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グレゴリー・ナヴァ『エル・ノルテ 約束の地』グアテマラからだって叶えたいアメリカン・ドリーム

故国グアテマラで父親を政府軍に殺害され、母親を逮捕で失った兄妹が"約束の地"であるアメリカ(エル・ノルテ)を目指す話。私には『そして、ひと粒のひかり』にしか見えないが、両者の違いを考えることでアメリカと中南米の関係性と発展の変遷がざっくり分かったり分からなかったりするのかもしれない。クライテリオンのBlu-rayを買ったのに長すぎて面倒なのでVHSを借りるという無意味な投資を行ったことは反省したいところである。最近そんなのばかり。

141分もある本作品はグアテマラ編、メキシコ国境編、アメリカ就労編の三部構成で、兄妹のアメリカン・ドリームを追っていく。当時のグアテマラは内戦が続いていたらしく、そんな現状を憂う若者たちが裕福な国に強い憧れを持つのは当然のことだろう。グアテマラ編は全体的にカラフルで、クライテリオン版Blu-rayのジャケ写にもなっているシーンは、VHS画質でも(勿論その後確認したリマスター版でも)いい色をしている。メキシコ国境編は特にコメントが浮かばない。アメリカ就労編は『そして、ひと粒のひかり』で省略された"その後"の話をしていて実に興味深い。同じく不法労働している人々との絡み、英語の習得、アメリカ人との越えられない壁、仕事環境と生活環境の齟齬、など実際の生活の中で出てくる悩みや苦労が色々と登場するのだ。移民前(政治映画)→移民中(アクション映画)→移民後(生活映画)がここまでパックになった作品も珍しいだろう。多分、例の本に掲載されてるのも、そのお得感からだと信じている。

グアテマラ編の色彩から『ギャベ』だなあと思ってたら、メイドとして働いている妹が洗濯機の使い方に困って手洗い→庭に広げるという中々衝撃的なシーンがあって、これぞ『ざくろの色』→『ギャベ』に通ずる色彩映画の流れじゃないかと納得してしまった。しかも、辞めさせられないどころか、雇い主に"そんな重労働はさせられない"と言葉を掛けられるのにはちょっと泣いちゃう。やさすぃ。

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・作品データ

原題:El Norte
上映時間:141分
監督:Gregory Nava
製作:1983年(イギリス, アメリカ)

・評価:50点

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