英語を喋れなくても何とかなった!とのことで、すごい行動力だなぁ、と聞いていて思いました。
現在70歳の原先生は、当時はゾロリに繋がるなんて思ってもいなかったけど、今思うと高校時代のあの旅が、かいけつゾロリに反映されていて、全部繋がっている感じがするよ、とおっしゃっていました。

「かいけつゾロリきょうふのダンジョン」のお話より

ほぅ、これは深い話を聞かせてもらったなぁ。と私は思っていましたが、現在小学生の息子たちにはヒッチハイク?野犬?アメリカ?みたいな感じでピンと来ていない様子でした。
その後のお話で、小学生の子どもたちに伝えたい事という内容が素敵だったので、ご紹介します。
「僕は、絵をかきたいと思ってブレずに大人になった。だから、君たちもなるべく早く好きな事を見つけなさい。そうしたら、大人になっても何をしたらいいかわかるから。学校という所は、すべて100点をとる所じゃない。本でも映画でもテレビでも何でもいいから、好きな事を1つ見つける所。それが課題と思ってほしい。本当に好きな事が1つあると、何とか食べていけるよ。」
これを聞いて、私は小学生の子をもつ母として、子どもたちのやりたい事や夢中になっていること、興味あることに敏感でありたいし、それを応援できるような立場でいたいなと思いました。
子どもたちには、好きな事でたっぷり遊んでいいよというと、下の子は、「俺、もう決まってる!マイクラ。ゲーム実況ユーチューバー!」と言っていて、上の子は「うーん。工作とか。レゴとか。。。」と少し自信なさげだけど、答えてくれました。なるほど。これからいろいろ変化はあるだろうけど、応援していこうと思います。

質疑応答のコーナーでは今回は子どもたちの参加が多く、積極的に質問する子がいました。その中の一人の子の質問で、
「ゾロリのアニメ版はやらないのですか?」
というものがありました。
これについて真摯に答えてくれる原先生。
「アニメ版はね、1年で50本ぐらいの原作使うの。ゾロリが約70本でしょ?足りない事もあるから、オリジナルを入れたりするんだよね。あれは、僕が書くんじゃないから人に頼むんだけど、ゾロリは武器がでてこないでしょ?戦ったとしても、おやじギャクとか、おならとかを使う。するとね、売れないんだよ。おもちゃで何がよく売れるのかっていうとね、武器なんだよ。
今の子どものアニメとか、戦いものが多いよね。でも、こんなに戦ってばかりいたら戦争は終わらないよね。僕はね、武器が出てこなくてもいいと思ってる。ゾロリのおやじギャグとか、おならとかちょっと下品でも、戦意喪失って感じで平和に終わる方がいいんじゃないかなって思ってる。まぁ、コナンぐらい当たってくれるといいんだけどねぇ(予算面で)。」
と、いろいろな大人の事情を説明してくれました。

この質問した子にとって、この回答でどうしてアニメ化できないのかは、わかりかねるかもしれませんが、結局は制作するお金なのでしょうね。
ここは、もうクラウドファンディングとか別の手が出せる西野さんのような人を味方につけるといいんじゃないかと思いました。
子どもの頃から、戦うことを洗脳するようなアニメーションで子どもたちを慣れさせるよりも、人と人の価値観がぶつかった時、戦い以外の方法で解決する手段があるっていう、いい学びになると思うので。
本当は、それを見極めて親がどんなものを見せていくのか?という親自身の知識と選択肢の多さがいるのでしょうけど…(私の反省点)
何も考えないでコンテンツを与え続けると、ケンカの解決が暴力のみで終わってしまう。無意識に刷り込まれていく。そういう考え方を持つ子に息子が育ってしまうと…それは、親として嫌だなと考えさせられました。

ゾロリママの願い

子どもに人気のアニメを思い出すと、アンパンマン・ワンピース・ポケットモンスター・プリキュア…まぁ、戦いますよね。わかりやすいですもん。
正義と悪って。それが悪いとは思いません。
でも、「悪」ってみんなの心にも少なからず存在しているモノだから、戦って抑圧したり、排除するんじゃなくて、受け入れて笑い飛ばす方向で終わる方が平和なのかもしれません。
ただ、子どもたちに人気という事は、何かしら魅力もあるという事。
戦って勝のは気持ちがいいし、
有能感とか、
スカッとした快感や、
悪は誰かがやっつけてくれて安堵の気持ちとか…
いろいろな感情を揺さぶる要素が入っているので、魅力なのでしょう。

そういう気持ちに自分で気づき、
その反対に勝つなら負ける人もいる(その人の気持ちは?)とか、
有能であるなら無能と呼ばれる人もいる(その見方で大丈夫?)とか、
スカッとするとはモヤモヤの原因があるはず(物語の中で自然と乗せられている展開に気づけるか?)とか、
正義のヒーローを信じることの裏の意味(自分は動かない無責任思考が隠れているかも)とかにも、
大きくなったら気づけるといいのでしょう。
それが、自己中心的な子どもから、
他者の気持ちを思いやれる大人になるということなのでしょうね。
要するに、大きな意味で人を愛することができる人になること。

平和って、穏やかである意味退屈なのかもしれません。
だから、戦いという刺激が欲しい人もいるのかもしれません。
戦争はビジネスだという事に気づいて、そこからみんなで抜けて
思いやりをもって人を愛すること。
戦争以外のビジネス(お金の循環の道)を、考えられるといいんだろうな。
そういう世界観だったら、より創作も伸び伸びとできて、我が子のマイクラのゲームユーチューバーや、工作など面白いものを創り出すという夢みたいなものでも、喜びを追求できるのかな。

原ゆたか先生の講演会に行って、いろいろと考えさせられたのでした。
行ってよかったです。

原先生の想いに触れて、創作する立場での、お金と伝えたい事のバランスと葛藤も感じました。
この企画をしてくれたポプラ社の皆様ありがとうございました。
この記事を読んでくれたあなたもありがとうございました。
世の中のママたちに、何か思考のきっかけになれば、嬉しく思います。





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