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【第2部活動団体報告:HUG for ALL村上綾野代表】ベネッセこども基金MeetUP2021#2 ― 社会的養護のもとの子どもの現状と課題 ―

本記事は、2021年12月6日(月)に行ったベネッセこども基金MeetUP2021#2イベント第2部:活動団体報告 NPO法人HUG for ALL 代表理事 村上綾野様の報告内容のレポートです。


ご経歴

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NPO法人HUG for ALL活動紹介

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はじめまして。NPO法人HUG for ALL代表の村上と申します。

今日は、
① HUG for ALLの活動理念
② 児童養護施設の子どもの学びの現状
③ HUG for ALLの取り組みについて
をお話させていただきます。



① HUG for ALLの活動理念

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私たちは「すべての子どもたちに『安心できる居場所』と『生きる力』を」と掲げ、児童養護施設の子どもたちに向けて、施設職員の方々と協力して、多様な信頼できる大人たちと一緒に支援をするという活動を行っています。

子ども達一人ひとりには、無限の可能性があります。

しかし、生まれた環境、虐待を受けていた、貧困家庭にあった、そのような環境によって、未来を諦めてしまう子どもたちに、私たちは出会ってきました。

私たちは子どもたち一人ひとりに寄り添いながら、継続して見守っていくことで、子どもにとって「安心できる居場所」を一つでも多く増やしていくことと、子どもたち一人ひとりの意欲を伸ばし自信につなげることで、子どもたちがこれからの社会で「生きる力」を育むことができるように活動を行っています。



② 児童養護施設の子どもの学びの現状

私たちの取り組みの背景として、児童養護施設の子どもの学びの現況をお話させていただきたいと思います。

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児童養護施設に入所している子どもたちの中には、もともと家庭で過ごしていた子どもたちも多くいます。

例えば家庭で虐待を受けていたり、ネグレクトを受けていたり、そういう子どもたちは生きるだけで精一杯です。学校に行っても勉強どころではないという状況だと思います。

家庭から保護されて一時保護所に入ったときも、保護期間中は学校に通えないため、学校の勉強がわからなくなってしまう子どももいます。

一時保護所からは、児童養護施設に入所したり、里親家庭に入ったりしますが、子どもたちの学習の進捗状況は、一人ひとり全然違います。

勉強のどこが出来ているのか、出来ていないのかだけではなく、子ども自身の勉強に対するやる気も本当に様々で、それぞれを十分にケアしていくことはとても難しいです。

その結果、子どもたちが結果的に勉強についていけないという状況がうまれてしまいます。

学校のテストで悪い点をとってしまう、授業中にあてられても答えられない、などの学校での失敗体験から自己否定や自己不信の気持ちが起きてしまうこともあります。



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児童養護施設の子どもの高校卒業後の大学等進学率は、全国平均の4分の1以下です。専修学校を含めても約3分の1です。

この数字は2015年度のもので7年前のデータですが、最近では奨学金などが増えているため、割合は上がってきてはいます。

しかし、それでも全体と比べて進学率は非常に低いです。

このグラフは、全高卒者と児童養護施設入所児童を比較していますが、
生活保護世帯の子どもたちと比較しても、児童養護施設入所児童の進学率が低いという結果になっていることからも、経済的な問題だけではなくて、何らかの事情があって、進学が難しくなっているのではないかなと思います。


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児童養護施設を退所した後も、かなり厳しい状況になってしまう子どもがいるという現状もあります。

