- 運営しているクリエイター
#平野啓一郎
知らなかったとは言わせない 平野啓一郎の『三島由紀夫論』を読む53
何故『英霊の声』なのか
平野啓一郎の『三島由紀夫論』を俯瞰した時、その作品論の主たる対象となる作品が小説に偏り、『わが友ヒットラー』や『サド侯爵夫人』などのわずかな例外を除いて三島由紀夫の最も得意としたところであり一般的にも一部では小説よりも評価の高い戯曲に言及されず、戦前戦中の作品が無視され、そして『仮面の告白』『金閣寺』『豊饒の海』といった堂々たる長編作品に混じって『英霊の声』という
贋物の証拠は? 平野啓一郎の『三島由紀夫論』を読む28
平野啓一郎は「49 『天人五衰』の「創作ノート」」において、
この括弧の中に示された平野啓一郎の解釈は、既に商業出版されている『豊饒の海』幻の五部作について語る井上隆史の『三島由紀夫 幻の遺作を読む――もう一つの『豊饒の海』』と異なる解釈であることから比較検証が必要である。
井上の指摘は「完成作とは大きく異なる内容の最終巻、つまり五巻目のプランが検討されていた」というだけに留まらず、三島由
三島由紀夫の『金閣寺』は天皇なのか?
これが天皇のアレゴリーだったならとても読む気がしないな
三島由紀夫の『金閣寺』の「金閣寺」は「天皇」と交換可能だという話は古くからある。
この考え方に関して私はこれまでそう大きく反対してこなかったし、そもそも論法の違いによってどうともとれるくらいに考えていた。つまりテクスト論的に作者の意図を無視して作品そのものでどう読むかと言えばシンプルに「そんなことは書いていない」とも言えるし、作者の意