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9.5坪・5名で年商2億円の弁当店から学ぶ、高収益型デリバリー&テイクアウト専門店を開業する方法

9.5坪・5名で年商2億円の弁当店から学ぶ、
高収益型デリバリー&テイクアウト専門店を開業する方法

皆様こんにちは、
フードビジネスコンサルタントの小林です。

前回、前々回続けて記載した、
フードデリバリーマーケットの考察と攻略法
について、
沢山の方にお読みいただきありがとうございました。

フードデリバリーやD2Cなどのビジネスは、
既存の実店舗ビジネスの一部を代替しながら、
今後も成長し続ける可能性が高いマーケットです。

コロナで出口の見えない実店舗の苦戦に加え、
こういったポテンシャルの高さから、
大手企業のデリバリー参入も増加してきました。

ダイヤモンドダイニングやWDIなど専門性が高い飲食店グループでも、
ゴーストレストラン事業に積極的に取り組んでおり、
順調に店舗数、売上ともに増加しているようです。

また昨年、FRチェーンの「デニーズ」が
新宿にデリバリー&テイクアウト専門店を出店して以降、
「伝説のすた丼」や「王将」そして「すかいらーくグループ」まで、
デリバリー専門店業態の開発を推進している状況です。

ただ一方で、デリバリーマーケットへの理解が
業界全体として進んでいないなか、
大手企業のデリバリー専門店でも苦戦しているところが多いようです。

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こちらは以前の記事でも紹介しておりました
デリバリー展開のフェーズ別課題と解決策をまとめたものですが、
大抵の場合は苦戦している店舗を見ると上記の課題に当てはまっています。
(既存店・専門店は便宜上の定義ですので、
専門店でもStage1、2に課題を持つケースがほとんど。)

デリバリー専門店設立・開業のメリットとは?

デリバリー専門店開業のメリットとしては、

1)立地にこだわらず出店可能
⇒2等立地でも成立可能なため、
相対的に家賃比率を下げられる

2)小規模かつ簡易な店舗として開発可能
⇒ほぼ厨房のみの簡易な店舗で開業でき、
初期費用を抑制できる

3)調理(配送)オペレーションに専念できる
⇒ホール接客等がなく(少なく)、
オペレーションも簡素なため人件費を抑制しやすい

4)ブランド開発・展開が容易
⇒実店舗を有する必要がないため、
新ブランド・業態の開発・展開が実施しやすい

といったところが、一般的な認識かと思います。

要するに、初期費用・運営コストともに抑制しやすく、
ある程度立地や規模等を考慮せずに開業できるということですが、
一方で、こういった開業パターンだとデメリットもあります。

1)ブランドの初動認知が取りづらい
⇒店頭通行等へのアピールが弱く、
認知に時間が掛かるケースが多い

2)商品自体での差別化が困難
⇒タッチポイントが少ない分、
提供方法での差別化や特徴のアピールがしづらい
(カテゴリー別でトップのマインドシェアや、
高いブランドイメージがある企業に集中)

と、マーケティング面におけるデメリットの解消が非常に重要であり、
ここで苦戦している店舗が非常に多い印象です。

そんななか、クライアント企業のなかに、
9.5坪・5名体制で年商2億円を売り上げる
デリバリー&テイクアウト専門店があります。

一見どこにでもあるような弁当店が、
何故このような成果を出すことができたのか?

今回はそのあたりの取り組みから、
デリバリー専門店の成功のポイントを解説していければと思います。

どこにでもある弁当店が、設立3年で9.5坪・スタッフ5名・年商2億円のデリバリー&テイクアウト専門店に成長した理由

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まず、現状の成果は上図の通りで、
年商   2億円
店舗面積 9.5坪(坪月商175万円/坪)
スタッフ 5名(厨房4名+レジ4名)
人時売上 17,000円/h
と、売上もさることながら、
非常に高い効率・生産性で運営されています。

店舗の立地は郊外駅前から徒歩6分、
駅前には弁当店やFF業態の大手が多数存在する、
決して恵まれたアクセスではありません。

当初普通の弁当店としてオープンし、
月商300万円程度と苦戦していた店舗が、
何故年商2億円を超えるまでに成長したのか?

