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所蔵企画展:風景 What a Wonderful World!:1 /メナード美術館

 根津美術館、五島美術館、逸翁美術館といった美術館の創立者は、みな鉄道事業で財をなした。出光美術館ならば石油、岡田美術館はパチンコ。
 彼らの本業は、美術からは離れている。いわば、趣味が高じる形で美術館ができ、本業のイメージにも多かれ少なかれ還元されるといった恰好だ。
 それに対し、本業が「美」に直結するような業種では、美術館の存在が企業イメージと分かちがたく結びつき、その向上に直接的に寄与するといっても過言ではない。美術館の設立と運営を、社を挙げてのオフィシャルな戦略として前面に打ち出しやすいのだ。
 化粧品メーカーなどは、その最たるものだろう。
 化粧品メーカーに由来をもつ美術館というと、箱根のポーラ美術館が真っ先に思い浮かぶ。知名度の上でそれに続くのが、資生堂アートハウス(静岡県掛川市)、メナード美術館(愛知県小牧市)あたりだろうか。いずれも、企業名がそのまま冠されている美術館だ。

 まったくの偶然なのだが、この3館、わたしがこの1年のうちにそれぞれお世話になった館でもある。
 ポーラ美術館は、渋谷のBunkamuraでの出張展示。シスレーボナールがとりわけ気に入って、求めた絵はがきをいまも机上に置いている。

 来年度は、新収蔵品のゲルハルト・リヒターがお披露目になるとか。同展の出品作家リストにはハマスホイだとかモーリス・ルイスだとか松本竣介だとか白髪一雄だとかいった、たったひとりでも名前があるだけで、箱根まで向かう理由として十分に足りるくらいすきな作家がわんさかいる。
 ぜひ行きたい、というか行くしかないかな、これは……

 資生堂アートハウスへは、この6月に初めてうかがった。
 銀座の「資生堂ギャラリー」はコンテンポラリー主体の展示スペースとなっているが、資生堂掛川工場の敷地内にあるアートハウスでは、かつてギャラリー展示でお買い上げとなった作品が収蔵されている。
 掛川という、新幹線がかろうじて通っているとはいえアクセス良好とはいいがたい場所、さらに駅からも距離があるゆえに足が向かないでいたが、いざ行ってみると……センスのよさに感銘を受けること多々。今年の鑑賞体験のなかでも、五指に入れてよいものだった。
 いつか書こう、書こうと思って、さっぱり書けていないのだが……詳しくは、またの機会に譲るとしよう。

 そして、メナード美術館にも今年、初めて訪れた。
 今年といっても、つい先週の話である。
 
 ……と、そんな具合にただ「メナード美術館に行ってきました」という話をしたいだけだったのに、前置きにこれほど多くの文字数を費やしてしまった。
 いったん、中締めとしたい。次回に続く。(つづく

※ポーラ美術館も、「ポーラミュージアムアネックス」というコンテンポラリーの展示スペースを銀座にもっている。「銀座でコンテンポラリーの小さなスペース+郊外でコレクション全体の大きな美術館」という意味では資生堂と同じ態勢だ。メセナに関しては後発のポーラが、資生堂をお手本にしたのかなと思う


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