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RB.01 | 脳機能の発達から新生児を知る

『赤ちゃんと脳科学』 小西行郎(著) 
 発売日 : 2003/5/16

著者は日本赤ちゃん学会理事長/同志社大学 赤ちゃん学研究センター教授を務め、長年、赤ちゃんの脳機能を研究されていた発達神経学者であり小児科医でもあった方です。2019年に71歳でご逝去され、晩年はロボット工学への応用研究もされていらしゃったようです。

著作には、赤ちゃんの脳機能をはじめ、発達障害(脳機能を理解する上で必要な研究分野)、早期教育、子育ての考え方についての書籍が多数あります。3冊ほど読みましたが、研究者という面だけでなく、子供を温かく見守る大らかさを書籍の端々で感じられる方でした。

書籍を読んで

>生後2ヶ月革命 
一番面白かったのはこの生後2ヶ月革命!赤ちゃんの自発的運動(General Movement 略してGM運動)について、行動と脳神経系の活動を観察した話です。

赤ちゃんの自発的運動は生後2ヶ月頃にいったん小さく単純になり、3ヶ月頃に再び活性化することが確認されていて、これを生後2ヶ月革命と呼びます。

手足の動きを生後1ヶ月〜4ヶ月で観察すると、生後2ヶ月目に手足の動きが非常にコンパクトになっていることが伺えます(書籍には記録した赤ちゃんの手足の動線図が入っています)。これは何を意味するのか?

本書の説明では動作の習得をするための現象だそうで、例えば、手首や腕を空中に浮かせた状態で文字を書くと動作は大きくできますが、手首や腕を机に固定して書いた方が安定してかけますよね。どうやらこれと同じことが赤ちゃんの体の中では起こっているそうです。

生後2ヶ月頃の赤ちゃんは拮抗筋と働筋が同時に働き、関節が固定されることで(いまいちイメージがつきませんが・・・つっぱった状態らしい)、大まかな動きができるように学習していくそうです。その間、自由度が奪われるために小さく単純な動きしかできません。自由度の凍結が解けるのは生後3ヶ月頃、動きは大きくより活発・複雑になっていくそうです。

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本書では、この運動生理学的な話の後、脳をfMRIで計測した話が続きます。視覚刺激に対する脳の反応が生後2ヶ月〜3歳頃まで大人とは異なり、かつ、生後2ヶ月頃から脳内シナプスの数も急激に増加する等々・・・面白いので是非読んでみてください。その他、”テレビと育児”、”早期教育を懐疑する3つの理由”などの話が面白かったです。

最後に、同じ著者の本で”早期教育”を脳の発達の観点からまとめている書籍も簡単にご紹介します。

『早期教育と脳』 小西行郎(著) 
 発売日 : 2004/8/20

乳幼児の脳の「臨界期」を検証した上で、英語や算数などの早期教育の是非について語られています。脳神経系の刈り込み期と、情報の詰め込みすぎによるHDAD(多動性障害)の可能性については興味深かったです。また、溢れかえる育児情報や孤立する母親や虐待する母親にふれ、幸せな育児とは何かについても語られています。



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