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弱さを孕んだ自分を差し出す

真夜中のコンビニで目を腫らしながらコーヒーを買う。東京の夜は少し風が冷たくて、目がさめる気がする。

先日、内定式があった。
内定式では、今までの自分と、自分のこれからについて社員さんの前でプレゼンをすることになっていた。だけど私は前日まで、プレゼンに納得できずに、何故か真夜中のコンビニにいた。

内定式前日、他の内定者のプレゼンを見て、フィードバックをしあって、長丁場に疲れてホテルに帰った。
そのまま服も着替えずにベットにダイブして、私は暫く全く動かなかった。そして、ふと自分が泣いていることに気がついた。涙が頬を流れるのをただただ感じていた。

その時私は、自分でも何で泣いているのか、上手く理解することができなかった。
その日私は色んな感情がせめぎ合っていて、一日中心ここにあらずという感じだった。それでも皆んなの前でなんでもないようなふりをしていた。
けれど、ホテルの部屋の扉が閉まって一人になった瞬間、それらの感情が一斉に涙という粒になって溢れ出た、そんな感じがした。

ベットにこぼれ落ちる涙を見ながら、私の頭はやけに冷静で、何故明日のプレゼンに納得ができないのか、何故こんなに涙が溢れるのか、を考えていた。

例えば、半年前から私は自分がまだ何も成し遂げてないことへの焦りや不安を強く感じている。それが今回他人のプレゼンを見て、他者との比較という視点が生じたことで一層強化されてしまっているから、とか。
うん、確かに嘘じゃないな、と思う。
他者との比較に意味がないこと、なんてとうの昔に分かっているつもりだけれど、それでもそう感じることはやはりある。人間だもの。

でも違う、それだけじゃないと思う。じゃあこの涙は一体どこから来るのか。

思考の迷宮に迷いこまないよう、私は一旦ホテルを出て、コンビニに向かった。コーヒーとおにぎりと甘いお菓子。私が夜を乗り切る時のお決まりのお供をカゴに入れて、まだ赤い目を隠すようにレジに向かう。
東京の夜はもう涼しくて、風が目にしみる。

ホテルに戻って、もう一度プレゼンを1から通してやってみる。そして思った。

私はこんな私を伝えたいんだっけ。と。

確かにそのプレゼンは、分かりやすく、キャッチーな言葉で、たまに笑えそうなネタなんかも入れながら、私という人間に興味を持ってもらうための工夫が沢山散りばめられていた。プレゼンの中で伝わる私はある程度は、すごい、または興味のそそられる人間なんだろうと思う。

でも、それだけだ。と思った。
実際の私はプレゼンに納得がいかないぐらいで涙が止まらない程弱いし、結果を出すまでに何度もくじけそうになるし、たまに寝坊や忘れ物だってする。

内定式でのプレゼンは、たくさんの社員さんが見にきてくださるもので、配属にかかわる可能性もあり、確かに自分の見せ方、にはこだわるべきなのかもしれない。そりゃあ、魅力のある人間だと思ってもらえたら嬉しい、人間だもの。

でも私は、私を伝えたいんだ。
今のままのプレゼンをするということは、自分の中の弱くて脆くて、かっこ悪い、そんな部分を否定する、または排除する、そんな行為のような気がした。それがすごく嫌だった。
だからこんなプレゼンはしたくないと思った。納得できないと思った。
真夜中に目を赤くしてプレゼン一つにこんなに悩んでいる、それも私だと私は知っていた。

それが分かれば、そこからは早かった。
私は今の自分が過去の自分や未来の自分に手紙を書くなら何を書くか、ということを考えて手紙を書いた。より素直で辛辣で、綺麗な形を取らない言葉を並べてみたかった。その手紙を元にプレゼンは全て作り直した。

全て終わった頃には、窓の外はもう朝の気配がしていた。
今のプレゼンは、前のものよりきっと面白くなくて、分かりにくくて、凄い私を伝えることもできないだろう。それでも私はやっと自分のプレゼンに納得していた。弱さも含んだ綺麗にまとまらない自分を伝えること、それが私なりの向き合い方だと思ったから。

結果が吉と出たのか、凶とでたのか、それは私には分からない、それでも弱さを孕んだ自分というものから目を背けずに差し出せたこと、それが私の中で一つの誇りになった。そんな日になったと思う。

何はともあれ、本当に自分を伝えていくのはこれから。言葉だけではなくて行動で。

#エッセイ #コラム #大学生 #新卒
#内定式 #プレゼン

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