マガジンのカバー画像

with foods 誰かと、 ときにはひとりで。

60
思い出の中には食べ物がある。 そんないくつかの文章を書き散らかしています。
運営しているクリエイター

2014年5月の記事一覧

電車おやつ。

神奈川県にある海辺の小さな街で生まれ育った。
いちばん近い都会は横浜で、ちょうど電車で30分。東京までは1時間。
小さい頃は横浜に行くことも、ちょっとしたお出かけだった。
それらの都会へ運んでくれるのは紺とクリーム色の電車。
4人がけのボックス席だったので、
小さな子ども3人と両親だとちょうどいい感じだった。

駅は改札を抜けると広めの通路があって、そのまままっすぐに行くと、
「裏駅」と呼ばれてい

もっとみる

心意気はチロルチョコ

ある製薬会社のタイアップの仕事を2年間ほどしていた。
タイアップの対象になる商品は、その会社の看板商品で、
女子中学生向けの雑誌において、認知度を上げたいというのが目的だった。
新商品ではないので、そんなに「売れ、売れ」感はなく、
「まぁ、若いコにも親しんでもらえれば」くらいのノリで、
クライアント側からはかなりの自由が与えられていた。
なので、その商品のキャラクターを作って、
読者の女のコと絡む

もっとみる

コーンスープの日。

白いごはんとお味噌汁はセット。
それは毎日のお約束だけれども、ときにはその約束が破られることもある。

例えばハンバーグ。つるんとなめらかな白い陶器のプレート。
粗みじん切りの玉ねぎいっぱいのハンバーグがごろんとのっていて、
付け合わせにはにんじんのグラッセ、ほうれん草のバターソテー、
そしてポテトフライ。

例えばステーキ。楕円形の木枠にはめ込まれた黒い鉄製のプレート。
厚切りのお肉がどんとのっ

もっとみる
モヒートの夏。

モヒートの夏。

モヒートは好きなカクテルのひとつ。
レシピはお店によって違うと思うけれど、
ミントの葉をすりつぶして、ライム、砂糖を加え、
ラムを注ぎ、ソーダで割る。
たくさんのクラッシュアイスを入れて、
キリッと冷えた飲み口を楽しむお酒。
キューバのハバナが発祥とされていて、
映画『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』でも、
このお酒が登場し、日本でもちょっとしたブームに。
今ではすっかり定番的なカクテルになった

もっとみる

フィリピンスタイルビア。

缶ビールを冷蔵庫から2本出してきて、テーブルの上に置く。
ぷしゅっといい音をさせて缶を開け、
グラスに注ぐ。2本あるのは、1本はすぐに飲んでしまうから。

彼と最初に逢ったのは7月のヘルシンキ。

仕事での通訳兼コーディネーターとして、
ヴァンターの空港に迎えに来てくれたのが最初の出逢い。

フィンランド生まれながら、
彼の父親が大使館の仕事をしていたことで、
ちいさい頃からいろいろな国に住んでき

もっとみる

温かい豆腐があれば。

終電。
運良く座席に座れた人たちは、
目を瞑っているか、手元のスマートフォンや携帯の画面を見ている。
飲み会帰りのビジネスマンや学生もちらほら。
まぁ、あとひと駅。ちょっとの辛抱。
ドアが開き、無意識に階段の方向を向いて歩き出す。
毎晩のように繰り返す習慣。
自動改札を抜ける。さらに階段を上って地上に出る。
四角く切り取られた出口に濃紺の夜の空。

ふぅ。深呼吸を1回。

横断歩道を渡って、深夜ま

もっとみる

幸せは冷凍庫に。

小学生のときは給食だったけれど、中学校に上がるとお弁当になった。

上の兄と姉もお弁当だったので、母親は毎日3人分のお弁当を作っていた。

そんなある日、我が家に冷凍庫が導入された。

冷凍冷蔵庫ではなく、冷凍庫。

キッチンのコンロや流しとは逆側のコーナーに、

冷蔵庫と少し離れた場所にスペースが作られ、

冷蔵庫よりやや小ぶりな冷凍庫が置かれた。

ちなみに我が家は、壁が造り付けの家具になって

もっとみる

「扉」でホットドッグ&ミルクセーキ。

鎌倉の海水浴場の件で、鳩サブレーの「豊島屋」が話題になっていたので。

鎌倉駅前のロータリー。
ブルー系と赤系の京急バスとオレンジと黄色系の江ノ電バス、
それに黒塗りのタクシーが止まっている。
駅の改札を背にして左手に横浜銀行、そして鳩サブレーの豊島屋、
マクドナルドの順に並び、不二家があって、
その横の赤い鳥居をくぐると、鶴岡八幡宮へと続く小町通りが始まる。

駅前だけであって、ここの豊島屋はい

もっとみる

マッコリは2本まで。

ときどきごはんを一緒に食べる友達がいる。

とはいっても、学生時代の友人でも仕事関係でもなく、
趣味も違う10以上も年下の男のコ。
彼はパソコンを買いに行ったカメラ&家電量販店で知り合った。
パソコン売り場のアルバイトの店員。そのとき彼は大学生で20歳だった。
ずっとMacを使っていたのだけれど、
他のパソコンとのあまりの互換性の悪さに、
Windowsに切り替ようと思っていた。
何を買えばいいの

もっとみる

駅前のなんでもない中華屋にて。

19時を回ってようやく暗くなってきた。
もう夏がすぐそこまで来ている。
日曜日の夜。昼間は買い物客で賑わった街も、
夜の訪れとともに人気が消え、
そよぐ風には、冷たい湿気が混じっている。

駅前には小さな広場があり、
線路は高架になっていて、その下には駅を挟むようにして、
両側にコーヒー屋さんや居酒屋など数軒の飲食店が並ぶ。
その中華屋はもう何十年も前からそこにある。
ドアはずっと開けっ放しで「中

もっとみる

ピーナッツクリーム&チョコスプレッド。

幸せになる食べ物ってあるよね。

焼肉やカレーライス、ハンバーグやナポリタンもそうだけれど、

もっとちいさな幸福というか、

「むふふふ」ってひとり笑っちゃうような。

ピーナッツクリームとチョコスプレッドは、

そんなプチ幸福感を連れてきれくれる食べ物。

トーストを食べるときにいちごジャムやバター、蜂蜜あたりは定番だけど、

そこにピーナッツクリームやチョコスプレッドが加わると特別になる。

もっとみる
ドーナツショップで語ろう。

ドーナツショップで語ろう。

1日の時間があっという間に過ぎてしまうと感じるようになったのは、
いつ頃だろうか? 朝、起きてメールのチェックして、
何カ所かに電話して、メールを返したり、
やり取りをいくつかしただけなのに、
気がつけば夕方…ということがよくある。
何もできていない。日々の仕事をこなすだけで精一杯で、
自分がやりたいことが、何もできていないと感じる。

でも、突き詰めると、その時間のなさや忙しさを理由にしているだ

もっとみる