若年妊娠・未婚でシングルマザーになる方への支援
「予期せぬ妊娠」で授かった赤ちゃんをひとりで育てていく。
そのような状況になったとき、落ち着いて対応できる方は少ないと思います。
成人している女性でも大変ですが、若年(10代)の未婚の母ならさらに大変なことでしょう。
全国平均の約2倍、若年出産が多い沖縄で、未婚の母になると決意した方への支援制度や受けられるサポートをご紹介します。
◆妊娠かも?と気づいたら
上記の状況になったとき、安心して妊娠する環境が整っているのなら、素直に「おめでとう」と言えますが……
未婚の若年出産の場合、それは難しいかもしれません。
相手の男性にも言えないし、親にも友達にも相談できないと思いつめるかもしれません。
10代での出産は、臓器の発達が不十分なため、肉体的なリスクを抱えています。
妊娠高血圧症(旧:妊娠中毒症)や、常位胎盤早期剥離(出産前に子宮から胎盤がはがれること)で、母子の命が危険にさらされる可能性が高くなります。
産む産まないにかかわらず、妊娠してるかもと思ったら、早めに産婦人科を受診することをお勧めします。
また、産まない選択をしても、妊娠22週を過ぎると中絶できません。
→人工妊娠中絶をお考えの方へ|日本産婦人科医会(PDF)
リスクの高い若年出産を勧めるわけではありませんが、「誰にも言えない妊娠」をしたとき、安心して相談できるところがあることを知っていてください。
◆誰にも言えない妊娠の相談窓口
・おきなわ子ども未来ネットワーク
産む・産まない・育てられない、ひとりで抱えきれないことに寄り添う団体です。
妊娠・出産・養育に関する相談もLINEででき、妊娠検査薬も無料で届けています。
・全国妊娠SOSネットワーク
思いがけない妊娠をしたあなたに寄り添います。
性被害を受けた方の相談にも応じています。
https://zenninnet-sos.org/
・沖縄県性暴力被害者ワンストップ支援センター
あなたが同意しない性的な行為は性暴力です。
もし、あなたや身近な人が性被害にあったら、ひとりで悩まず #8891 にご連絡ください。
24時間365日、いつでも無料で相談を受け付けています。
年齢・性別・セクシャリティを問わず相談できます。
( #8891 に繋がらないときは、沖縄窓口 098-975-0166 へ)
沖縄県性暴力被害者ワンストップセンターでは、女性支援員の電話相談のほか、面談・カウンセリング、医療支援、警察や弁護士相談などへの同行支援も行っています。
◆出産を決意した際の支援制度
赤ちゃんを産むという決意をしたとき、使える制度をご紹介します。
まずは、役所や子育て支援センターなどで妊娠届を出し、親子健康手帳(母子手帳)を受け取りましょう。
親子健康手帳は、妊娠中の健康管理や赤ちゃんが大きくなるまでの記録をする手帳で、妊娠中から出産後まで使います。
・入院助産制度
経済的な理由で保健上必要な支援が受けられない場合、出産前の本人からの申請により、助産施設への入所や出産費用のサポートが受けられます。
・出産育児一時金
国保や職場の健康保険に加入していれば、出産時、1児につき50万円※が受け取れます。
・産後ケア事業
出産後は心身の不調や育児の不安がつきものです。
特にサポートの必要な出産直後の母子が安心して子育てできるよう、居宅訪問や通所、短期入所などの支援を行う事業です。
・産前産後家事・育児支援サービス
出産前や出産後の一定期間、家事や育児のサポートが受けられるサービスです。
ホームヘルパー以外に、産前産後の母子専門の支援員「産後ドゥーラ」を派遣する地域もあるので、役所の児童福祉課や子育て支援課などへご相談ください。
・相談窓口|子育て支援センター
全国どの地域にもある「子育て支援センター」では、妊娠・出産・子育てに関する相談をすることができます。
保健師・看護師・助産師・社会福祉士などの専門家のアドバイスが、乳児検診以外の日でも受けられるので、「これって大丈夫かな?」と思ったらお気軽にご連絡ください。
◆自分で育てるのは難しいときの選択
・子どもを一時的に預ける
今は学業や体調などの都合で育てられないけど、あと数か月したら育てる目途がつきそう……
そういう場合には、一時的に乳児院や里親さんに子どもを預けることもできます。
・特別養子縁組
自分で育てるのは難しいという場合、特別養子縁組という方法で、子どもを望んでいる夫婦に出産後に子どもをたくすこともできます。
・シングルマザーを支える制度
お金はあまりないけれど、自分で育てていきたいという場合、シングルマザーを支える制度があります。
詳しくは次の項目でご紹介します。
◆ひとり親の支援サポート
・母子生活支援施設
母子家庭で住むところがない、DVなど事情があって家には帰れないといった事情で困窮している場合、母子で一緒に生活しながら子育て支援を受けられる福祉施設です。
施設内では個室で独立した生活をしつつ、資格取得のお手伝いや就職活動、子育て相談や保育、学習支援も受けられ、孤立せずに生活の立て直しをサポートしてもらえます。
・児童扶養手当
児童手当の他に、ひとり親の子どもが18歳になるまで支給される手当です。
収入によって増減しますが、満額だと1人目44140円・2人目10420円が支給※されます。
(※2024年8月現在の金額、10月以降改訂予定)
児童扶養手当を受給するためには、役所での手続きが必要で、初回申請時と毎年8月現況届にて本人への確認が行われます。
・ひとり親家庭等医療費助成制度
ひとりで子どもを育てている親と子どもが医療費のサポートを受けられる制度です。
児童手当の手続きなどを行う役所の窓口で申請でき、医療機関の窓口で保険証と一緒に提示すれば自動償還※されます。
最後に
昔、某高校で働いていたとき、生徒から妊娠の相談を受けたことがあります。
私は内心「どうしよう?」という気持ちが強かったのですが、養護教諭に相談しようと生徒と一緒に保健室へ行きました。
その時、養護教諭が「おめでとう」と言うのを聞いて、私は衝撃を受けました。
先生は決して気軽な気持ちでおめでとうと言ったわけではないと思います。
生徒の抱えた背景や気持ちをくみ取り、親と学校の架け橋になって全力でサポートし、その生徒は無事に出産して1年遅れで高校を卒業しました。
きっとその生徒は、今もお子さんと笑顔で過ごしていることでしょう。
親になった立場としては、未婚の母になる娘を手放しで喜べない複雑な思いを抱えるかもしれませんが、若年妊娠の相談を受けたら「命」を宿ったことに対して「おめでとう」を伝えたいと思っています。
若年出産は困難だと感じることは多いですが、決してひとりではありません。
「生まれてくる命にありがとう」と「産んでくれてありがとう」という思いでサポートしてくれる人たちはいます。
くれぐれもひとりで悩まずに、どうぞ周りの人や相談窓口へご連絡ください。
あなたと赤ちゃんが穏やかに過ごせることを願っています。
◆資料
①沖縄県若年妊婦支援事業の実施|こども未来部子育て支援課
②若年(10代)の妊娠|厚生労働省PDF
③統計から見た10代の出産の現状|J-stage(PDF)
④沖縄の特定妊婦の出産を支える宿泊施設「おにわ」
⑤沖縄県マザーズスクエア「ゆいはぁと」
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