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MVNO政策の場当たり感|ICTと社会

※見出し画像は日本通信株式会社のホームページから(日本通信の歩み)。

総務省がNTTドコモに、日本通信への通話回線レンタル料引き下げを求める裁定を行った。

自らインフラ設備を構築して携帯電話サービスを提供する通信キャリアをMNO(Mobile Network Operator)と呼び、NTTドコモ、KDDI(au)、ソフトバンクの3社に加え、今年4月より楽天モバイルが加わった。これらMNOは各社それぞれが全国数十万局の基地局とそれらを結ぶ光ファイバネットワーク、通信制御やユーザ認証・管理、課金などを行うコアシステムを有している。さらにそれらを24時間365日運用し続け、災害時に備えた二重化、三重化を行い、そして概ね5年ごとに登場する新たな通信方式に対応すべく研究開発を行っている。これにより各社とも毎年数千億円に上る設備投資を行っているのだ。

このような事業にはかなりの財務基盤や技術基盤が必要とされ、簡単に参入することはできない。しかしそれでは日本の通信事業は4社の寡占市場となり、参入障壁が高いと内外の批判を浴びる。そこで登場したのがMVNO(Mobile Virtual Network Operator)という仕組みだ。ひと言で言えば卸再販である。MNOからネットワークの卸しを受け、小口再販する訳だ。

日本通信は、PHS時代からのMVNOの老舗。冒頭のニュースは音声電話サービスの話なので、データ通信全盛の現在では大きなインパクトは無いと思われる。「レンタル料」と言っているのは、卸し料金のことだろう。

このような通信サービスの卸しは昔からあり、固定通信の時代にもVAN(Value Added Network)などといって、NECや富士通、日本IBMなどのシステム・インテグレータ(SI)が企業向けにコンピュータシステムとセットで、データ通信の再販をしていた。しかし通信サービスの料金が下がり、再販で利ざやが稼げなくなり、90年代にはこういったビジネスは成り立たなくなった。

同じようなことを、今度はモバイルの世界で政策的に実現したのがMVNOだ。古株の日本通信は別格として、2014年頃から「格安スマホ」「格安SIM」という形で、イオンやLINEなども参入し、大きな広がりを見せた。

しかしながら2018年に菅義偉官房長官による「携帯電話料金は4割下げられる」発言により、MNOが料金値下げに動いたこともあり、MVNOビジネスの収益性は低下。フリーテルSIMやDMMモバイルが楽天MVNOに身売りしたのを始め、U-mobileも新規加入受付を終了するなど、店じまいする事業者が出始めている。MNOに新規参入した楽天モバイルが大幅に安い料金プランを打ち出していることもあり、今後MVNOビジネスは急速に萎んでいき、大手MNOのサブブランド以外は、成り立たなくなるだろう。

技術革新により料金が下がり、ビジネスのうま味が無くなるというなら仕方ないが、官製値下げの結果、政策的に立ち上げたMVNOビジネスをわずか4~5年で縮小させる結果となっていることに、いつもの「行き当たりばったり感」を感じるのは、私だけだろうか。

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