「ワインは高い」と言われる理由を日本酒と比較して考えてみた
こんにちは。
12月も10日を過ぎ、ますます寒さも厳しくなってきましたね。
筆者はワイン販売、飲食店、ワインインポーター等など勤めてかれこれ10年近いですが、何年経ってもよく聞かれるご質問No.1
「ワインってなんでこんなに高いの?」
について考えみる&お答えしてみようと思います。
※ここで言う「高い」はあくまで日本においての価値観です。
比較対象があった方が伝わりやすい良いと思い、今回は日本酒を引き合いに出しております。
では行ってみましょう🍷🍶
日本酒が比較的安価に入手できることが多いのは、ワインと比べて様々な要因が考えられます。
1. 原料の入手性と栽培:
➤ 米: 日本酒の主原料である米は、日本国内で大量に生産されているため、安定供給が確保されています。
➤ 栽培: 米の栽培はワイン用のブドウに比べて機械化が進み、生産コストを抑えることができます。
ワイン用のブドウは物にもよりますが、
ハンドピック(=手作業)で行われる場合が多いです✋️
すごくざっくりですが、下記のようなイメージがわかりやすいかと。
★スーパーマーケットなどで〜1000円台で購入できる箱入りワイン➡機械収穫
★ワイン専門店で購入できるAOP、DOC付きのワイン➡ハンドピックの場合が多い
ワイン用のブドウは機械で収穫すると、
果皮が破れて酸化しやすくなり、味わいや香りに影響し、品質の低下につながることがあります。
ただ、ここで勘違いしてはいけないのは
一概に機械収穫が悪、ではないということ。
効率やコストを考えた場合には機械収穫を行うメリットも大いにありますのでご注意を。
2. 醸造工程:
➤ シンプルな工程:
日本酒の醸造は、大きく分けて麹作り、
醪(もろみ)作り、そして搾りの3つの工程に分けられ、ワインに比べて工程がシンプル。
日本酒は並行複発酵
ワインは単発酵
★大量生産: 大規模な酒蔵では、一度に大量の日本酒を製造できるため、生産コストを下げることができます。
ワインの醸造工程は下記のように多岐に渡ります。※ワインの種類によって工程は異なります。
選果→破砕→(1次)発酵→熟成→清澄・濾過→瓶詰め
これだけ見ても、日本酒と比較して醸造工程が複雑なことがわかります。
更にはフランスのシャンパンの場合、上記の様な工程でスティルワイン(泡のないワイン)を造った後に瓶内2次発酵という更にひと手間がかかります。
もうお分かりのとおり、時間も手間もかかりますから高価になるのも無理はありません。
有名なモエシャンドンのスタンダードクラスのフルボトル(750ml)でさえ、現在一般小売価格が8000円超えています。
3. 文化的な背景:
➤ 国酒:
日本酒は日本の国民酒であり、庶民に親しまれてきた歴史があります。そのため、より多くの人に楽しんでもらうために、比較的安価な価格設定がされています。
日本酒は4合瓶(720ml)でも1000円〜2000円台が中心ですよね。
➤ 季節感:
日本酒は季節感を楽しむ飲み物であり、一年を通して様々な種類が発売されます。競争が激しいため、価格を抑える必要性があります。
ひやおろしや、生酒などが季節酒として有名ですよね。
4. 流通経路:
➤ 多様な販売チャネル:
日本酒はスーパーマーケット、酒屋、飲食店など、様々な場所で販売されており、流通経路が確立されています。
➤中間マージン:
ワインに比べて日本酒の流通経路は短く、中間マージンを抑えることができるケースが多いです。
ワインは生産者(ワイナリー)から消費者へ届くまで、主に卸売業者(インポーター)、販売業者
の手を介しています。
更にはワインエージェントやワイン商社等を介する場合もあるので多数の人、そして距離を移動して消費者の元へ届いているのです。
当たり前ですが、多くの人の手を介する程、その手間賃がワインの販売価格に乗っかってきます。
更に飲食店で提供される場合、お客さまに提供されるその時まで、ワインはセラーに保存され、定期的な品質管理が行われます。
当然場所を取りますし、電気代も、管理する人件費も必要ですよね。
小売価格の2.5掛け〜3掛けでリストに載せるのは飲食店としては当たり前です。
そうしないと経営が立ち行きません。
以下、完全な戯言なので不快に思われる方はスクロールして読み飛ばしてください...。
昨今のBYO(Bring Your Own)の潮流には筆者は快く思っていません。
平たくいえば"ワインの持ち込み"のことです。
持ち込みの全部が全部ダメ、ということではありません。
例えば、
「子どもの生まれ年の、大切に大切に保管していたワインをソムリエに抜栓して欲しい」ですとか、
はっきりとした理由があり、お店側もそれがOKであればよいのですが、
お客様の方からの歩み寄りもあるべきかと。
飲食店、特にお酒を出すお店はドリンクで売り上げの大半を積み重ねています。
ですから、応援したい飲食店かつずっと通いたいお店なのであれば
毎回持ち込みばかりではなく、お店のリストに載っているお酒もオーダーして欲しいのです。
時にはBYOも良いですが、
「ワインは高いから持ち込みする」
なんて、自分の得することばかり考えていては寂しくありませんか。
ワインがお好きであれば、そのワインをお客さまのために試行錯誤を凝らして、今か今かとスタンバイしている飲食店のリストから選んでオーダーしてみてください。
あなたがオーダーすることで、そのお店のオーナーやスタッフは「もっともっと喜んでもらえるワインを入れてみよう。」と素晴らしいワインを用意するでしょう。
それが、ワイン業界やお酒業界を応援することに繋がります。
と、話がそれてしまいましたが
以上が「ワインが高い」と言われる所以のまとめでした。
高いと言われるには様々な理由があります。
悲しいことに、この業界で働いていると
「高いから買わない」
「高いからもっと適当なお酒で済ませる」
と極々わずかではありますが鼻からワインをシャットアウト&突き放される方もいらっしゃいます。
筆者はそれはとても勿体ない事と思います。
ワインに限らず、高いものには理由があります。
それをご自身で納得するまで調べて、
見て、聞いて、楽しめるところまで好奇心を持ち続けることが消費者として大切な姿勢なのではないでしょうか。
ワインを提供する側の姿勢も大切ですが、
消費者側もある程度の知識とマナー、配慮が大切だと思います。
別に飲食店へ大金を使えという意味ではありません。
最低限の配慮です。
日々ワイン業界で働く中で、少し悲しい出来事があったので、ワインについてもっと世の中の人に知って欲しいと思い、この記事を書きました。
最後までお読み頂き、ありがとうございます。