イランと米国との仲が悪いわけ|気になる中東

今年(2020年)1月、米軍のドローン兵器によりイラン革命防衛隊のソレイマニ司令官が殺害され、両国間の緊張が極度に高まった。その後のコロナ禍により、米国、イランともに大変な状況となり、結果的に緊張緩和されていることは不幸中の幸いと言えるかもしれない。

米国はこれまでイランに長く重い経済制裁を科し、かつてブッシュ(子)大統領はイラン、イラクと北朝鮮を「悪の枢軸」(Axis of Evil)と呼んだ。そしてイランが平和目的と主張する核エネルギー開発が兵器転用されていると強い疑いを抱いている。

なぜ両国の関係はこんなにも悪いのか。またイランは米国がそこまで敵視するほどの邪悪な国なのだろうか。

かつて1960~70年代、イラン国王シャー・パーレビは米国の傀儡(かいらい)政権と言われるほどであり、イランは中東における米国の重要な足掛かりだった。ところがその足下でシャーの圧政に対する民衆の不満がマグマのように溜まっていることを米情報機関は全く見抜けず、1979年にイラン・イスラム革命が勃発。パーレビ国王は国外亡命し、イスラム教最高指導者ホメイニ師による世界初のイスラム国家が樹立された。加えてテヘランの米大使館を学生らが占拠し、約1年3ヶ月にも渡って人質を取られるという大失態まで起きた。この米大使館人質事件については、ベン・アフレック主演の映画「アルゴ」に詳しい。

その後のイラン・イラク戦争、イラクのサダム・フセイン独裁政権による湾岸危機・湾岸戦争、そしてフセイン排除後のイスラム国(ISIL)台頭と、淵源をたどると、パーレビ失脚とイスラム革命樹立を許したことが米国の中東政策上の大きな汚点となっており、それがゆえにイランは米国にとっての「因縁の仇」となっているように感じられる。

私は、国際政治はTVドラマのようにきれいにどちらが善、どちらが悪とは言えないと思っている。日本は西側諸国の一員であり、日米同盟が重要であることはもちろんだが、何でも米国に同調してイランを「悪の枢軸」と切り捨てて良いのか、大きく見たときに世界の安定と平和にとって何が重要かを、見極めた上での外交努力をしてもらいたいと思っている。

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