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自営夫に意見を聞いてもらうために、やってよかったこととダメだったこと

自営業の夫と一緒に働くことになったはいいけど、こっちがあれこれ意見を出してもぜんぜん聞いてくれない!と口にする女性をときどき見かけます。

三代続く老舗の和食店を旦那と経営している私も、かつて同じことで悩んでいました。というか今でもときどき悩みます。


この道30年の彼は、良くいうと信念があり、悪くいうと少々ガンコ。

これまで数えきれないぐらいの提案や意見を彼に出してきましたが、いくつ却下されたがわかりません。


ただ私も私で「こうしたい」と思ったらなかなか曲げない意固地な性格。

なんとかして聞き入れてほしくて試行錯誤し、ありがたいことに、今ではホール業務のほとんどを任せてもらっているうえ、経営の根幹に関わる様々な事案にも携わらせてもらっています。


そこで今日は、自営業で一緒に働く夫にこちらの話を聞いてもらうためにはどうすればいいのかを、これまで積み重ねてきた7年間の失敗と成功をもとに少し整理してみたいと思います。



夫婦とはいえストレートすぎる物言いは禁物


まずは恥をしのんで私の失敗例からお話しします。

なんどかこのマガジンでお伝えしているように、私が働き始めたころの今の店って、ヒマでヒマで仕方なかったんです。

そこでなんとか店を盛り上げようと、改善案を出したり新しい取組みを提案してみたりしたんですけど、いま思うとその伝え方がなんともまずくて。

「ぜったいこうするべきでしょ!」「それって悪しき伝統だよね、やめない?」「その考え方もう古いよ」「ほかの店ではこうやってうまくいってるよ?」「それってやる意味ある?」

…わかります?押し付けがましくて、どこか喧嘩ごしで、相手が今までやってきたことを全否定するような発言なのが。


正直なところ今の店、外から来た私から見るとツッコミどころが満載だったんです。だから自分が考える改善点にはけっこう自信があった。

ただいくら自分の方が正しいと思っても、それをそのまんま押し付けたり、あの人もやってる、あの人はうまくいってると比べたり、だからあなたはダメなんだとけけなしたところで、素直にそれを聞こうと思える人は世の中にどれぐらいいるのかっていう話です。

ただでさえ自営業をやっている人って、他人の言うことを聞くのが性に合わなくて、だから雇われない働き方を選んだっていう人も多いもの。

そういう人に「これが絶対正しいからこうしなよ」といったところでよほど懐の深い人じゃないと聞き入れてもらえないのは、独身時代に自営業をやっていた自分自身がよくわかっているはずなのに...。

うちの旦那はかなり優しいタイプですが、それでもこの手の会話でなんども怒らせています。

正論だったとしても、ストレートに表現しすぎ。過去の自分にほんと、反省しています。



感情的な人と仕事の話はできない


反省その2、です。

先ほどの話と通ずる部分があるのですが、今の店で働き始めばかりのころの私は、まるで感情の産物かというぐらいエモーショナルでした。

たとえば先ほどのように「ぜったいこっちがいい!」「これやめない?」「それやる意味ある?」とすでにキツい物言いをしたうえで、了承してくれなければ不機嫌になったり、意味わかんない!なんで?なんで?と詰め寄ったり、お酒で勢いをつけて怒りをぶつけたりしてたんですよね。もう自分で書いてて嫌になります…。

