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あそどっぐインタビュー7日目 その4 「あそどっぐにとっての、自分の身体とことば」

あそさんは産まれたときから”あそどっぐ”だったわけじゃない。
が、私がはじめて会ったときすでに、あそさんは”あそどっぐ”だった。
私は”あそどっぐ”なあそさんと、阿曽太一なあそさんと、そのあいだにいるあそさんを、あそさんに見せてもらっている。

(2020年4月22日収録分)

あかほし(以下「ほし」): あの〜、ギャオで呼吸のリハビリのシーンがあったじゃないですか、あそさんの。(注1:文末参照)
あそどっぐ(以下「あそ」): うんうん。
ほし: その、あそさんのネタを初めてみたときは、そういう、なんかしら大変な思いをしてるんだろうなって想像してたんですけど・・・
あそ: うん。
ほし: あそさんと個人的に会うようになってから「あれ・・・もしかしたらそういうのないのかな?」って思いかけてたから、番組みて、ああやっぱりそうだったかと思って。
あそ: うん、そうだよねやっぱね。うん。
ほし: う〜ん。なあ。なんかでも、そういうところって、その〜、知らないから・・・
あそ: うん。
ほし: 聞き方がわからない。その〜、なんだろう。そういう、う〜ん・・・大変な思いしてるのとかを・・・
あそ: うんうん。
ほし: 「あるでしょ?」って聞くのも変じゃないですか。
あそ: (笑)うん。
ほし: なんかその・・・あったとしても、それがなんなのかってこともぜんぜん検討つかないから、インタビューでどんなふうに聞けばいいかも分かんないなあって。
あそ: そうね。聞かれてもこっちもどう答えていいか・・・わかんないもんね。まあそれも日常だからね。
ほし: うん。
あそ: そのね。呼吸の状態がわるいとか、そういう身体がわるくなっていくっていうのも、ぼくにとってはずーっと子どもの頃から当たり前にあることやから。まあねなんかね、大変・・・みんなが思ってるほど大変ではない、たぶん。
ほし: あ〜そうなんや。
あそ: うん。だからごくごくふつうというか・・・。人がある程度5,60ぐらいになって、だんだん老いていくのに、感覚は似てるのかもしんない。
ほし: あ〜。
あそ: ぜんっぜんかわいそうやないやん?
ほし: うんうん。
あそ: それがぼくの日常なんよね。・・・で、だんだんからだはうごかなくなって、確実にまあ死にちかづいていってるんだろうけど。それは・・・かわいそうなことではないし、その人にとっては当たり前のことやからね。聞かれても答え・・・るのもむずかしいもんね。
ほし: あ〜。
あそ: うん、だからそういう感覚じゃないかなあ。
ほし: そっかあ。
あそ: うん。
ほし: わかりやすかった。
あそ: うん。
ほし: あそさんがその、自分の身体のことを、わかったのっていつなんですか?
あそ: いやもう物心ついたころから、まあ身体よわいんだなっていうのは、うん。言われてたよ。
ほし: あ〜。
あそ: 言われてっていうか、分かってた。で、まあずっと「長生きはしないんだろうな」っていうふうには思って、子どもの頃から生きてたね。
ほし: あ〜、そうなんだ。
あそ: うんうん。
ほし: そっか・・・でもそれもまた、今話してくれたこととおんなじように、いわゆる健康な人が「それは大変だ!」って思うような感覚ではなかったってこと・・・か?
あそ: そうだね、うん。
ほし: あ〜。
あそ: 「そういうもんなんだ」って生活してるから。
ほし: ああ、そうなんだ。
あそ: うん。
ほし: そうかあ。でも、あそさんとおんなじ病気でも、なんか、その、ちっちゃいときからそうだったとしても・・・
あそ: うん。
ほし: その〜・・・なんだろう、「自分はそうなんだ」っていうことを、その〜スッとなんか受け入れられない人もいる〜・・・んすかね?
あそ: いる〜・・・だろうね。
ほし: あ〜。
あそ: う〜ん、そうだろうね。う〜ん。
