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【第3部 質疑応答】ベネッセこども基金MeetUP2021#2 ― 社会的養護のもとの子どもの現状と課題 ―

本記事は、2021年12月6日(月)に行ったベネッセこども基金MeetUP2021#2イベント 第3部:質疑応答のレポートです。

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Q1
『ボランティアの採用や研修はどうしているの?』 HUG for ALL 村上氏回答

HUG for ALLのボランティアは、現在約80人いらっしゃいます。
30~40代の社会人の方が中心で、一番若い世代では20代の学生さん、一番上は70代ぐらいの方まで、多様な方々に関わって頂いています。

ボランティアの方々に共通することは、子どもたちに寄り添っていきたい、子どもたちを一緒に見守っていきたい、という気持ちを持って関わってくださっているところだと思います。

教員免許や保育士資格などの特別な資格は必要とはしていません。
それよりも、しっかりと子どもに寄り添ってくださるかどうか、子どもたちに責任を持って付き合い続けてくださるかどうかを大切にしています。

HUG for ALLのホームページからボランティアの募集をしていますが、ボランティアメンバーからの紹介が非常に多いです。

基本的には少人数の説明会を実施して、じっくりと1対1でお話をする登録会という場を設けています。

どういった気持ちで子どもたちに関わろうと思ってくださっているのか、私たちと一緒に子どもたちを見守ってくださるか、覚悟を持っていただいているかなどを確認させていただいています。

研修については、ボランティアさん同士の学び合いの機会を定期的に設けています。
ボランティアさん同士で、子どもたちにどうやって関わっていけばいいのかを話し合いながら、一緒に歩んでいけるような工夫をしています。

Q2
『チャイボラのネーミングの由来は?』 チャイボラ 大山氏回答

「チャイルドボランティア」が由来です。

施設に興味のある学生さんに施設に遊びに行きましょうと声をかけて、学生と施設を繋ぐ活動を一番最初に始めました。

いきなり採用を意識した就職説明会を施設で開催しますと言ってしまうと、学生さんは行きにくいかなと思ったためです。

当時は法人化することは考えていませんでしたが、そこから「チャイルドボランティア」略して「チャイボラ」として活動しています。

Q3
『児童養護施設の子どもの習い事事情は?』 チャイボラ 大山氏 / 子供の家 早川氏回答

>>大山氏
ピアノ、バスケ、書道、サッカー、ソフトボールなどを習っている子どもがいました。

習い事に特化した費用はありません。
施設の経営のやりくりで捻出している状況です。
施設によって予算を充てている施設と、難しい施設があります。


>>早川氏
措置費の中に教養娯楽費が一応あります。
しかし、行事などで費やしてしまうため、習い事に向ける予算はありません。

ただ、国が予算を付けていないから習い事をさせないというのは、私は考え方としてよろしくないなと思います。

大山さんがおっしゃったように、子どもに必要なものは施設のやりくりだったり、経営努力だったり、あるいは、寄付を募るなどで対応するということが必要かなと思っています。

>>大山氏
早川さんの施設では、中学生からスマホを持てるようにされていますよね。

>>早川氏
そうですね。6年位前から無償で貸与しています。

中学校1年生になった途端、みんなスマホを持てるわけなんですけれど、同じようなことをしている施設は、今のところ聞いたことはないですね。

措置費にはスマホの料金は当然含まれていません。
この業界の考え方として、国からお金が来ないからできませんという答え方をする施設職員や施設長が多いなと思っています。

子供の家では、措置費が出る出ないは関係ありません。

当時中学2年生の女の子から、クラスでLINEができないのは私だけと、第三者委員に対する相談がありました。
すぐに「申し訳ありません」と謝って、直ちにスマホをみんなが持っているようにしましょうとしました。

職員に調べてもらったところ、6年前で中3のスマホ所持率は9割超えているというデータがありました。

施設長名義で契約するので、約束を守れなかったら止めるからねと言っています。中学生のうちは練習ということにしています。

高校生になると大体の人はスマホを持ちますので、そこでトラブルが発生してしまうよりは、職員もちゃんと使用状況を把握して、時間を区切った上で練習をしているというような状況です。

ちなみにその年から当時中学生だった自分の子どもにもスマホを持たせるようになりました。

>>大山氏
ほとんどの施設では、高校生になって自分でアルバイトをしてスマホを持っているというのが現状です。
部活の連絡がLINEグループで送られてきますし、友達との約束もスマホがないと難しいためです。

Q4
『施設の職員の働き方について 負担をどうしたら減らせるか?』 チャイボラ 大山氏/子供の家 早川氏

>>大山氏
子どもと遊ぶことはもちろん大事です。
でも、掃除、料理などもすごく大事なんです。

子どもの汚れた服や子どもの部屋の状態から心理状態が分かったりします。
料理を通しては、うまくいくこともあれば、失敗することもあるという姿を見せることもできます。

家事が負担だからアウトソーシングすればいいっていうのは、もちろん考え方としてありますが、私は家事はすごく大事だと思っています。

でも、毎日必ず職員が全て手料理でやらなきゃいけないことはないと思います。ちょっとした家事もボランティアさんに来てもらったり、アルバイトさんに助けてもらったりすることはいいことだなと思っています。
実際に、そのようにしている施設もあります。


>>早川氏
私は、実習生の受け入れ時や、大学の授業、職員に話をするときなど、

『なめちゃいけないルーティーンワーク』

と必ず伝えています。

ルーティーンワークは生活の基盤です。

・清潔な衣類を整えてもらえなかった子ども
・家の中がいつも散らかっていて、ゴミだらけの中過ごした子ども
・ご飯がスナック菓子だった子ども
生活基盤が整っていなかった子どもたちが沢山います。

