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プロジェクトの振り返りとコーチングの可能性

これまでの記事でご紹介してきた通り、認知科学に基づくコーチングは、現状に囚われず、各人の主体性を発揮していくという、未来志向のパラダイムです。

  • 人生において既に発現されている、コアな才能/ Want toを知ること

  • Have toを外し、誰に禁止されても歩みを止めない無意識レベルでの才能を解放すること

  • 心から本当にやりたいと思えるゴールを設定し、未来を創っていくこと

これらは、一般的なビジネスシーンで重視される”論理思考”や”課題解決”のパラダイムとは異なるものです。

本来、価値の創造においては、問題を解決できるかより、「主体性」をもって問いを立てられるかが重要です。

周囲の声に関係なく、誰も勝ち筋が分からないことに対して旗を立て、各個人の信念に基づいてやりたいことをやる、というのが「主体性」の世界観です。

これは、論理による厳密な分析は不可能であり、”勇気”の問題であるとも言えます。

そのような視座に立った時、私が過去に戦略コンサルティングの世界で取り組んだプロジェクトはどのように見えるのか。

今だからこそ分かる、コンサルティングの限界と、コーチングの可能性について、私自身の認知の変化を踏まえて、振り返ってみたいと思います。

プロジェクトの概要

ここで振り返るのは、とあるインフラ系企業において、インフラの未来を考え、新しい事業創造に向けたオープンイノベーションの在り方を企画し、参画企業とともに研究開発を進めていく、というプロジェクトです。

注力するテーマを決める上で、経済/社会動向や、技術進化のトレンド、企業としての経営方針を長期視点で捉え、論理的な枠組みで整理し、そこからバックキャストするというアプローチを採りました。

そして、バックキャストした中から今後数年で取り組むべきことを考え、組織としてのビジョンやミッションを言語化し、それを領域/分野毎の取り組みと紐づけて、各施策の方針を定めました。

更に、各施策のテーマ毎に、アクションアイテムを具体化して年次計画に落とし込み、進捗を管理していきました。

つまり、

  • マクロトレンドから論理的整合を取りながら、組織のビジョンをつくり、

  • それを個別のテーマに紐づけながら、個々の取り組みを運営・管理する

という流れでプロジェクトを進めていき、一定の成果に至りました。

テーマは違えど、概ね同様の考え方でプロジェクトを企画、運営されている方も多いのではないでしょうか。

認知科学コーチングの立場から見た振り返り

しかし、このアプローチを認知科学コーチングの立場から捉えると、幾つか見直すべきポイントがあると感じています。

以下、順を追って説明していきます。

マクロトレンドに潜む罠

まず、全体の論拠としていたマクロトレンドについて。

一般的に、戦略策定の基本プロセスとしては、PEST(政治/経済/社会/技術)といった外部環境におけるマクロトレンドの分析を緻密に行った上で、それを内部環境の分析結果=自社の強みと掛け合わせたうえで、採り得るオプションを立案します。

しかし、このようなマクロトレンドの推論は、人間の認知における限界があり、現状から考えられる範囲での演繹的な推論に陥ってしまうという罠があります。

つまり、マクロトレンドの分析への依存が、非連続的な未来を志向していく上での足枷となってしまう可能性があるということです。

どのような未来を思い描き、ゴールを定めていくかは、個人の価値観に委ねられています。現状からの推論されるようなトレンドの上には、非連続な未来はないのです。

個人の価値観の欠如

次に、組織における個人の価値観について。

組織としてプロジェクトを進める際には、往々にしてこの観点が盲点となりがちです。

組織全体で、熱量高く、Happyに仕事を進めていく上では、まず組織のトップやプロジェクトオーナー個人の価値観に基づいたゴールを設定し、そこに各メンバーの価値観を重ねていくことが重要です。

これにより、組織のトップからメンバー一人一人に至るまで、自らのやりたいことに基づいてプロジェクトを進めていると「自分ごと化」し、自覚できるようになります。

つまり、組織という抽象度にのみ対峙してゴールを設定するのではなく、個人のレベルでも本音を解像度高く捉え、ゴールを設定していくというプロセスが必要不可欠なのです。

ロジカルシンキングの限界とイシューメイキングの重要性

最後に、ロジカルシンキングの限界について。

これは、上述のマクロトレンドの罠や個人の価値観の欠如とも重なるのですが、客観的合理性を追求するロジカルシンキングは、主観的な未来志向の観点、及び組織の熱量の観点で限界があります。

各メンバーがいかに「自分ごと」として主体的に行動し、イシューメイキングを行っていけるかが、組織のパフォーマンスを決めるのです。

そして、イシューメイキングが主体的に行われ、ゴール=理念が明確な組織においては、それをどう市場に橋渡ししていくかという観点から「戦略」を生み出すことができます。

「戦略」とは敵と戦わなくていい領域を主体的に見出すことであり、文字通り”戦いを略す”ことなのです。

最後に

逆に「理念」よりも先に、「戦略」を論理の世界だけで作り上げてしまったら、それはもはや現状の延長でしかない可能性が高いです。

一見遠回りにも見えますが、組織としては、組織のトップやプロジェクトオーナーの価値観に基づいたゴールの設定を行い、そこにメンバーの価値観を重ねていくことが実は合理的です。

私自身もコーチとして、そういった活動に少しでも貢献していきたいと考えています。