若杉栞南(ワカスギカンナ)

脚本を書いています。「言葉に、鼓動を」

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◻︎朗読劇『交差点の先に待つ物語』 【public history × COMO Inc.コラボ企画】 public history the LIVE vol.11にて 朗読|今安琴奈、鈴木彰紀、松波優輝 映像|奥野倫 ピアノ|今安志保 『ours』 【COMO Inc.自社企画】 2023年11月1日深夜0:00配信スタート 朗読|橋本真一 演出|橋本真一、若杉栞南 プロデューサー|新朋子 ◻︎朗読『翠雨と言うらしい』 【寄稿】 橋本真一さんFCイベント S-

    • 一日一鼓【2月】その後のお話。

      一日一鼓【2月】|140字×29日 ↑それまでのお話|No.01 ~ No.29 _________________ ↓その後のお話|No.30

      有料
      100
      • 今までで1番いいレストランだった。 緑のワンピースに身を包む彼女は、あの日も綺麗だった。 “完璧なシチュエーション”だったと思う。 でも…また他の誰かに先を越された。 誰かのサプライズの次にプロポーズされて嬉しいはずがない、そう思ったら何も言い出せなかった。 さすがに…。

        • デニムのガーベラに釘付けの若造にオーナーの女性は静かに言った。 大切な女性には、贈りたい花を贈るといいですよ、と。 そっとデニムのガーベラを渡しながら。 背中を押された気がして、静かに頷いた。 そして、すぐにレストランを予約した。 ないお金をかき集め、その日を待った。

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        • 一日一鼓【2月】その後のお話。

        • 今までで1番いいレストランだった。 緑のワンピースに身を包む彼女は、あの日も綺麗だった。 “完璧なシチュエーション”だったと思う。 でも…また他の誰かに先を越された。 誰かのサプライズの次にプロポーズされて嬉しいはずがない、そう思ったら何も言い出せなかった。 さすがに…。

        • デニムのガーベラに釘付けの若造にオーナーの女性は静かに言った。 大切な女性には、贈りたい花を贈るといいですよ、と。 そっとデニムのガーベラを渡しながら。 背中を押された気がして、静かに頷いた。 そして、すぐにレストランを予約した。 ないお金をかき集め、その日を待った。

        マガジン

        • 一日一鼓【2月】
          30本
        • 一日一鼓【1月】
          16本
        • 一日一鼓【12月】
          31本
        • 一日一鼓【11月】
          4本
        • 一日一鼓【10月】
          30本
        • 一日一鼓【9月】
          30本

        記事

          ブルーのジュエリーがついた指輪の横には、デニムのガーベラ。 デニムをイメージして作られた指輪なんです、とオーナーが丁寧に説明してくれた。 これがいくらであっても彼女のために買いたかった。 だって、青いガーベラの花言葉は 神秘…若き貴婦人。 まさに彼女だって思ったから。

          ブルーのジュエリーがついた指輪の横には、デニムのガーベラ。 デニムをイメージして作られた指輪なんです、とオーナーが丁寧に説明してくれた。 これがいくらであっても彼女のために買いたかった。 だって、青いガーベラの花言葉は 神秘…若き貴婦人。 まさに彼女だって思ったから。

          店を閉めようとしたはずなのにそのオーナーは言った。 見ていきますか? 探し物、あるんでしょ?_と。 頷いてしまったのは 彼女との将来を公園で見たからだろうか。 偶然通った道で偶然音楽が聞こえて偶然入ったお店で、見つけた。 気怠そうな店員さんの言葉を借りれば宿命かもしれない。

          店を閉めようとしたはずなのにそのオーナーは言った。 見ていきますか? 探し物、あるんでしょ?_と。 頷いてしまったのは 彼女との将来を公園で見たからだろうか。 偶然通った道で偶然音楽が聞こえて偶然入ったお店で、見つけた。 気怠そうな店員さんの言葉を借りれば宿命かもしれない。

          彼女とのクローバー探しの帰り道。 Celine DionのMy Heart Will Go Onに誘われて小さなお店に足が向いた。 綺麗な指輪を揃えたその店は 言われなければ通り過ぎてしまいそうなくらい小さくて オーナーが店を閉めようとドアを開けなければ素通りしていただろう。

          彼女とのクローバー探しの帰り道。 Celine DionのMy Heart Will Go Onに誘われて小さなお店に足が向いた。 綺麗な指輪を揃えたその店は 言われなければ通り過ぎてしまいそうなくらい小さくて オーナーが店を閉めようとドアを開けなければ素通りしていただろう。

          クローバーを探す母親と 「これは?」 と笑顔を向ける子どもの姿が見えたような気がした。 一足…いや五足ほど早いけど、確かに見えた。 彼女との将来を見た気がした。 待っているかどうかは分からない。 でも 彼女しかいないと思ったこの気持ちを早く伝えてしまいたいと思っていた。

          クローバーを探す母親と 「これは?」 と笑顔を向ける子どもの姿が見えたような気がした。 一足…いや五足ほど早いけど、確かに見えた。 彼女との将来を見た気がした。 待っているかどうかは分からない。 でも 彼女しかいないと思ったこの気持ちを早く伝えてしまいたいと思っていた。

