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一日一鼓【11月】

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記事一覧

花束を飾れない女

一日一鼓【11-1】
『花束を飾れない女』

「寿美なんてめでたい名前をつけられたけど
寿美を「すみ」とすぐに読める人はそう多くはなかったし、私の幸薄さを先に読み取る人は嫌みたらしく「いい名前ですね」なんて言ってくる(私の思い込みだって両親は言うけど)。何よりも、私の人生めでたいことなんて一度もなかった」

「寿美さん、今日まで本当にありがとうございました!」
そう言って満面の笑み(本当に影のない

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“ただの”17歳の誕生日

一日一鼓【11-2】
『“ただの”17歳の誕生日』

似てるじゃないですか
ムラサキって字とシバって字

と、「紫」・「柴」を空中で書いてみる。
何も答えなかった彼女が突然笑い出した。
僕は勝手に馬鹿にされたと思った。

冬の始まり告げるのは
白い息でもマフラーでもない。
僕にとってはこの朝日だった。

刺すような、
それでいて高くから俯瞰しているかのよう
そんな日差しが僕は好きだった。

今日も

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花にとっての花壇は。

一日一鼓【11-3】
『花にとっての花壇は。』

「おはよう」
「こんにちはの時間だよ」
「それでも最初の挨拶はおはようでしょ?」
「いや、俺は太陽の傾きに沿って変えたいね」

「またお話ししてるの?」
そう言って本屋の紙袋を下げた彼は新しい植木鉢を窓辺に置いた。
「わ! アヤメだ! 花言葉は…」
「よい便り」
「お、流石ですねぇ」
「右から左の誰さかんとは違うので」
と笑って私を見てくる。
彼と

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僕は将来、木になります

一日一鼓【11-4】
『僕は将来、木になります』

「僕の夢は、木になることです。
なぜかと言うと、
木は誰よりも長生きするし、
とても背が高いからです。

そして、僕が木になることができたなら
そこにいるだけでみんなを応援できるからです。

綺麗な花を咲かせられるし
元気な緑の葉っぱをたくさんつけて僕も生きてるよって伝えることもできます。
葉っぱが散り始めたら今まで僕が隠してしまっていた他の景色

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