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マーケティング考

デジタルマーケティングを生業とする仕事に従事してはや7年。今ではすらすらと「デジタルマーケティング」という言葉を空気のように話せるけれど、要はデジタルを活用したマーケティングなのだ、という話は既に書いた

ではマーケティングとは何なのか。

「求めている人と提供する人を結びつけること」とも書いた。ここで最も重要なのは「結びつけること」ではないかと思う。決して「売りつける」でも「追いかける」でも「買う気もないのに買いたい気持ちにさせる」でもない。

最後の「買いたい気持ちにさせる」はやや微妙なところがあるけど、僕としてはギリギリアウトだと思っている。よくマーケティングで「態度変容」という言葉が使われるが、控えめに言っても相当におこがましい。まあターゲットが勝手に態度変容するなら問題ないが、外的要因により態度変容させることを指しているなら、それは洗脳と何が違うのだろうか。ただ、「マーケティングとは洗脳である」ということもまた真ではあると思う。それはまた別の機会に。

話を戻して、「結びつけること」である。

態度変容はターゲットの心の中で勝手に起こっていることであり、正確に言えば、潜在的に心の中に合った感情が、顕在化して興味や関心に変化したことを指していると言える。それをどうやって呼び起こすかが技法の世界であり、マーケティングとしての質が問われる。もともと無いものをいくら推奨したところでなにも生まれないし邪魔であり、仮にそれで売上が伸びたとしても、それは押し売りをして売上が伸びたというだけであって、マーケティングではない。

何にしても、適切なアプローチをして、潜在→顕在の変容を起こした人に対して、適切なサービスやプロダクトを提示する、つまり結びつける。このさりげなさと抜け目の無さがポイントで、嫌味にならない用意周到さが求められる。こう書くと「やっぱりマーケティングってイヤらしい」というイメージを醸し出してくるが、別に聖人君子になる必要はなく、例えば、恋愛と一緒である。

考えに考えを重ねて最高のデートを企画する。相手はこちらのことに好意がある。でも明確に好きだとは言っていない。そういう相手に対して、どういうアプローチをしたら自分のことがもっと好きになって、さらに言えば、自ら「好き」と言ってくれるのか。もしくは、こちらからどのタイミングで「好き」と言えば、腰を引かれずに付き合えるのか、この駆け引きがマーケティングであり、すべてではないかと思う。A/Bテストとは、デート大作戦100本ノックであり、どういうデートが最高なのかを考え抜く、イヤらしくも真面目で純粋な最適解を見つける旅路である。

気がついたらいつの間にか好きになっていた。というのがきっと考え得る最高のマーケティングであり、このモデルにどこまで肉薄できるのかが、マーケティングに従事する人間の永遠のテーマではないかと思う。

テクノロジーやコンバージョンに拘るのはすごく良くわかるし、それが評価されることも事実としてあるのだけれど、同時にあまりその世界に個人的には賛同しづらい気持ちをずっと持っていて、その葛藤というか、どう整理していくのがよいのかな、ということを考えながら書いたのが本稿である。

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