言い訳になりますが、彼が超年上なこともあってどんどんわがままになっていたこと、環境の変化へのストレスや体調不良なんかも背景にありました。


こんなんですから、ふつうなら仕事の話をしたってまともに聞いてくれるわけないんです。それでもいちどは聞こうとする姿勢をとってくれた彼には感謝と同情しかありません。

で、ひとまず聞いてくれたうえで、それでも却下されたとき、私は半ば押し通しに近いこともしていました。

「わかってくれないならもういい口聞かない勝手にして」みたいなことも言っていたと思います。こうなってくるともう、仕事じゃありません。


結果的に、むりを押し通してでもやって良かったことは多かったです。

ただ今思えば、もっと冷静に、きちんと彼に納得してもらえるような説明をするべきだったなぁと。

そうすれば、却下されたあれやこれやももしかしたら聞き入れてもらえたのかもしれませんし、お互いに気持ちよく仕事を進められたはずです。


いちがいには言えませんが、感情的な人と仕事の話をまじめにするのは難しいです。

なので、パートナーに提案を聞き入れてほしければ、自分自身のたかぶる感情をあるていどコントロールする術を身につけた方が良さそう。

私も今は「仕事の話はどんなときも冷静に」がモットーになっています。



口頭でのプレゼンが基本。ただしどう話すかが大事


ここからは、やって良かったこと、今も実践していることが続きます。


私が彼になにか仕事のことで提案をしたいときは、基本的に口頭でプレゼンしています。

なぜこの提案が良いのかというメリットをたくさん挙げて、あらかじめ予想していた突っ込まれどころを補足し、納得してもらう。

経営についてあれこれ決めるのは私たちふたりだけなので、たいていはこんな感じで十分です。場合によっては簡単な資料を用意しておいたりすることもあります。


で、何を話すかと同じぐらい気を付けているのが「どう話すか」です。

こちらの提案や要望を聞き入れてもらえなかったときのことを思い出すと、話の内容というより「どう話したか」が影響しているんですよね。

そのひとつが先ほどにも書いたような、感情的な物言いです。これはいちばんダメでした。

そこでひとつ私が心がけているのは、なぁなぁになりやすい夫婦関係からちょっとだけ距離をおいて、他人になること

仮に自分が会社勤めをしているとして、相手が上司や同僚だったときでも同じような言い方をするだろうかと考えます。

おそらく頭ごなしに否定したり、自分の意見を押し付けたりはしないはずです。


あるいは話をするタイミングも、自分が思い立ったときにすぐ口にするのではなく、相手が忙しそうな時間や機嫌が悪そうなタイミングは避ける。

また飲んでいる最中だと忘れられたりもするので、事前に「今日は夕飯を食べる前にこういう話がしたい」と伝えておくなど、お互いにシラフで話すようにしています。



私がこうしたい、とストレートに伝える


ビジネスライクなプレゼンと真逆で「私がこうしたい」「常にホールに立ってる私の肌感覚でそう思う」と、気持ちをストレートにぶつけることもままあります。

といっても感情的になるのとは違い、あくまでも思いや熱意を伝えるという意味です。


最近でいうと、コロナ禍のまっただ中にも関わらず、営業時間をこれまでより1時間みじかくしたいと相談する機会がありました。

はじめ夫からは「少しでも売上をあげないといけないのに、遅くにしか来れないお客さまもいるのに、どうするの?!」と反対されました。

しかし私はどうしても、これから産まれてくる子どもや自分たちのためにも、人間らしい健全な暮らしがしたかった。

そこで二度にわたって率直な気持ちを伝えた結果、なんとか了承してもらうことができたのです。


「このさき遅くまで呑む人って減ると思う」とか「売上はなんとか方法を考えるから」とか、根拠に乏しい自信なさげな理屈もいくつか並べはしましたが、そんなことよりも「自分たちがこれからこうありたい!」という思いのほうが、この一件では刺さったのだろうと思うんですよね。