生活環境を整えることで、子ども自身が大事にされていると感じることは、非常に大事だと思っています。

先代の施設長は『環境的ホールディング』と言っていました。



私は、『ながら』を大切にしています。

例えば、子どもが帰ってきたら、洗濯物を「畳みながら」、料理を「しながら」、隣で子どもが学校であったことを話す。

カレーを作るときは、子どもにたまねぎを炒めてもらっている間に、自分は別の準備をするなど、子どもをルーティーンの中に巻き込んで一緒にやることは非常に大事だなと思っています。

実際、急に職員が来られなくなったり、熱を出して動けなくなったりする場合はあります。

そういう時に子どもたちが対応できるんですね。日頃の関わりやルーティンを見ているので。

私も1回、熱を出しで倒れた時がありました。
その時、小学生の子どもが洗濯物を自ら取り込んで畳んでいたり、決まった時間にお風呂に入ったり、自分たちで布団を敷いたりしてくれていました。

私はいつも14時くらいに出勤して、洗濯物を取り込んで畳み終わってから、子どもと一緒に遊びに行きます。
ある日私が出勤すると、洗濯物が取り込まれ畳み終わっていました。
「畳んでおいたぜ。遊びに行こう!」と中学生の男子が声をかけて来たんですね。

生活を共にする中で、ルーティンワークはやっぱり基盤だと考えています。

Q5
『虐待を予防するにはどうしたらいいか?』 子供の家 早川氏回答

虐待死が減っていないのは由々しき問題であり、虐待死をゼロにしないといけないと思っています。

では、虐待死はなぜ起きるのか。

虐待は「密室」で起きています。

虐待死で一番多い年齢は0歳0ヶ月です。
妊娠期からお母さんを孤立させないこと、そして家庭を密室にしないということが非常に大事なわけです。

非難を覚悟して言うと、日本の今の国策は裏目に出ていると私は考えています。虐待を見つけたら通報することばかりを推進することで、家庭が萎縮するんです。

通報された経験のある方は分かると思うんですけれども、そんなこと一度でもされたら、誰が通報したんだろうと隣近所がみんな敵に見えます。

だから、やればやるほど家庭は密室化していきます。

密室で虐待死が起きますので、家庭を密室化させないこと、子育てをシェアすることが大事だと思っています。

私のところで現在行っているのはショートステイです。
ショートステイのニーズは、全国的にも非常に高まっています。

家庭にいながら子どもたちの生活支援ができるショートステイだけではなくて、訪問サポートやそういう支援が広がっていくといいなと思っています。

その一つの試みとして先ほどご紹介した「そだちのシェアステーション」は、私なりに提案している支援のひとつです。

Q6
『「そだち」のシェア・ステーションはどのような経緯で実現したのか?』 子供の家 早川氏回答

私はこの仕事を26年間やっていますが、この仕事に就いてから2つの大きな不条理を感じてきました。

一つ目の不条理は『18歳を境に早期に強いられる自立』です。

自立と言っても、自分で立つというよりは、言ってみたら追い出されるわけです。18歳になったんだから、自分のことを自分でやりなさいと。

一般家庭よりも不安定な養育環境にあった子どもたちなわけですから、一般家庭以上に丁寧に時間をかけて、教育や養育を提供していくことが必要だと思うんです。

けれども、場合によっては高校中退とかで放り出されるというようなことがあります。

子供の家では、基本的に22歳まではいられるようにしています。
なので、高校卒業しても引き続き入所していると子どもたちがいるわけなんです。


もう一つの不条理は、『虐待を受けた子どもは被害者なのに、家庭が機能しないという理由で、学校からも地域からも引き離されることです』。

18歳を超えてからも支援を継続することと、家庭を離れる前の支援を、私はこの仕事に就いた時からやらなきゃいけないことだと26年間ずっと思っていました。

2003年に私は目黒の施設にいましたので、目黒区といろいろ話をしたんですが、非常に裕福な地域だったので全然ヒットしませんでした。

そして清瀬に来た時に、子ども家庭支援センターや市役所、地域の方々と話をしたところ、「早川さん、それはいいですね、ぜひやりましょう」と180度違う反応が返ってきたんです。

ただ、お金をどうするかという問題がありました。

我々社会福祉法人は税金を払ってませんし、生活困窮世帯は非課税世帯が多いので、財政的に清瀬市は厳しい自治体なんですよね。しかし、財政が厳しい自治体ほどニーズがあるんです。

お金については我々が何とかしますから、大変そうな家庭を紹介してもらうとか、子どもをつないでもらうとか、そういったことは協力してくださいと清瀬市にお願いしました。

結果的には日本財団が2016年から第3の居場所事業というのをはじめ、全国で100箇所つくるということになりました。

基本的には3カ年助成なんですけれども、現在は日本財団・清瀬市・子供の家で三者協定を結んでいます。3年間は日本財団からの支援を受け、4年目からは子供の家が自前で運営をすることになっています。

経営努力です。制度がないからやらないではなくて、やっているうちに制度が後からついてくると思っています。

厚労省の方も視察に来てくださったり、色々注目してくださったりしていますので、制度になっていくと思っています。


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▼当日の投影資料とその他質問へのご回答はこちら

▼以下のテーマごとに随時noteを発信していきます!

第1部 基調講演 児童養護施設子供の家 施設長 早川悟司氏
第2部 活動団体報告 NPO法人 HUG for ALL 代表理事 村上綾野氏
第2部 活動団体報告 NPO法人 チャイボラ 代表理事 大山遥氏
第3部 トークセッション


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