ほし: そっかあ。
あそ: うん、いろんなこと諦めちゃってる人はいるよね。「こういうもんだから、できないしやらない」・・・
ほし: うん。
あそ: っていうふうには、ぼくの場合はならなかったから、環境がよかったんだろうね。たぶんね。周りの大人とか友達とかが、いっしょにいろんなことをやらせてくれたから。
ほし: うんうん。あそさんのネタをはじめてみたとき・・・
あそ: うん。
ほし: なんだろうなあ。そこの受け入れ方が、その〜、なんだろう。自分の状況というか、状態というか、そういうものの受け入れ方ハンパねえなあって思って。それがすごい衝撃だったんですよね。
あそ: う〜ん、うんうん。
ほし: その〜、そこが、突き抜けてないと、あんな客観的ちゅうか。ああいうネタってつくれない。
あそ: そうだよね、なかなかねできないよね、たぶんね。
ほし: だからすっげえあたまのいい人なんだろうなって思いましたよ。
あそ: (笑)あたまがいいかはわかんないけど、受け入れは・・・ねえ、出来てる方かなって思うね。
ほし: うん。なんでそんなふうに・・・?すげえなあ。そっかあ。わかんないなあ、なんか、いま想像力を総動員してるけどねえ。
あそ: うんうんうん。
ほし: 「え、えああ?」ってなってる(笑)
あそ: なんかうちのまあ、両親に、あれかなあ。感謝っていうか。
ほし: うんうん。
あそ: ぼくが障害持ってることに対して、こう、ぼくの人生諦めないでいてくれた・・・のよね。
ほし: うんうん。
あそ: うん、だからまあ、なんていうかなあ〜・・・・「障害があるからしょうがないよね」とかじゃなくって、テストで悪い点数とったら、ちゃんと怒られてたし。うん、でまあ・・・大会とかでも「なんでもいいから優勝しろ」って。
ほし: (笑)そうなん?
あそ: 「やるからには1位をめざせ」・・・っていうのがうちの父親の口癖だったから。
ほし: へえ。
あそ: 「障害あるからしょうがないよ」っていうかんじの大人が周りにだれもいなかったんだよね、それも親戚もふくめてね。
ほし: うん。
あそ: 親戚とかで、「かわいそう」とか、ぼくのことをとくべつ扱いする人・・・だれもいなかったんだよね、ホント。
ほし: あ、すーっごいっすね。
あそ: うん・・・それだから、周りの友達と近所のともだちも、まあふつうに接してくれてたのかもしんないけど。
ほし: あぁ〜。
あそ: だからじゃないかなあ?
ほし: へえ・・・そうかたしかインタビューのはじめのほうに、「学校には苦労してきた」って。小学生でしたっけ?なんか・・・
あそ: そうそう。
ほし: のときに親が帰ってきて泣いてたってはなし。(「阿曽太一、誕生」)
あそ: うんうんうんうん、そう。
ほし: いいご両親なんだなあと思って。
あそ: うんうんうんうん、そうなんだよね。ホント・・・「障害があるから」って言って社会で・・・なんか、ちがう扱いを受けると、親は本気になって怒ってくれてたし・・・
ほし: うんうん。
あそ: うん。だからまあ、それ・・・かなあ?
ほし: デカそうですね。
あそ: うん、それはデカい気がするね。「じぶんの今のままのからだで、ふつうに生きていっていいんだ」っていうのは、それで教わったのかな?
ほし: へえ〜・・・すごいな。じゃあそっか、その〜どこかでそういうイヤな思いをしたときも、怒る活力ももらえますよね、きっと?その、まわりが・・・
あそ:  うんうん、そうだね。ホントホント。で、怒って、抗議することによって、1回なんか良い方向に回転(原文ママ)することが多いのが、子供心ながらみてたかなあ。
ほし: そうなんや。
あそ: うん。
ほし: へえ〜、そうかあ。そのへんかなあ?あそさんの、なんかこう・・・引っ込み思案さと、その、アグレッシブさのギャップがすごくて、どういうメカニズムなんこの人?とは思ってた(笑) (「実家では無口なあそどっぐ」)
あそ: (笑)そうだよね、自分ではよくわからんよね。
