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動物の絵 日本とヨーロッパ:1 /府中市美術館

 半年前のお出かけを今になって回顧したのは、府中市美術館を再訪するつもりだったから。

 開催中の展示は「動物の絵 日本とヨーロッパ」。

 動物を描いた日本の近世絵画を、特定のテーマに沿って展示(一部、中世や近代の絵画も)、それに呼応する形で西洋絵画の同様・同種の作例を挙げていくという流れ。さながら、日本とヨーロッパの往復書簡、動物を切り口にしたビジュアル版比較文化誌となっている。
 動物が人間にとって身近な存在であることは、古今東西を問わない。動物がどのように絵画化されたのかを明らかにしようとすれば、とりもなおさず「文化」そのものの共通点/相違点をあぶりだすこととなるのだ。

 もうひとつ、この展覧会にはオムニバス的な側面もあり、これまで一連の「春の江戸絵画まつり」のなかで人気を博してきた動物画の再登板も実現。一部で人気の「家光画伯」こと徳川家光のコーナーもその一環。オールスター、ダイジェスト版といってもよい。
 「かわいい江戸絵画」の大本命、京博のトラりんこと光琳《竹虎図》や若冲の《象と鯨図屏風》、仙厓さん、そして応挙の子犬といったあたりをしっかり押さえつつ、「春の江戸絵画まつり」が継続して気を払ってきたマイナー近世絵師の作例も随所に配置。再登板組としては、伊年印や応挙の虎、《百兎図》といったものがとくに印象に残った。

 見ようによっては、ラインナップが手薄とならざるをえない西洋絵画は、これら近世絵画の人気者たちの引き立て役に回っていたともいえそう(小声)。もちろん西洋絵画にもおもしろい作例は集められていて、モローやルドンなど、すきな人にはたまらない作家のワンポイントリリーフも効果的だった。 

 長谷川潾二郎の油彩の猫もよかった。
 最もよく知られた宮城県美術館・洲之内コレクションの《猫》に加えて、その隣に個人蔵の《猫》が。

 短い両脚をピンと伸ばした寝姿が目に入ってきた瞬間、思わず洩れる「かわいい……」。赤と紺の毛糸玉にはまるで目もくれずに、こんなポーズをとっている。気ままな子猫だ。(つづく)



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