見出し画像

[ネタバレなし]3分ポッキリ以後の クレヨンしんちゃん映画 良作私選

夏だ!八月だ!オーガストだ!
7を表すseptem のつくSeptember が九月で8を意味するoct のつくOctober が10月なのはひどく混乱させられる。これは全てローマが悪い。Julius Caesar の誕生した月が七月だったため七月がJulyとなり、彼の後を継いで初代皇帝となったAugustusの誕生月が八月だったためAugust となったらしい。古くから権力者は現実世界を超越し、己の権勢を普遍のものとするために時空の概念についても支配の食指を伸ばそうとしてきたが、まさかこいつらは東のすみっこの島国の人間の語学学習に地味な嫌がらせをしている自覚などあるまい。あーあ、カエサルの野郎。現世に留学生として転生して病院と美容院の発音の違いに苦しまねぇかなぁ。

さて、益体ない悪態はここまでにして、今週のテーマ、2005年以降のしんちゃん映画の傑作について語りたいと思う。
3分ポッキリ大進撃以後、古参のファンの評価を下げてしまったクレヨンしんちゃん映画ではあるが、ひとえに僕から言わせてもらうとこれは本郷監督、原監督、水島監督という、業界きっての御大らの功績の分厚さのために、斬新な挑戦を強いられているためだと感じる。初期テレビシリーズから携わり、大人帝国とアッパレ戦国によって映画クレヨンしんちゃんの人気を不動のものとした原監督からバトンを受けた水島監督のプレッシャーは計り知れないが、彼も凡庸ではなく、これをはねのけた。大人帝国、アッパレ戦国の感動路線の流れをコメディ全振りの焼肉ロードでリセットし、違う面白さを提示したのだ。
これ以後映画の企画性はコメディとファミリー、感動、パニックと一定の型は確認できるものの、前回の流れを汲まない挑戦が見受けられる。
しかし混迷の映画シリーズである一方で、確実に良作と呼ぶにふさわしい作品は存在する。今回はしんちゃん映画を離れてしまった旧ファンにこそ見てほしい近年のしんちゃん映画傑作私選である。

『ガチンコ!!逆襲のロボとーちゃん』(2014)

謎の組織によってロボットにされてしまったひろしを中心に野原一家の絆を描く。
文化庁メディア芸術祭アニメーション部門優秀賞を受賞した。これはアッパレ戦国以来十二年振りの快挙である。
正直、ひろしがロボットになるというだけでぼくは絶対面白いじゃん!と信じて疑わなかったが、期待を超える作品であった。
ネタバレしたくないのであんまり語りたくないが、突然ロボットになり簡単には受け入れてもらえないひろしの切なさやそれを乗り越えて再び家族として絆を結ぶ感動、さらにそれを揺さぶる衝撃の事実、と企画性および脚本の質の良好さが高いレベルでマッチしておりすばらしい。
とりあえず観て。本当に。

画像1

『オラの引越し物語 サボテン大襲撃』(2015)

ロボとーちゃんの感動路線から一転、モンスターパニックものである。そして、舞台は春日部ではない。ひろしの転勤により野原一家はメキシコへ移住することに決まり、移住先の街で栽培される特殊なサボテンを軸に彼らのはちゃめちゃな冒険が始まるといった内容。今作の魅力はゲストキャラクターだろう。人食いサボテンに占領された街を舞台に、排他的だが、街の復興に情熱を捧げる町長、かませ犬かと思いきや地味に強い脇役保安官。臆病な自分を乗り越えて最終決戦で覚醒するレスラーなど野原一家の活躍を食いに行くほどの濃いメンツである。何より驚くべきは興収、なんと22.9億円である。商業的な売り上げが映画の質を担保するとはいうつもりはないが、売り上げだけで言えば歴代首位。ロボとーちゃんの評価によりシリーズへの期待が高まった背景も推測できるが、今作は前作とは別方向で満足できる。

画像2

『爆睡!ユメミーワールド大突撃』(2016)

巨大な魚に一飲みされる夢をキッカケに春日部市民たちはユメミーワールドへ迷い込む。人々はこの夢の世界の魅力に取り憑かれて行くが、ある日魚の体外へ放り出された人々たちはユメミーワールドのおどろおどろしい光景を目の当たりにする。そして、この世界で見せられる悪夢によって気力を失って行く。
今作ではカスカベ防衛隊に新メンバー(ゲスト)貫庭玉サキが加入する。母を自分のせいで死なせてしまったサキはこれをきっかけに悪夢を見るようになり、彼女を救うためにしんのすけたちが奮闘するというストーリーだ。
母親の在り方をサキに説くみさえや友人を救うために危険を顧みないカスカベ防衛隊の姿は必見である。

画像3

さて、以上近年の映画クレヨンしんちゃん傑作私選。いずれ一つ一つ取り上げたい良作ばかりなので、シリーズを離れてしまった人たちにこそ、ここで挙げた作品は是非観てもらいたい。やっぱりクレヨンしんちゃん映画は最高を超えた最高なのである。

(kobo)

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?