舞台 レベッカ


ミュージカル界の帝王、山口祐一郎さんが主演されると聞いて観に行った作品。

いつも観に行く作品の決め手となるのは好きな役者さんが出演されているかが大きく占めていて、つぎに作品自体の好み、演出家、上演される劇場が好きかどうかと続きます。

以前はしらみつぶしに空いている時間を埋めるように観劇していた年もあったんだけど、バイトを辞めたら1年も経たずに「待った」がかかりました。当たり前・・・。

それでももし見送った作品が自分に合っていたらと思うとツラいので、多少強引に後先考えずにチケットを取ってしまうことがやめられないのが現状です。

今回のレベッカも初見ということもあり、帝王なら期待以上であるに違いない&クリエ作品で当たらないはずがない(クリエ作品大好き)とギャンブル半分で観劇しました。

でも、考えてみれば脚本も音楽もエリザベートやモーツァルト!のお二人だし、キャストも見知った大好きな方々ばかりだし、初見だろうがドンと構えていればよかったですね。ほんと、まんまと好きになって帰っていきました。


ミュージカル『レベッカ』とは

本作は偶然出会った年の離れたマキシムと「わたし」が恋に落ちるラブロマンスストーリー、と思いきや。実はマキシムにはレベッカという美しき前妻がいて二人の恋は順風満帆ではいかない雰囲気が序盤から漂います。また劇中では登場しないレベッカ。しかしタイトルにもなっている通り彼女が物語を大きく狂わす存在を担っていて、終盤になるまで真実が隠されたミステリー要素を主軸に置いたミュージカルになっています。

レベッカは登場人物によって語られる話と劇中に出てくる顔部分だけ隠された肖像画だけで想像するしかない人物なので、そこがまた怖さを助長しているんですよね。

きっと初見で観劇した人は物語が進んでいくにつれて美しいだけではないレベッカの「真の顔」が明かされていくごとに、初めに抱いた印象とはまったく違った彼女を想像することになるのではないでしょうか。

1940年にはアメリカで映画化。Wikipediaにはサイコスリラー映画とカテゴライズされています。

絶対こわいやつ・・・。幽霊的な怖さがあるので、ホラーNGのわたしに耐えられるかわからないけどミュージカルが気に入ったので映画も興味あるなあ。


レベッカの恐ろしさ

なにが恐ろしいかネタバレすると、

・レベッカは美しくて聡明、彼女の開くパーティーは素晴らしいと大評判で夫にも尽くす良妻なレベッカだったが、それは表向きの姿で、実はお酒に溺れ浮気の絶えない悪妻だったこと

・レベッカが死んだ原因はヨットの転覆事故だったが、本当の死の原因はマキシムとの言い合いの際に頭を打ったこと

・レベッカの死の直前、マキシムは彼女から罵倒されていて、彼は故意に殺害をしたわけではなく、言い合いは彼女が仕向けたものだったこと

・後に事故の再捜査の結果、レベッカは末期がんに侵されていたことを知り、彼女は自身の死を自殺や病死ではなく「マキシムに殺されたことによる他殺」にさせようとしていたこと


などがあり、蓋を開ければレベッカがとんでもない女性だったことが次々と明らかになっていき、(すでに死んでいるので)一度も姿を見せない彼女がすべてを持っていった形で終わるのがまあ恐ろしくて

死してもなお「自分が世界の中心!」と言わんばかりの悪女としては最高の結末となっていました。


サイドストーリーがあったとしたら

極めつけはレベッカに忠誠をつくしたダンヴァーズ夫人が屋敷に火を放ち、高らかに笑いながらレベッカの肖像画と心中するラストシーン。

ダンヴァーズ夫人は感情を見せない冷徹な人というイメージで、レベッカの死の真相をどこまで知っているのか明確ではなかったり、彼女のいとこで浮気相手のジャック・ファヴェルとのやり取りでも彼女の性格をすべて知っての発言だったのかと謎が多い存在でした。

だから最後の最後で今まで見せてこなかった、感情をあらわにした夫人が印象に残ったんですよね。

Twitterでいつくか見かけたダンヴァーズ夫人視点の話が観たいというツイートには共感。サイドストーリーがあるとすればダンヴァーズ夫人が適任だなと思いました。レベッカとは違った意味で狂気な一面が見られそう。原作だと夫人に触れた部分が書かれているのかな。


細かすぎて伝わらない山口祐一郎さんのココが好き

・台詞の間
・一部の台詞のちょっと間延びした言い方(例:『モーツァルト!』でコロレド大司教を演じたときの「モーツァルト」の言い方。モに抑揚をつけるところ。)
・感情表現がスマート
・だから怒りをあらわにした芝居でやたらどよめく自分がいる
・行動がいちいちなんか可愛らしい
・ひとたび歌えばそこは山口劇場
・歌声がいつでも魔力を含んでいる(他にはない独特な美声)
・つまりいつだってどこにいたって山口さんにしかない表現で演じられているところ

クリエ作品『マディソン郡の橋』ロバート役で拝見したとき同様、紳士の男性がはちゃめちゃに合いますね。

帝国劇場での帝王や大司教、伯爵としての姿こそが山口さんだ!とずっと思っていたんだけれど、人間味がある役もハマっていました。

つぎは日生劇場での『笑う男』で拝見します。時期を空けずに拝見できる嬉しさ。楽しみです。



ミュージカル『レベッカ』

原作・ダフネ・デュ・モーリア
脚本/歌詞・ミヒャエル・クンツェ
音楽/編曲・シルヴェスター・リーヴァイ
演出・山田和也
主演・山口祐一郎
劇場・シアタークリエ
上演時間・2時間50分(休憩20分を含む)



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