ほし: ねえ、ふつうの、日常の・・・その、会話とか、友だちづきあいとか、めちゃめちゃ引っ込み思案だけど・・・
あそ: そうなんだよね(笑)
ほし: 「これは」っていうときに、うごくじゃないですか、例のウンチ先生のときもそうやし。(「怒りのホスピタル(修正版)」)
あそ: うんうんうん。
ほし: 「なにその振り幅?」って思ってきたけど・・・
あそ: (笑)
ほし: そういうことか。
あそ: うん、たぶんそういう・・・そんなかんじじゃないかなあ。
ほし: なんかね、勝手に妄想してたんだけど、今日。
あそ: うん。
ほし: あそさんってその、歩いていって人にちかづくとか、できないじゃないですか、じぶんで。
あそ: うんうん。
ほし: 触りたいなーって思ってもさわれなかったりとか。
あそ: うん。
ほし: でもそのなかでその・・・ねえちゃんとのケンカの仕方とかもそうだけど(笑) (「生き延びるためのM」)
あそ: うんうん(笑)
ほし: 声とかことばっていうのが、あそさんからじかに発信できる、その〜・・・ツールというか。
あそ: うん、そうだよね、うん。
ほし: で、なんかお笑いはその〜「話す」っていうところを、なんかこう、みんな接点にして集まってきてるじゃないですか。しゃべる方も聞く方も。
あそ: うんうんうん。
ほし: そこでつながれる・・・現場に居ることができる・・・
あそ: うんうん。
ほし: から、あそさんはお笑いやってんのかなあって。
あそ: うん、そうかもしんないね。それを意識してはじめたわけじゃないけど、自分で思ってることを”あそどっぐ”で、こう・・・で、やれるっていうか。その気持ちよさっていうのは、あるんだろうね。たぶんね。
ほし: うんうんうん。
あそ: うん。
ほし: ね。そのなんか、現場に居る感?
あそ: うんうんうん。
ほし: あそさんはどんなふうに考えてます?
あそ: 現場にいる感?
ほし: うん、その〜、なんだろう・・・なんつったらいいかな。あの、『寝た集』でも神社でお参りのとき、「ヘルパーさんが代行でパンパンってやって、自分がやった感がない」って書いてあったじゃないですか(笑)
あそ: うんうん(笑)
ほし: それと・・その、なんだろう、進撃の巨人先輩が、笑ってる(注2)。自分がやったコントで笑ってるっていう・・・その、ダイレクトさというか。
あそ: あああ〜、そうね。ああそれはあるよね。うん。だれもね、そこには入れないからね。
ほし: うん。
あそ: うん、うん。それはあるかもしんないね。
ほし: あ〜。
あそ: 自分でやってる感はすごい、よね、お笑いはね。
ほし: うんうん。
あそ: うん。
ほし: しかも分かりやすく「笑う」っていう結果でみれるからね。
あそ: うん、そうだねホント目の前でね、いましゃべって、その直後に結果がでるからね、わかりいいよね。
ほし: うんうん。なんか話きいてるとお笑いやりたくなるな(笑)
 
注1:数年前、GYAOであそどっぐのドキュメンタリー番組が公開された。現在は視聴できない。機械を用い、口から肺まで空気を送り込む呼吸のリハビリ。苦しさや痛みなどの負荷がかかる。
注2: あそどっぐの高校にいたオールバックの先輩。養護学校のなかで、スタスタ歩きバドミントンのラケットぶんぶん振るなどして異彩を放っていた。進撃の巨人先輩が卒業するとき、その余興に「おまえらなんかやれ」と名指しされ断れず、親友(=相方)とコンビを組んで生まれて初めてのお笑いをすることになった。そのコントで、進撃の巨人先輩は優しい顔で笑っていた。このエピソードは『寝た集』に詳しい。

次回、番外編 「あそどっぐ、ライブデビューする

あそどっぐ
1978年佐賀県生まれ。熊本在住。お笑い芸人。

あかほしあまね
1991年東京都生まれ。『コバガジン』のライター。

前回の記事はこちら 「阿曽太一があそどっぐになるまで・・・!


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