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インフラエンジニアの主張

分かってくれとは言わないが

 オッサンはゴリゴリの物理インフラを専門としているインフラエンジニアである。最近は仮想なんてモノやクラウドなんてものも弄ったりしているけれど基本的にはブツがあってのインフラエンジニアである。

 なんだかんだプロジェクトマネージャとしてシステム全体の統括をする仕事が増えてきたり、python的なコーディングをしたり、CD/CIでクラウドの構築なんかもしてるけれど、オギャーと生まれた時に「teratermとputtyどっちもあっていいじゃない」と主張し産婦人科医と看護師の「リモートデスクトップ派」を蹴散らした根っからのUNIX系インフラエンジニアである。

インフラエンジニアの最高の誉め言葉

 インフラエンジニアとは因果な仕事である。徹底的に考慮しつくして実装したサーバやネットワークが正しく動いていると仕事がなくなってしまう。インフラエンジニアが活躍している時、それはITインフラがあまり正しく作られていない時だったりする。

 例えば、電気、ガス、水道が使えないなんて時にみんな怒るだろうけれど、それと同じようにサーバとネットワークが使えなければみんな怒るじゃない。使えて当然なモノなので、正しく動いていても誰も褒めてくれない。

 しかも、運用維持管理なんて暇なもんである。というか、暇そうに見えるじゃない。地味だし。
 だから、インフラをきちんと作り込んで正しく動いているシステムほどお客さんがこんなことを言い始める。

 「インフラの保守費用工数が高い。あまり働いているように見えないから工数圧縮や費用の削減をできないか。」

 ITシステムのインフラで何か起こってしまったらソレは事故なので何も起こらないように要件定義を行い実装する。実装した後は丁寧に保守管理を行う。だから、丁寧に保守管理が出来ているITインフラほど事故が起きないし、パキ(パフォーマンス&キャパシティ)もキッチリと見積もっているので拡張性も高く作ってるから、やってる作業なんか非常に簡単に見える

 仕事をキチンとやればやるほど、プロジェクトにおける自分の活躍の場や立ち位置が失われていくのがインフラエンジニアの宿命である。
 
 よってインフラエンジニアにとっての最高の誉め言葉とは。
 「インフラ運用工数や費用が高いので削減して欲しい」とお客さんに言われたことが仕事の成果の集大成で最大の評価となる。なんてマゾい仕事なのか

どこまで行っても日陰者

 インフラエンジニアはプロジェクトにおいて孤独である。システム構築プロジェクト初期から参加して運用引き渡しまでずっと携わることが多い。最初に参加して最後まで残る。それがインフラエンジニアである。

 アプリケーションのハナシや仕様変更などで、インフラデザインの変更にも文句を言うことなく付き合い、いつも小声でシステムのボトルネックを喋るけれど、アプリケーションの仕様変更の声が大きすぎてかき消されてしまう。インフラ構成は調達して設計したようにしか動かないトコをなんとかして調整して動くようになんとかする。
 
 1ブロック単位のメモリの出し入れのチューニングをしても、それを評価してくれる人はおらず、レコードの出し入れを物理側からチューニングをしても、その工夫は誰も気づいてくれない。

 パキデータを見てひっそりと笑う。それがインフラエンジニアである。

なぜかいつも疑われる

 システムに障害が発生すると真っ先に疑われるのがNWやサーバでありインフラエンジニアである。なぜか機器故障やミドルウェアの不具合が疑われる。いつも真っ先にである。

 そして問題調査が進むにしたがって、インフラの問題ではないと無罪放免されるが謝罪はされない。なぜなら問題解決にみんな忙しくなってインフラエンジニアのことは忘れてしまうから。

 雑に作られたITインフラであれば問題が山積みになるので、荒が目立ってしまうんだけれど、コスト削減対象になるまでにキッチリと丁寧に作りこまれたインフラに問題なんてそうそう起きない。

インフラエンジニアになりたいヒトへ

 完成度の高い仕事をすればするほど存在意義を失い、障害が起これば真っ先に疑い、誰も褒めてくれない。

 覚えることが膨大過ぎて得意な部分に特化されつつあるも薄く広くありとあらゆるモノをに精通しないと喰っていけない。アプリケーション開発の言語よりも数倍早く機器やソフトのバージョンアップデートが来る。バージョンアップデートでまるっきり変わってしまうことなんかも多い。

 1人前と呼ばれるようになるまで軽く10年はかかる。インフラエンジニアは促成教育が効かない。育てるのにとことん手間と時間とカネがかかる。
 だから、簡単には増えない。

 いい事もある。

 オッサンが大学で勉強した基本的なITの知識や技術は未だに使えている。一回覚えてしまえば汎用性があり何十年も使える。クラウドやら仮想化やら言われている技術のベースは既に40年前に開発されていて概念自体はずっと昔からある。
 ネットワーク機器にしても、30年前の知識がそのまま使えてる。多少は変わっていたりもするんだけれど、こんな昔の知識がそのまま使えるような仕事もあんまりなかろう。
 ストレージも然り。

 そして、最大のメリット。

 インフラエンジニアの能力は努力が裏付けとなる。
 アプリ開発のコーディングと違い、センスよりも、勉強した時間がそのまま能力の裏付けとなる。滅茶苦茶伸びるなんてことがない代わりに、やったらやった分だけ伸びる。

 ゆえに開発側と比べて成長を感じられないコトも多いかもしれない。
 安心したまえ。
 純粋なインフラエンジニアは今は希少種。
 淘汰されているわけではなく希少種になっているだけだ。

 本を読んだ1ページ、叩いたコマンドの1回。
 その分、成長している。

 本を1ページ読んで分からなければ2回読め。
 コマンドを1回叩いて分からなければ2回叩け。

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