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漢方処方のシャドーボクシング【37歳女性、153cm、37kg、食欲不振、下痢、蓄膿症、肩こりの悩み】

医薬品登録販売者の資格取得までの間、漢方処方の臨床書籍を参考に臨床記録から自分ならどのような漢方薬を処方するのか勉強もかねて取り組んでみようと思います。
の3ケース目。

参考書籍:臨床に役立つ五行理論-慢性病の漢方治療-
著者:土方康世
出版:東洋学術出版社

漢方処方のシャドーボクシングでは上記以外にもこの本もよく参考にしています。

中医学の基本と仕組みがわかりやすく記載されているのでオススメ。

では、さっそくシャドーボクシングを始めていきましょう!

【主訴】
 食欲不振・易下痢・易疲労・傾眠・易感冒・蓄膿症・アレルギー性鼻炎・扁桃腺炎・扁桃腺炎治療後に発生し、今も続く乾咳・肩背の凝り痛み。

【病状】
 もともと胃腸が虚弱で食欲がない、別の病院にて補中益気湯+六君子湯を服用中。食欲のみやや改善した。
胃下垂・軟便・少しの過食で下痢・食後傾眠・易感冒・蓄膿症・アレルギー性鼻炎・扁桃腺炎が順番に連動して発生する。
疲労蓄積状態、冷えると腹痛、極度の冷え性で不眠、手足の裏の発汗、爪もろい、寝つきが悪い、ストレスが強い、月経痛。

補中益気湯(ホチュウエキトウ)

 六君子湯(リックンシトウ)

【既往歴】
 10年以上前から低気圧の接近で偏頭痛発作が起こる。出産後から脱毛。高校生の時、高熱でヘルペスが出現。風邪で葛根湯を続服して動悸がひどくなり中止。

【家族歴】
 特になし。

【舌所見】
 舌質淡紅、舌苔白、舌下静脈の怒脹なし。
 舌の色が淡紅であれば一般的な健診であれば正常と判断。
 舌苔が白であれば一般的な健診であれば正常と判断。
 舌下静脈は舌の裏にある血管の事。膨らんでいれば怒脹とされ、血液循環に異常があると判断できる。本ケースでは正常のようです。

【脈所見】
 稍細滑
 →意味不明。脈が細いということだろうか?
 調べても解説らしき情報はWEB上で確認できず。著者独自の略式語かもしれません。

【著者の弁証】
 脾肺同病・気血不足・内湿外邪(脾胃の湿、邪による表証)(脾胃の内湿と表に侵入してきた外邪)
処方①補中益気湯+六君子湯
処方②荊芥連翹湯+附子+葛根+白芍

荊芥連翹湯(ケイガイレンギョウトウ)

補中益気湯+六君子湯で食欲は改善したが、易感冒、鼻腔周りの病気、下痢などの病気は改善されなかった。そこで荊芥連翹湯+附子・葛根・白芍を併用することで清熱・排膿・補血・補腎・補肺を行い、結果病状がほぼ改善された。

【僕の弁証】
 まずは病状を時系列に並べる。
 胃腸が弱い
 易感冒
 易疲労
 蓄膿症
 アレルギー性鼻炎
 扁桃腺炎
 冷え性
 手足の裏の発汗
 ストレス
 月経痛
 
 既往歴にある偏頭痛、脱毛、ヘルペスは当時の症状であり、今回の主要因とは関連がないと考えております。

 冷え性とのことから寒性と思われます。
 一方、手足の裏の発汗があることから体に熱があり解熱のための汗かと一般的には思われますが、本患者の症状を読み解くとストレスによる自立神経の乱れではないかと考えられます。

患者さんの症状を時系列に並べたうえで見てみると、
胃腸の改善が1つ、
蓄膿症・アレルギー性鼻炎・扁桃腺炎が1つ。
ストレスによって交感神経が乱れ、不眠症や疲労感が続いていることが1つ。
ただストレスについては胃腸の改善と鼻腔周りが改善できれば患者の悩みの種が減ることになり、ストレスも軽減できそうな気がします。

他、蓄膿症・アレルギー性鼻炎・扁桃腺炎が順番に連動して発生することから自己治癒力が弱いことが見受けられますので虚証の可能性が高いです。
よって、胃腸の改善と鼻腔周りの改善を先に施し、その後、自己治癒力を高める漢方薬を処方します。

胃腸の改善には患者がすでに別の病院でも処方されている六君子湯(リックンシトウ)を処方します。過去に六君子湯を処方して食欲が改善されたとのことから効果はあるとみています。ただ、体への巡りが悪い(血液循環不備)ので六君子湯の効果を十分に活かせていないのではないかと考えます。
そこで、鼻腔周りの病状に対する漢方薬には荊芥連翹湯(けいがいれんぎょうとう)を活用します。
荊芥連翹湯には鼻腔周りの炎症を抑えるもの、病因を発散させるもの、痰や膿を排出するもの、あるいは血流をよくする生薬などがいろいろと配合されており、この患者さんにはうってつけの漢方薬だと思います。

上記を処方しても疲れやすい・ストレス・月経痛が改善されないようであれば、加味逍遙散(カミショウヨウサン)を処方します。
加味逍遙散には滋養強壮効果、血液循環を良くする効果、ホルモンバランスを整える効果で生理不順や生理痛の改善自律神経失調を改善するなど様々な生薬で構成されており、効果が期待できます。

加味逍遙散(カミショウヨウサン)

【結論】
 著者の漢方処方と私の漢方処方では六君子湯と荊芥連翹湯は一致した。
これは純粋に漢方学を勉強している私からすると嬉しかった。
少しずつ勉強の成果が表れているのではないかと考える。
一方、生薬単体の処方は生薬一つ一つの効果・効能について理解がまだ不十分であり思いつかなかった。また、書籍の本筋である五行理論は今のところ、私には理解できないため、五行理論を用いての弁証論治は難しいと感じている。


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