          蔦が見つからないまま、冬が終わった。 何かもわからない“蔦となるもの”を探しながらも彼女は隣に居てくれた。 春 のんびり過ごしたいからピクニックをしようという彼女の発案で公園にレジャーシートを敷いた。 のんびりしたいと言った彼女は 四つ葉のクローバー探しに夢中だった。

          蔦が見つからないまま、冬が終わった。 何かもわからない“蔦となるもの”を探しながらも彼女は隣に居てくれた。 春 のんびり過ごしたいからピクニックをしようという彼女の発案で公園にレジャーシートを敷いた。 のんびりしたいと言った彼女は 四つ葉のクローバー探しに夢中だった。

          霧をつかむよりは蔦を探る人間だから蔦に触れられる時を待っていた。 今回も、また。 蔦に触れないと踏み出せないのが俺の弱さだった。 でも、あと一歩… 何かがあれば、蔦を掴みさえすれば そう思っていた。 一足先に結婚した彼と会ったあの日から 俺の“蔦探し”が始まった。

          霧をつかむよりは蔦を探る人間だから蔦に触れられる時を待っていた。 今回も、また。 蔦に触れないと踏み出せないのが俺の弱さだった。 でも、あと一歩… 何かがあれば、蔦を掴みさえすれば そう思っていた。 一足先に結婚した彼と会ったあの日から 俺の“蔦探し”が始まった。

          21歳の冬。 短大を出た地元の友達が結婚した。 案外悪くないぞ〜と先輩ぶる彼を見て 心の奥底で感じていた。 羨ましい、と。 来年には卒業し、それなりの企業への就職も決まっている。 確かに、案外悪くないのかもしれない。 ……いや むしろかなり良いのではないだろうか?

          21歳の冬。 短大を出た地元の友達が結婚した。 案外悪くないぞ〜と先輩ぶる彼を見て 心の奥底で感じていた。 羨ましい、と。 来年には卒業し、それなりの企業への就職も決まっている。 確かに、案外悪くないのかもしれない。 ……いや むしろかなり良いのではないだろうか?

          豪華客船、乗ってみたい! それで、先端で両手広げるの! _それって、さっきの映画? そう!その時は支えてね? 笑顔を向けてくる彼女が可愛らしくて 隣に居られることが幸せだった。 だからきっと、あの長い映画を選んで正解だったと思う。 ありがとうと言いたいのは俺の方だった。

          豪華客船、乗ってみたい! それで、先端で両手広げるの! _それって、さっきの映画? そう!その時は支えてね? 笑顔を向けてくる彼女が可愛らしくて 隣に居られることが幸せだった。 だからきっと、あの長い映画を選んで正解だったと思う。 ありがとうと言いたいのは俺の方だった。

          終電の4本くらい前の電車で帰る彼女を送っていった。 今日はもう少し一緒に居たかった という気持ちを素直に伝えられなくて 今日も楽しかった という思いを込めて聞いた。  次、何したい? 当たり前のように次を聞けることがまた幸せだった。 彼女の答えは  豪華客船、乗ってみたい

          終電の4本くらい前の電車で帰る彼女を送っていった。 今日はもう少し一緒に居たかった という気持ちを素直に伝えられなくて 今日も楽しかった という思いを込めて聞いた。  次、何したい? 当たり前のように次を聞けることがまた幸せだった。 彼女の答えは  豪華客船、乗ってみたい

          「ありがとう!」 と笑顔を漏らす彼女を家に誘って 気怠そうな店員さんオススメのDVDを彼女と見た。 今までで1番“いい雰囲気”だった夜だと思っていた。 でも 3h14mの映画は……あまりに長すぎた。 隣でジャックの死を悼む彼女を前に 運命か宿命か、なんて話はできなかった。

          「ありがとう!」 と笑顔を漏らす彼女を家に誘って 気怠そうな店員さんオススメのDVDを彼女と見た。 今までで1番“いい雰囲気”だった夜だと思っていた。 でも 3h14mの映画は……あまりに長すぎた。 隣でジャックの死を悼む彼女を前に 運命か宿命か、なんて話はできなかった。

          その夜、このレストランには お祝いされる人が6人もいた。 彼女は4人目だった。 全て失敗だ…と頭が真っ白になった時 彼女は言った。 「同じ誕生日の人がこんなに集まるなんてすごい! 幸せ共有できちゃう。豪くん、ありがとう!」と。 その言葉に、彼女の考え方に もっと惹かれた。

          その夜、このレストランには お祝いされる人が6人もいた。 彼女は4人目だった。 全て失敗だ…と頭が真っ白になった時 彼女は言った。 「同じ誕生日の人がこんなに集まるなんてすごい! 幸せ共有できちゃう。豪くん、ありがとう!」と。 その言葉に、彼女の考え方に もっと惹かれた。

          誕生日を祝いたい その一心で練った特別な日の予定。 でも 予定は予定でしかなかった。 大きな窓のあるレストランで 華やかな音楽がなった時、緊張が最高潮に達していた。 ハッピバースデートゥーユー と歌声が響き、目が輝く彼女。 やっと!と、構えていたらプレートは別の人の元へ…

          誕生日を祝いたい その一心で練った特別な日の予定。 でも 予定は予定でしかなかった。 大きな窓のあるレストランで 華やかな音楽がなった時、緊張が最高潮に達していた。 ハッピバースデートゥーユー と歌声が響き、目が輝く彼女。 やっと!と、構えていたらプレートは別の人の元へ…