取り組まれた内容としては、
以下の通りです。

Step1)”炭火焼き専門店”へと業態転換と商品戦略の見直し
Step2)テイクアウト&デリバリーのマルチチャネル展開
Step3)ターゲット別マーケティングの強化
Step4)製造能力強化のための事前調理の仕組み作り
Step5)周辺商材へのマルチブランド展開


上記ステップをもう少し詳細に見ていきましょう。

普通の弁当店から”炭火焼き専門店”への業態転換と商品戦略の見直し

まず取り組まれたのは、
どこにでもある弁当店から、
”炭火焼き専門店”への業態転換でした。

基本的に中食マーケットでは、
家庭調理比率が下がっている商品や、
家庭調理できない商品のニーズが高まる傾向にあります。

そんななかで、”炭火焼き専門店”という、
家庭ではできない本格的な調理・製法に加え、
さらに店内仕込み・店頭炭火焼き・出来立て提供を軸に差別化。

コンセプトも、男性向けのボリューム感×おしゃれ
といった、当初非供給マーケットだったところにポジショニング。

メニューは鶏・豚・牛のステーキをメインに、
仕込みプロセスを共通化できる揚げ物商品などをラインナップし、
下限600円から上限1,000円の中心価格775円と、
競合チェーン等と比較すると一つ上の価格帯です。
(中心価格=√上限価格×下限価格)

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通常30%前後の原価率に対して、
牛関連商品や季節商品などを40%前後と高原価で提供し、
集客商品のハイコスパ化と収益商品との粗利ミックスを意識したMD展開。

こういった戦略の見直しによって、
より集客力の高い業態へと転換されました。

マルチチャネル展開とターゲット別マーケティング

次に取り組まれたことは、
テイクアウト、デリバリーのマルチチャネル展開でした。

現在こちらの店舗では、
・テイクアウト
・ロケ弁、事業所向けデリバリー
・家庭向けデリバリー
と、2チャネル+3ターゲットで展開しています。

持ち帰りだけでなくデリバリーも、
というところまでは他店と同様ですが、
そのうえでデリバリーもターゲット別に最適化。

いわゆるUberEats等の家庭向けデリバリーだけでなく、
事業所やロケ弁などの法人向け予約注文型デリバリーにも取り組み、
徹底的なデリバリー需要の獲得を推進。

プロモーション面でも、
デリバリーポータルサイトの活用のみではなく、
自社サイト+PPC広告やSNSからの受注も強化しており、
現在ではポータルサイトと自社サイト経由が半々程度となっています。

こういった、マルチチャネル展開とターゲット別プロモーションで、
3ヵ月後には月商2,000万円弱まで業績を伸ばされました。

事前調理の仕組み作りによる当日調理の圧縮及び厨房の生産性向上

売上が順調に伸びてきたなかで、
問題になったことは調理の生産性でした。

食数にして約600~1,000食/日程度を、
9.5坪・4名体制で製造することになるため、
通常の生産体制ではピークタイムの製造が間に合いません。

そこで、前日までに必要数の仕込み・半調理を済ませ、
当日は品質向上のための最終加熱調理のみを行う、
いわゆる事前調理の仕組みを導入されました。

前日:仕込み⇒半加熱調理(スチコン)⇒冷却・冷凍⇒保管
当日:最終加熱調理⇒盛付⇒提供
のオペレーションイメージです。

上記のような調理フローの見直しによって、
当然当日のピークタイムの対応力は上がりますが、
さらに分散していた仕込みを集中作業できるため、
仕込み作業自体の効率も飛躍的に向上したことで、
人時売上は17,000円/hへ。

また、人員数を増やすことなく売上アップを実現できたことで、
人件費率も10%台と店舗ビジネスでは異次元の水準で推移しており、
営業利益は6,000万円以上残るというドル箱店舗となりました。

メインブランドを軸に周辺商材へとマルチブランド展開

厨房の生産性は向上しさらなる売上拡大の準備ができた一方で、
既存ブランドの頭打ちがマーケティング上の課題となってきました。

そこで、MS付加による売上向上と、
・既存顧客の利用頻度アップ及び離脱率ダウン
・既存ブランドで取り込めない層へのアプローチ
の2点を強化するために、
炭火焼の周辺商材である”焼き魚”の専門ブランドや、
既存ブランドをブラッシュアップしたハイグレードブランドなど、
既存ブランドを軸としたマルチブランド展開を実施。

さらに現在では、UberEatsなどの家庭向けデリバリー向けに、
ゴーストレストランの複数ブランド展開なども行っています。

こういった対策によって、
厨房の効率を落とすことなく、売上のポテンシャルを高めることで、
集客力・持続性の高い業態運営を可能にされています。

さいごに

ここまで、デリバリー&テイクアウト専門店で
成功されている店舗の取り組みを解説してきました。

上記より、今後デリバリー専門店の開業を検討されている方
に抑えていただきたいポイントは、
1)中食でニーズのある商品・ブランドの開発
2)実店舗を軸としたマルチチャネル展開
3)ピークタイムの生産能力を高めるための調理体制
上記の通りとなります。

一般論として立地・店舗にこだわらず
簡易に開発できるデリバリー専門店業態だからこそ、
上手く売上・利益を獲得できていないという店舗は、
先行・後発店と差別化できるコンセプト設計や、
実店舗を活用したブランディング・マーケティングなど、
あらためて見直してみてはいかがでしょうか?

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