一般の企業では通用しない方法かもしれませんが、人生をともに歩む家族だからこそ、お互いの気持ちや納得感は大事です。

ですのでとくに、仕事だけでなく自分たちの生活に関わってくるような事案では、思いをストレートに伝える方法を取るようにしています。



お試しでやってみて、成果を見せる


自分的にはすごく自信があるんだけど、夫には渋られてしまうとき。

やってみたいけど、ぜったいうまくいくとまだ確信が持てないときなんかは「試しに一回やらせて?」とお願いすることもあります。


たとえば私が今の店にきてしばらくしたころ、なんとかして売り上げをあげたくて提案したメニューがあります。

当時うちの店は、もともと食事処だった業態から居酒屋寄りに方向性を変えた関係で、アルコールに合うつまみをたくさん用意していました。

しかし彼、修行したそば打ちと天ぷら以外はほんっとに専門外なので(決してまずくはないんですが)ずっと居酒屋さんとしてやってきている店には太刀打ちできない。

だったら無理してつまみに力を注ぐより、持ってるスキルを生かした方がいいんでない?と思ったんです。


そこでです。これまでなぜか、通年で手に入る食材を盛り合わせたたった一品しかなかった天ぷらの盛り合わせ。これを、季節ごとに内容を変えてみよう!と提案してみました。

案の定「人がいないのにおれの仕事が増える」「値段が高くなるから注文されない」と反対されたんですが、私は考えれば考えるほどやってみたくて仕方なくて。

で、粘りに粘って「この夏だけお試しで」という形で目玉メニューにさせてもらったんです。そうしたら予想以上に大好評で。

そのまま秋冬も続けさせてもらえたのはもちろんですし、現在もよりパワーアップした形で提供しています。


半信半疑に思われていた提案も、実際にやってみて成果が出ると「意外にこいつ、隅におけないぞ」と思われる。

こうして少しずつ信頼を積み重ねていったことで、結果的にその後も提案を受け入れてもらいやすくなりましたし、任せてもらえる仕事が増えたり、どうしたらいいと思う?と意見を求められることも増えました。

あまり業務に差し支えのない小さなことからでいいと思います。時と場合によっては、お試しさせて!で成果を見せるのはおすすめです。



ほめてくれる人の話には受け入れやすい

うちの夫は現在51歳なんですが、年齢が進むにつれて新しいことへのバイタリティが少しずつ薄れていってるそうなんです。

メニュー開発やアルコールの研究など、昔は熱心にしていたことも、今は「それなりでいいや」みたいなところがあるらしくて。

私としては、できればせっかく習得した技術をもっと生かしてほしいし、探求心も持ち続けていてほしい。

というか持っている技術や知識をブラッシュアップするのって、店を続けていくうえで間違いなく必要な作業だと思うんですよね。


ただそれをそのまんま「頑張りなよ」と言ったところで、やる気になるとはとうてい思えません。

ですので私は日ごろから「あなたの作る〇〇は本当に美味しい!」と頻繁に言うようにしています。

まいにち食べるまかないの蕎麦でさえ、当たり前のように無言で口にすることはしないようにしています。


お客さまから言われるソレももちろん嬉しいと思うんですが、身近にいていちばん厳しい意見を持っている私が美味しい美味しいと言うとけっこう喜んでくれます。

そこで、たまーに付け加えるんです。「せっかく美味しいんだしもっとこんなふうにしたらどうだろう?」的なことを。

そうすると案外あっさりと「そうかなぁ?やってみようかなぁ?」と自発的に動こうとしてくれる。

そして「あれは違う、こうした方がいい」と、ひとりで試行錯誤がはじまるんですよね。


人間、自分をほめてくれる人の言うことには耳を傾けてみようと思うものです。

自分の話を聞かせよう!ではなく、自発的につい聞いてしまう状況を作ってしまうのも、ときにはありだと思います。


長くなりましたが、最後に、私が彼になにか物申すときにいちばん気をつけていることをお伝えして締めたいと思います。それはズバリ、

自分がぜったいに正しいと思い込むヤバイ妻になっていないだろうか?
と自分を省みる、です。

間違っていたらすぐに認める、修正する。

自分をつねに疑い、彼の意見に譲歩できるところはないかを探す。

これができるようでないと、たとえ事業が順調でも、プライベートで良い夫婦関係でいるのはなかなか難しいことを7年間でよーく学びました。


というわけで、これからも仲良く楽しく店を運営していきたいと思います!参考になれば幸いです。


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