児童養護施設退所者の正規雇用率は低くなっており、就職後1年以内に離職する人が多いというデータがあります。

そして離職後に行き場をなくしてしまい、性産業に従事したり、犯罪に手を染めてしまったり、本意ではないけれども、そうせざるを得ない状態になっている人もいます。

「性産業の現場は児童養護施設出身の人が多い」という話を、私も実際にさまざまな人から聞いてきました。

それから、知的障がいのある男性は、犯罪現場でもミスを犯しやすいことから、犯罪仲間からも放り出されてしまい、若年ホームレスになりやすいという話も聞いています。

様々な環境や事情を抱えている若者たちが苦しい思いをしている。

そこから自分を否定して未来を諦めてしまう。

そういう状況を避けたい。そうならないようにしたいと、考えています。

様々な苦しい体験を乗り越えている子ども達が多いですが、一人ひとりに無限の可能性があると私たちは思っていますし、子どもたちが安心して挑戦できる社会をつくるために、私たちは活動をしていきたいなと思っています。



③ HUG for ALLの取り組みについて

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私たちは、子どもたちがこれからの社会で「生きる力」を

1:学ぶ力

2:わくわくする力

3:自分らしさ


と定義しています。

学校の成績を上げるということだけではなく、子どもたちが社会に出た後に 自分の頭で考えながら、自分でしっかりと生活をデザインしていくことができる力をつけていくことを重視して支援を行っています。



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私たちは、3つのプログラムを行っています。


1:まなぶ意欲と、自分らしさを育む 『まなびクエスト』

2:ワクワクする力、自分らしさを育み好きや得意を見つける 『あそびクエスト』

3:中高生向け 自立のために一緒に準備をしていく 『はたちクエスト』


プログラムの特徴は、子ども1人に2~3人の担当のボランティアさんについてもらい、子どもたち一人ひとりの状況や気持ちに寄り添いながら、成長を継続的に見守る点です。2016年度から活動を実施しています。

都内の1施設の支援からスタートして、今年度の秋から2施設目の支援も開始しており、順調に支援数を増やしている状況です。


子どもの変化についてもう少しお話しできればと思います。

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私たちは子ども1人に2人の大人が継続的に寄り添っていくことを大切にしています。

活動を始めた時に、小学校5年生だった子どもたちは、現在高校1年生になりました。

その後も新しく入ってきた子どもたちにずっと長く寄り添うことを大切にしています。

<心を開いてくれなったAくん>
はじめは心を開いてくれなかった子どもが、だんだん自分の気持ちを話してくれるようになった。

<だって私ばかだもんと言っていたBちゃん>
勉強のやる気を無くしてしまい「どうせ私はバカだから」と言っていた子どもが、自分から「勉強を頑張りたい」と言ってくれた。

<本を読むことが嫌いだったDくん>
本を読むことが嫌いな子どもの好きなもの・興味のあるものを聞いて、関連する絵本やお話を用意。「それなら一緒に勉強したいな」と言ってくれるようになった。


私たちが大切にしていることは、短期的な関係性を築くことではなく、中長期的に子どもの将来も見据えて一緒に寄り添っていくことです。



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私たちが月に2回程、子ども達に会う関係性の中で、学びや自立のことなどを話すこともあります。

いつもそばにいるからこそきっかけがなくて、職員さんには話せないことだったりもするので、職員さんに子どもたちの言葉や姿をお伝えし、子どもたちの変化や状況に気づいていただくということもできるようになってきています。

こういった活動を通して、私たちが子どもたちに関わることで、子どもたちと職員さんの関係がより良くなることを目指していきたいなと考えています。

私たちは子どもたちにHUGをするような気持ちでずっと関わっています。

子どもたちだけではなく、一緒に子どもたちを守ってくださっている職員さんや、一緒に関わってくれているボランティアメンバーに対しても、HUGするような気持ちで関わっていきたいと思っています。



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HUG for ALLの活動内容の紹介は以上になります。
ありがとうございました。


MeetUP2021#2アーカイブ動画視聴はこちら

当日の投影資料や質問へのご回答はこちらからご確認いただけます

また、以下のテーマごとに随時noteを発信していきます!

第1部 基調講演 児童養護施設子供の家 施設長 早川悟司氏
第2部 活動団体報告 NPO法人 チャイボラ 代表理事 大山遥氏
第3部 質疑応答
第3部 トークセッション

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