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初一人暮らし、入学式前夜。オヤジとの焼肉は醬油味だった

6畳ワンルームへの引っ越しなら、大した量じゃない。
約20年前、大学入学と同時に上京、一人暮らしを始めました。節約のため、トラックを借りて両親と私の3人で荷物を運びます。

CDコンポやテーブルセットと共に、リサイクルショップで買った14型のブラウン管テレビも新居へ。

そういえば実家に住んでいた時は、何度交渉しても自分の部屋にテレビを置かせてもらえませんでした。私の父はザ・昭和のオヤジで、「テレビは1家に1台」のマイルールを大切にしていました。

小学生の時、なぜか父と「1年間の天気を記録し続けられるか」という話になり、「絶対無理だ、もし達成したら何でも好きなものを買ってやる」と言うのでテレビを買ってもらおうと毎日毎日、しまいには1年分を記録してのけたのですが(我ながらすごい、自分)、結局その時も色々と理由を付けて買ってくれませんでした。よくグレなかったな、自分。

ですからこの14型テレビは、私にとって自由の象徴とも言える存在!!

のはずなのに、

いざ引っ越しとなると、あんなに憧れていた「自分の部屋のテレビ」も大して嬉しくない。

夕方に引っ越しを終えると、母は実家に帰っていきました。翌日の入学式は父と私で出ることになっており、残された二人。夕食、どうしようか。

母に甘えっ放しでほとんど料理したことが無い私たちなのに、なぜか外食せずに自分たちで料理しようと、スーパーへ。「とりあえず、めでたいから肉にするか!」くらいのノリで適当に食材をカゴに入れていく親子。

不慣れなので思っていたより買い出しに時間がかかり、ようやく帰宅。

いざ料理するか、という時になって、この家にホットプレートなど無いことに気付きました。

仕方ない、フライパンで焼こう。

やっと準備が終わり、さあ食べよう、という時になって、この家に焼肉のタレなど無いことに気付きました。

仕方ない、醬油をかけて食べよう。

。。。

パリパリで醬油味の肉。当然、旨くなんかありません。

でも「新居で醬油味の焼き肉を食べる男たち」というシチュエーションが何だか可笑しくて、オヤジと二人で笑いました

今思い返してみると、たぶんこの日から段々と「主従」に近かったオヤジとの関係が「男と男」に変化していったのだと思います。

あの時の私は、これから始まる全く新しい生活に何とも言えない気持ちを抱いており、家族とのこれまでの思い出にじんわり浸る余裕なんて皆無! でしたが、オヤジからすればずっと手元で育ててきた長男と離れて暮らすわけで、色々と感じていたのかな。今、自分にも息子ができて、何となく想像できるようになりました。

このnoteを書くことで、醬油味の肉と、あの時の自分の気持ちを思い出し、さらにオヤジの気持ちに思いを馳せることができました。

全然カッコよくない思い出だけど、せっかくなので大切にしていきたいと思います。

※素敵な写真はみんなのフォトギャラリーよりカナエナカさんの作品です。青空と桜がとても綺麗! ありがとうございます!

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