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だから今年も梅酒をつくる

毎年、梅酒を漬けている。
今年は高知らしく、日曜市で梅を買うことにした。

日曜市に行くと夏野菜がたくさん並び、季節は夏に向かってズンズン進んでいる。
梅を売ってるお店も増えていて、どこで買おうかと悩む。

「小梅」「紅梅」「さんし梅」と、品種ごとに梅が並ぶ店で足を止めた。
すこし赤っぽい色あいのもの、縦長な形をしているもの。
梅にも個性がある。
さんし梅は日曜市でよく売っていると、店主のおじさんが教えてくれたから、今年はさんし梅で漬けることに決めた。

高知の日曜市のひとこま

梅酒づくりの大先輩でもあるおばあちゃんが「一晩くらい水につけておくとアクが出ていい」と言っていたのを思い出し、水を張ったボールに梅を入れておいた。
そして、翌朝、梅を一個ずつボールから取り出して水気を拭き取ってゆく。

今日は雨模様ですっきりしない天気みたい。
梅が熟すころに降る雨だから「梅雨」って、昔の人はうまいこと言ったもんだ。
雨の日に梅を手に取るわたしは、まさに字のごとく梅雨を体験している人に見えるのかな?

梅仕事はこうやって考え事するのにぴったりだ。


そもそも、梅酒づくりは、おばあちゃんに作り方を聞いて始めた。
初めて梅酒を作ったのはいつだったか。
昔の日記を引っ張り出してペラペラめくったら、ちゃんとその日のことを綴っていた。

それは5行ほどの日記で、「季節を体験することをやっとでき始めた」という一文で締めくくっている。
当時は仕事が忙しくて自分の暮らしなんて後回しだったから、こんな言葉がわたしの中から湧き出てきたのだろう。

もくもくと作業する梅酒づくりが、忙しい日々を送るわたしには心地よくて、自分の心の真ん中に問いかける時間でもあった。

1日お酒につけただけで、もう梅の色に変化が。


時は過ぎ、ひとり暮らしだっのがふたり暮らしになり、働き方も変わって時間にゆとりができた。
もう、自分の暮らしを後回しにすることもない。
それなのに、わたしは、梅酒づくりを毎年続けている。

生活が変わったとしても、梅に触りながら物思いにふけるこの時間がわたしには必要みたいだ。
だから、おまじないだと思って
来年もどうか梅酒を作れますように、
季節の移ろいに気づけるくらい、自分を大切にして暮らしていますように、と願うのだ。


高知暮らしの「よみもの」を気ままに綴る #高知の歩き方
なんでもないわたしの日記エッセイです。
田舎を楽しむヒントをおすそ分け。

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