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没後80年記念 竹内栖鳳:3 /山種美術館
(承前)
柿の実の軸のお隣に、干し柿の軸を配置する。
こういった心にくい展示上のひと工夫は、はす向かいの展示ケースでもみられた。
《城外風薫》は、水の都といわれる中国江蘇省の古都・蘇州を描いたもの。遠くに塔の見える風景にあこがれて、栖鳳は2度ほど大陸の土を踏んでいる。
なかでも、街じゅうを水路がめぐり、石組みの橋を小舟がくぐる「東洋のヴェネツィア」蘇州の情景に、栖鳳は打たれたのであった。
暮らしの中に川がある――水の都の湿潤な空気が、水分をたっぷりと含ませた淡彩の筆でよく表されている。
そのお隣には、やはり同じような寸法・体裁の軸が掛かっていた。作品名を《潮来小暑》という。同様に湿潤な空気が描きとめられており、これも中国の絵なのかなと思いきや……茨城の絵であった。
作品名の《潮来小暑》は、先ほどからの流れでつい「ちょうらいしょうしょ」と音読みしまいそうだが、正しくは「いたこしょうしょ」なのだ。
\ただいま展示中!/
— 山種美術館 竹内栖鳳展中 12/4まで (@yamatanemuseum) November 19, 2022
竹内栖鳳《潮来小暑》
(いたこしょうしょ)( #山種美術館 )
水郷の町、潮来(茨城県)。
栖鳳は中国・揚州に似た景色を好み、たびたび訪問しています😉
水彩風の淡い色彩の風景…川には牛をのせて進む小舟…
なんとも穏やかで、優しい作品に緊張がほぐれます😌#竹内栖鳳展 pic.twitter.com/KvWuQdo22O
大陸から戻った栖鳳は、日本の北関東に中国に似た情緒ある水辺の風景を発見した。それが、水郷といわれる潮来の地だった。いわく「支那画情緒そっくり」だったというのである。
栖鳳はよほど潮来に入れこんだらしく、本展にも潮来を描いた作が複数出ていた。
なかでも雨の水郷を描いた《雨中山水》は、水墨のみで深遠な画趣を描き得ており、余情がすばらしい。
水郷として名高い茨城の潮来。#竹内栖鳳 はこの地に魅了され、繰り返し訪れたそう✨
— 山種美術館 竹内栖鳳展中 12/4まで (@yamatanemuseum) October 19, 2022
「画趣豊かな地方を見歩くという事は、画家にとっては最上の幸福である」と語っているんですよ☺
《雨中山水》(#山種美術館)も潮来に取材した作品のひとつ。
雨に煙る水郷も趣があってステキですね☔#竹内栖鳳展 pic.twitter.com/TQeptN0WG3
こんな絵を観ていると、潮来に行ってみたくなるものである。少なくとも、中国よりはずっと行きやすいではないか。
このような風情が今も健在かどうかは、確証がないけれど……
栖鳳作品に続いて、京都画壇の先輩格や同世代の作家、栖鳳の弟子・後輩たちの作を数点ずつ展示。村上華岳《裸婦図》(重文)も出ていた。各作家に関する栖鳳自身による回想・人物評の文章も併せて紹介されていて、親しみを覚えた。
みな、ことごとくビッグネームである。彼らを脇役に押し退けてしまうくらい、京都の日本画における栖鳳の存在は大きいのだ。
栖鳳展だからこのような配分になっているというよりかは、そのまま京都画壇の縮図を示しているような構成であった。屈指の日本画専門館ならではであり、面目躍如といえよう。
栖鳳を中心に据えて、京都の日本画を総まくりする本展。
会場はコンパクトながら、通常の回顧展よりもさらに広範なスケール感をいだかせる展示であった。
※今年は栖鳳の没後80年。島根・安来の足立美術館でも栖鳳展が開催中。会期も、栖鳳と彼に連なる京都の作家を並べた構成もほぼ同じ
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