地域ビジネス概論&当事者意識の掘り起こし~地域ビジネススタートアッププログラムDay1 in 四万十町~
四万十町での地域ビジネス連続講座がスタート!
地域ビジネススタートアッププログラムは、地域の課題解決や暮らしの向上を目指し、9か月をかけて地域ビジネスを形にしていく連続講座です。
地域での豊富な事業経験を持つゲストやメンターのサポートを受けながら、高知大学の学生が受講者を伴走サポートするプログラムとなっています。
2024年6月22日、Day1のテーマは「自分の理解とビジネスの目的の明確化&仲間の理解」。
地域ビジネスの基本的な考え方を学ぶとともに、株式会社パンクチュアルの守時健氏をゲストに、地域でビジネスに取り組む際の視点や心構えについてレクチャーが行われました。
最後に、受講者同士が自身のライフヒストリーを紐解きながら、自己理解と一緒に学ぶ受講生、学生メンターの関係形成を図りました。
以下ではDay1の様子を簡単ですがご紹介していきます。
1.地域ビジネス概論
地域ビジネスとは、
を指します。
そして、その前提として大切になるのが、「あなたにその事業をやる明確で、納得感のある理由があるかどうか」です。
言い換えれば、事業に取り組む目的が自分の内側、自分事で取り組めるものなのかどうかが重要になるということです。
そのため、どんな事業をやるか以前に、自分自身は何者で、なぜどの事業に取り組みたいのか、その原体験はどこにあるのかを深く自己認識することが必要となります。
地域ビジネスのポイント
地域ビジネスをよりよく進めていくには次のようなポイントがあると言われます。
以上を意識して、取り組みを進めることが重要になります。
2.キーノートスピーチ
Day1のゲストは、株式会社パンクチュアル代表取締役の守時健氏。
●コロナ過の創業からの急成長
パンクチュアルの創業した2020年は、コロナ真っ只中ということもあり、イベントもできず、地元の漁師さんの中には魚が売れず廃業するところもある状況だったと言います。
そこでまず取り組んだことは、ECサイトの構築で、人気ブロガーなどを集め、2週間で準備し、公開したところ、大きな反響を呼び、売れ残っていた魚が飛ぶように売れていきます。
それが話題となり、他地域の生産者や加工業者からもコロナの影響で売れ残った商品を販売してほしいと声がかかるようになり、結果的に、初年度で年商10億円を達成し、令和2年度高知県地場産業大賞 奨励賞と特別賞を受賞するに至ります。
●自治体職員からの転身
守時氏が須崎市と出会ったきっかけは、たまたま旅行で訪れた新子まつりだったといいます。
地域のおばあちゃんが酔いながら踊っている光景を見て戸惑いを感じつつも、「ここなら大学生の続きができるかもしれない」との思いから、須崎市市役所に入庁し、役場職員として働くことになります。
役場職員として働く中で、都市の発展に興味を持つようになり、勉強家重ねていく中で、自分1人でも出来ることは何かないかと考え、情報発信を切り口に取り組みを進めていくことになったそうです。
守時氏自身が大学生時代から続けているSNSのフォロワー数が既にたくさんいたことに加え、当時、ゆるキャラがブームになっていたことを掛け合わせることで何かできるのではないかと考え、生まれたのが「しんじょう君」だったと言います。
結果的に、少し過激な投稿やブログが人気となり、ゆるキャラグランプリ2016で優勝し、一躍、全国的な知名度を誇るようになります。
そうした取り組みをより地域に活かすことを期待され、しんじょう君は、須崎市のふるさと納税のPR担当に抜擢され、その結果、ふるさと納税額は活動1年で前年度の300倍を超え、現在では約34億円が集まっているといいます。
●自社の強みと地域商社の必要性
そうした須崎市での経験を活かして独立した守時氏が経営する「Punctual inc.」では、SNSマーケティングを活かし、地域商社として県内外のふるさと納税の支援に取り組んでいますが、その際に「受託自治体に必ず営業所を設置し、その地域にスタッフを住まわせる」ことにしているそうです。
それは元自治体職員として、1円も交付金を無駄にしない、域外にお金を出さないという“怨念”にも近い想いだと笑いながら話します。
また、「地域には地域商社が必要だ」とも述べ、地域外の広告代理店等は地元への理解がおろそかになりがちであり、一方、役場は移動があるため、熱意がある職員が必ずしも担当するわけでないといった現状を踏まえ、地域商社がそうした課題解決を担っていける可能性があるのではないかと、さらなる事業拡大と地域への貢献を目指している様子が伺えました。
3.マイプロワーク
最後に、受講生の自己理解と受講生同士、そして、受講生をサポートする学生メンターの関係形成を目的に、マイプロジェクトワーク(以下、マイプロワーク)に取り組みました。
マイプロワークは、自分の人生を振り返るme編と呼ばれるシートと、自分と紐づいたプロジェクトを描くpjt編シートを用いて、対話とアクションを重ねていく教育手法として教育現場はもちろん、起業家育成の現場でも導入が進められています。
Day1では、事前課題として記載してきたme編シートを用いて、読んでほしい名前、みんなが知らない自己紹介、自分のライフヒストリー、大切にしている思い出の写真などを4人~5人のグループに分かれて共有し、対話を行いました。
共有の際には、受講生は趣味や性格、好き嫌いなどが語られ、自分の年表や人生グラフでは、様々な楽しい経験や達成した経験、辛かった経験、挫折した経験などが詳しく語られたました。
聞き手の受講生や学生メンターは、語り手の話を熱心に聞きつつ、その人のme編シートに書き込みながら興味深く聞き、質問の際には、その時の心情や経験からどのようなことを得たのかといった、共有の際に語られていなかった部分について質問を重ねていました。
セッションの最後には、一緒に対話を行った仲間に、メッセージカードを渡し、メッセージカードには、「自分自身も同じような経験をした」などのような、その人の話を聞いてみて同感したことや感銘を受けたことといった感想が書かれていました。
まとめ
本講座のDay1は、地域ビジネスに関する基本的な考え方の理解と、実際に地域で事業に取り組む守時氏の活動からそのポイントを学ぶとともに、受講生・学生メンター同士の関係形成と自己理解を深めていきました。
地域ビジネスに取り組む際には、もちろん、斬新なアイデアや付加価値の高い商品、サービスを設計することは重要ですが、その前提に、「なぜ、その事業に取り組みたいのか」、「事業を通じてどんな世界を創り出したいのか」、すなわち、圧倒的な当事者性が大切になることを参加者が気づく時間となりました。
(文責:西上 一成)