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化学生物学研究室(門出研究室)紹介①

スタッフ

教授 門出健次

講師 谷口透

助教 村井勇太

助教 マハデバ スワミィ

写真1 学位認定の際の写真

2.1 キャッチフレーズ

小さな分子の立体構造が,大きな生体分子の機能を決めている。

2.2 主な研究分野

1位 化学,2位 生物学,3位 物理学

2.3 キーワード 

化学生物学,立体構造解析,VCD法,キラリティー,脂質

2.4 研究内容

化学生物学とは

化学生物学(ケミカルバイオロジー)とは,1980年ごろにハーバード大学の教授によって定義された学問であり,似た学問の1つとして生化学(バイオケミストリー)があります。生化学は生命現象に関する化学反応や生体分子を解析する学問であるのに対して,化学生物学は脂質,糖などの生体小分子を解析することによって生命現象の解析を目指した学問とされています。特に門出研では,VCD法という新たなキラル分析法で脂質・糖鎖を解析することにより,研究があまり進んでいない脂質分野の研究を行っています。

写真2 溶液を分離させて,保持する装置

 脂質ケミカルバイオロジー

脂質とは,アミノ酸,核酸,糖質と並び,生命維持活動に欠かせない生体分子であり,癌や心疾患は脂質の代謝異常が関係しているとされています。門出研では,脂質の1つであるスフィンゴ脂質の代謝機構に着目して,このような脂質代謝異常を制御する研究を進めております。脂質の代謝を制御することにより,患者の減少,または新たな治療法の創生を目指しています!

VCD励起子キラリティー法

高分子の中には,同じ構造式を持つにも関わらず,立体構造が異なり,違う活性を持つ高分子が存在しています。このような分子はキラル分子と呼ばれており, L体とS体の2種類の立体配置をそれぞれ持っています。自然界にもキラル分子が多く存在しており,例として,たんぱく質を構成する基本単位であるアミノ酸もキラル分子です(自然界のアミノ酸はL(R)体のみ)。

図1 L(R)-アラニン(左),D(S)-アラニン(右)

これらのキラル分子は,生体内で異なる働きをするため,L体とS体の区別は大変重要なであるとされています。しかし,キラル分子は沸点,融点,密度などの物理的性質が同一であるため,それらの分子の立体構造を特定することは困難を極めています。そこで,門出研はVCD励起子キラリティー法というキラル分子の立体構造解析方法を開発しました。

VCD励起子キラリティー法は,少量の試料から非経験的手法を使用して,試料のキラリティーを求めることができます。少ない試料で計測ができるというのは大きなメリットで,コロナの抗原検査にたとえてみましょう。現在の抗原検査では綿棒を鼻の穴に突っ込んで粘液を少量取り出すだけで精度よく検査が可能です。しかし,もし大量の鼻水がないと精度よく計測できない検査だったらどうでしょうか? 鼻の穴を穿り回して,それでも粘液が足りていなかったら,偽陰性という結果が得られるかもしれません。つまり,少量の試料で検出できるというのはとても重要な特徴であるのです。門出研では,様々な利点のあるVCD励起子キラリティー法を利用して研究を進めております。

※    計算などの経験によらない計測手法のことを非経験的手法といい,これまでの経験(他の物質の計測結果など)を参考にする経験的手法とは異なる。

(L体とS体の違いによって発生してしまった重要事件として「サリドマイド事件」がある)

光化学を利用したたんぱく質修飾技術の応用

門出研では,化学プローブという分子を利用して,生理活性分子(薬剤なども含む)がどのような標的分子に働いているのかを調べる研究も進めております。生理活性物質の中にはどのような標的分子に対して働いているのかが不明なものもあり,標的分子を明らかにすることで新たな治療法などを確立することができると考えています。門出研では,光化学を応用した独自の化学プローブを開発し,新たな創薬ステップの初期アプローチに貢献しています!!

写真3 UV光でたんぱく質を修飾している様子


ホームページ

化学生物学研究室,https://altair.sci.hokudai.ac.jp/infchb/ 
(2022年11月13日)


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