森見登美彦『夜は短し歩けよ乙女』感想
漫画を読む様な読書体験。時間の流れと鮮やかに描かれる色彩とふっと香る匂い。斜に構えた先輩と全く斜に構えない黒髪の乙女。二人が見て感じる物を交互に楽しむ。人と神様が当たり前の様に共存する世界。
読んでいて楽しい。
非現実な現象も何故か受け入れて仕舞う説得力が有ります。すごいです。
時間の流れ
夜は短し歩けよ乙女は第一章「夜は短し歩けよ乙女」から第四章「魔風邪恋風邪」で構成されています。
第一章、二章、三章、四章は順に春、夏、秋、冬と一年間を進んで行きます。
章の中でも丁寧に時間が描写されており、読み易いです。
個人的に不意を突かれた部分
第三章「御都合主義者かく語りき」では学園祭のドタバタ劇が沢山の登場人物を写しながら進行します。
神様の話題が第三章だけ出て来ないのは神無月だからだろうか?と思い、なれば次の章では師走に相応しいパニックが待っているだろうと予想しました。
待っていたのはタチの悪い風邪で閑散とした京都を舞台に黒髪の乙女が病人達を見舞い巡って行く姿と風邪を引いた時に見る出鱈目な夢の話で、すっかり騙されてしまいました。
第四章「魔風邪恋風邪」は奇しくも風邪が感染爆発する話です。一方で人と人の繋がりを風邪の連鎖と言う形で感じる事が出来ます。
第四章から先輩の言葉を引いて終わりに致します。
締めくくりにあたって、一つ言葉を贈っておく。
人事を尽くして、天命をまて。
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