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夏目漱石論2.0

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2023年10月の記事一覧

むりせんでええがなそんなもんあほちゃうか

むりせんでええがなそんなもんあほちゃうか

 この行動や感情に名前があるものであろうか。もしまだないとしたらこの行動は「ミスマッチ読書」、この感情は「むりせんでええがなそんなもんあほちゃうか」と仮に名付けてはどうだろう。

 絶対に読めていないと思うのは私だけではなかろう。なんでそんなもん読もうとしたんや、あほちゃうかと思うのも私だけではなかろう。古川緑波は食い物のことだけ書いていればいいのだ。ロシア文学をやった東海林さだおがドストエフスキ

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私は忘れていたが漱石は覚えていただろう 夏目漱石の句をどう読むか①

私は忘れていたが漱石は覚えていただろう 夏目漱石の句をどう読むか①

 次に芥川の、

冴返へる身に沁々とほつき貝

 この句をやろうかと思って、ふと漱石にも、

人に死し鶴に生れて冴返る

 という句があり、松根東洋城、小宮豊隆、寺田寅彦の三人がこの句についていろいろと解釈を示していたことを思いだした。その様子はこの記事にまとめた。

 そしてそういえば子規は「冴返る」で何と詠んでいるのかと確認しようとしたら、松山市の子規の俳句のCSVに出くわして、なんというか、

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田山花袋は、大きなお世話だもの

田山花袋は、大きなお世話だもの

 ここで田山花袋にディスられているのは和辻哲郎である。

 田山花袋という人は「和辻君などは、もう少し謙譲の徳を養ふ方が好いだらうと思ふ」とついつい人を笑わせるようなことを書く。内田百閒、井伏鱒二の系譜の祖が田山花袋と思えばよかろうか。

 田山花袋が基本的に読みの水準に於いて、とても夏目漱石作品に追い付かないことについては既に述べた。

 逆にその追いつかない漱石を基準に和辻哲郎を貶しているので

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駄目な漱石論者たち② 田山録弥

駄目な漱石論者たち② 田山録弥

 これは田山花袋本名での寸評である。論と言うほどのものではないが基本的に間違っているところを指摘しておく。

 まず「心理を描出しやう」として「説明的学究的の弊に堕して居る」と言いたいところが理解できないでもない。これまでの作品、その後の作品と比べても話者の代助の心理に関する言及はかなり抽象度が高く、言い回しが硬直で、理屈っぽく感じられる。

 一読して何が書かれているのか理解できるものはまずなか

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