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起業をした友人のハナシ

オッサンにも若い頃があった。

 実にそろそろ30年近い付き合いになるだろうか。高校の同級生である彼のハナシをしようと思う。彼は好きなものを突き詰め、その好きなものを商売にしてメシを喰ってい。腐れ縁の友人のハナシである。

誰にも負けない情熱を持つオトコ

 彼のあだ名をそのまま出してしまうと身内界隈でオッサンが誰だか分かってしまう危険性が飛躍的に高まってしまうんだが、どうせこんなクソみたいなnoteを読む人間なんていないので無視してしまおう。

 彼のあだ名は通称をそのまま書いてしまうとさすがにまずい。長い付き合いの中で、いつの間にか彼はそのあだ名で呼ばれるようになっていた。正直、あまり興味もないので由来を聞いたことがない。が、呼び方がないと不便なので手っ取り早く彼のことは「男爵」と呼称しようと思う。
 おおよそ「男爵」というにはほど遠い成りをした人間である。当然のことながら、オッサンと付き合いがある時点でまともな人間ではなく、社会不適合者である
 ところが、この男爵。モテる。
 ムカつくぐらいモテるのである。

 高校生活ではみだすことになりがちな社会不適合者が凝縮されて押し込まれた寄り集まったようなダメな文化系の部室で「マジック・ザ・ギャザリング(4版)」に興じ、土日は泊まり込みで「GARPS」なんていうテーブルトークに自作した破綻しているシナリオをぶつけてサイコロを転がし、ゲーセンの競馬で数万枚のメダルを獲得した後に全てコインゲームに流し込むという荒らしのようなことをしながら、エヴァンゲリオンでは議論にならなかったのにガンダムXで殴り合いの喧嘩を起こす、という我々を横目に可愛い彼女が常にいたのである。
 朱に交われば朱くなる。この言葉は嘘だとその時に悟った。
 朱くなるのであればオッサンにもカワイイ彼女がいたはずである。オッサンには原稿用紙に書いたラブレターに赤字で誤字脱字修正をするというガチ添削をして「大変よくできました」と花丸の印鑑をついて戻してきた可愛げのない文学少女しかいなかった。

 なので、朱に交わっても朱くならない。オッサンが生き証人である。

 この男爵。ゲーム大好き人間で当時から控えめに言って「奇天烈なゲーム」を作る才能があった。ちなみに、この言葉。褒めていない。

 ことのはじまりは、オッサンが最初に目ぼしいモノを見つけて始める。男爵がソレに乗っかる。さらにその周りが乗っかる。そのころにはオッサン飽きて他のことをやりだす。
 そのうち、男爵がゲームを見つけてくるようになり、みなに広め始め、やがて自作の奇天烈なゲームを作るようになり、そのうち誰もゲームをやらなくなった。おそらく最初の実験台は我々で、非電源系のゲームを楽しむには若すぎた。
 と思って当時のゲームを思い出して少しやってみた。

 クソゲーだったので、我々の感性は間違っていない

 当時のオッサンのバイト代はバイクのガソリン代とホテル代デートの費用にほぼすべて消えていたが、男爵はカードゲームやボードゲームを問わずありとあらゆるゲームに使っていたと思われる。カワイイ彼女はなぜか年上ばかりだったのでソッチはカネがかからなかったらしい。やはり、ムカつく。

なぜか濡れ手に粟を求める

 この男爵。大学を卒業した後、少しふらふらしてソーシャルゲームのデザイナーになってからオッサンの前にやってきた。どうやらソーシャルゲームを作りたいらしい。儲かるといってやってきた。
 そんな旨いハナシがなかろうと思いつつ、ホイホとついていってしまったのだ。ゲームを心から愛するオトコではあるが、イイオトコではない。

 当時のソーシャルゲーム界隈は、金銭感覚が狂うような現場しかなくて、オッサンは早々に脱落した。目の前で億単位の機器調達が印鑑1つで決済されるような職場はオッサンには眩しすぎた。

 その後も、彼はあちこちの会社を渡り歩いてゲームを作っていたようだ。そして彼の集大成を世の中に送り出そうと、独立して社長になった。

彼のゴールとは

 男爵はムカつくような要素をたくさん持った人間ではあるが、何か1つのものに集中しそれを形にし世の中に問う姿勢は正直、尊敬している。オッサンには真似ができない。
 
 彼はゲームを通じたよりよいコミュニケーションが出来る世界を心のそこから信じている人間である。その情熱はとてもすごいモノがある。
 
 彼が今やっている事業には、電源やパソコンを利用するような要素は全くない。これは電源が必要なゲームは電源が無いと遊べないしコミュニケーションには電源は不要、という哲学に基づいている。なのでカードゲームやボードゲームばっかり作っている。
 実際、いくつかのゲームをやってみた。正直、おもしろい。直接買って褒めるのは口惜しいのでAmazonで買ってこっそり遊んでやった。

 ざまーみろ。
 
 国内だけではなくて、既に海外にまで出展してゲームを広めつつある姿をみると、今は勝てないなぁと思う。こいつ、本当にすごい。
 だけれど、オッサンにも同じ思いを持てるようなものをみつけようやく事業化が出来るところまできた。負けてばかりはいられない。

 久しぶりにウィスキーを持って冷やかしに行こうと思う。
 
 最近どうよ?
 
 数年会ってなくてもこれだけで会話が成立する友人。
 オッサンの数少ない財産である。

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